【もしも、こんなことが起きたら?】「ペン1本くらいなら……」会社の備品を持ち帰ったら
※以下は、法律上の疑問を考えるために設定した架空のケースです。

会社員のAさんは、ある日の帰り際、自宅で使おうと会社のボールペンを持ち帰ることにしました。
「ペン1本くらいなら、別にいいよね」
会社には何本もあるし、値段も高くありません。Aさんは悪いことだとは思わず、そのままバッグに入れました。
ところが、一度持ち帰ると抵抗がなくなり、付箋やノートなども少しずつ持ち帰るように。
持ち帰り癖はエスカレートして……
そしてある日、帰り際に備品棚を見たAさんは、
「どうせいっぱいあるし、もう少し持って帰っても大丈夫でしょ」
と、ボールペン数本に付箋やノートまで、いつもより多くの備品をバッグに入れてしまいました。
翌朝出社したら、様子がおかしい
ところが翌朝、出社すると、備品棚の前で上司2人が真剣に話しています。
「最近、ペンとか付箋とか、減るのが早くない?」
「そうなんだよ。ちょっと確認したほうがいいかもしれないな」
その会話を耳にしたAさんは、青ざめました。
「え……もしかして、バレた?」
「たかがペン1本」「少しくらいなら」と思っていたものの、振り返ってみれば何度も持ち帰り、昨日は一度にたくさんの備品をバッグに入れています。
会社の備品は、金額が小さなものでも、無断で持ち帰ると問題になるのでしょうか。
教えてくれたのは…株式会社BestOne 太田垣弁護士

- 株式会社BestOne 弁護士・税理士 太田垣佳樹(おおたがき よしき)さん
東京大学法学部卒業。首都大学東京(現・東京都立大学)法科大学院修了。
2013年司法試験合格、2014年弁護士登録。Arden法律事務所の代表弁護士として、相続・不動産・企業法務を中心に幅広い案件を取り扱う。
2022年より東京都立大学法科大学院非常勤講師を務めるほか、2025年に税理士登録。
結論:ペン1本でも窃盗罪が成立する可能性がある
ペン1本であっても、無断で自宅へ持ち帰れば窃盗罪が成立し得ます。
「共用の備品だから自由に使ってよい」という認識は、あくまで業務で使う範囲についてのものであり、私的に持ち帰ってよいという意味ではありません。
少額でも犯罪は成立する

窃盗罪(刑法235条)は、他人の財物を、その意思に反して自分の支配下に移すことで成立します。対象物の価値の多寡は、成立要件ではありません。ボールペン1本でも、法的には他人の財物にあたります。
もっとも、実際にペン1本で刑事事件として起訴されることは、まずありません。問題になるのはむしろ懲戒処分の場面であり、また、継続的・多量に持ち出していた場合には、刑事事件として立件されることも現実にあります。
誰が持ち出したかによって、罪名が変わる

ケースバイケースですが、大まかには、管理を任されている人が持ち出せば横領、そうでない人が持ち出せば窃盗となります。
誰でも自由に使える備品の場合、個々の従業員には管理権限がありませんので、窃盗が適用される場合の方が多いかもしれません。
刑事事件にならなくても、会社で処分される可能性も

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民事上は、返還または損害賠償の対象になります。
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就業規則の懲戒事由(会社の財産の不正な使用・領得など)に該当し、懲戒処分の対象となり得ます。少額であれば譴責などの軽い処分にとどまることが多いですが、反復・多量であれば重い処分もあり得ます。
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経理処理の観点からは、会社が備品の私的持ち帰りを黙認していると、従業員に対する給与または現物給与とみなされる可能性も理論上はあります。
会社の備品を持ち帰らないために気をつけたいこと

会社の備品をめぐるトラブルを防ぐためには、会社側と従業員側の双方が気をつける必要があります。 それぞれ、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
会社側は「持ち出しNG」を明確に
備品管理規程で、私的な持ち出しを明確に禁止し、周知しておくことが重要です。ルールが曖昧なまま処分を行うと、処分自体が無効となりかねません。
従業員側は「少しくらいなら」が危険
在宅勤務で会社の備品を自宅に持ち帰る場面が増えていますので、持ち出す際には必ず会社の許可を得るようにしてください。
会社の備品は「ペン1本くらい」と思わず、無断で持ち帰らないようにしよう
太田垣弁護士によると、会社の備品はボールペン1本のような少額のものであっても、無断で持ち帰ると窃盗罪などが成立する可能性があるそうです。
また、刑事事件にならなかったとしても、会社から懲戒処分を受けることがあるとのこと。何度も繰り返し持ち帰ったり、大量に持ち出したりした場合は、より重い処分につながる可能性もあるそうです。
普段から何気なく使っている会社の備品ですが、「これくらいなら大丈夫」と自己判断するのは避けたいですね。
自宅などで使う必要がある場合には、あらかじめ会社の許可を得るようにしましょう。
※一部AI画像を使用しております。