【もしも、こんなことが起きたら?】「みんなに晒してやる!」夫の“不倫LINE”をSNSに投稿した妻
※以下は、法律上の疑問を考えるために設定した架空のケースです。

夫の不倫が発覚したのは、数日前のこと。問い詰めたところ夫も認め、妻のBさんの手元には、不倫相手との親密なLINEのスクリーンショットが残っていました。
そこには、
「最高に熱い夜でした♡」
「早く会いたいな。チュッ(笑)」
「さあ、脱ぎなさい…」
など、見るだけで腹が立つようなやり取りがずらり。
何度見返しても怒りがおさまらない。そんな中、ふとある考えが頭に浮かびました。
「そうだ。このLINE、みんなに晒してやればいいんだ」
そして、LINEのスクリーンショットをSNSに投稿することに。
さすがに名前や顔をそのまま出すのはまずいと思い、夫と不倫相手の名前やアイコンにはモザイクをかけました。
「これなら誰のことか分からないし、書いてあることも全部本当。問題ないでしょ」
ところが、投稿したあとになって、ある疑問が浮かびます。
「……待って。名前も顔も隠してるけど、他人のLINEを勝手にSNSに載せるのって大丈夫なの?」
不倫されたのは自分のはず。それでも、LINEをSNSに公開したことで、自分のほうが法的責任を問われることもあるのでしょうか?
この疑問について、太田垣弁護士に詳しく伺いました。
教えてくれたのは…株式会社BestOne 太田垣弁護士

- 株式会社BestOne 弁護士・税理士 太田垣佳樹(おおたがき よしき)さん
東京大学法学部卒業。首都大学東京(現・東京都立大学)法科大学院修了。
2013年司法試験合格、2014年弁護士登録。Arden法律事務所の代表弁護士として、相続・不動産・企業法務を中心に幅広い案件を取り扱う。
2022年より東京都立大学法科大学院非常勤講師を務めるほか、2025年に税理士登録。
結論:公開した妻の側が、プライバシー侵害や名誉毀損を理由に「法的責任を問われる」可能性が高いです
内容が真実であっても、それだけで責任を免れるわけではありません。被害を受けた側が、公開によって加害者の立場に転じてしまう典型例です。
①「真実」であっても名誉毀損になる可能性がある

名誉毀損は、事実を公然と摘示して社会的評価を低下させれば成立し、その事実が真実かどうかは原則として関係ありません(刑法230条1項)。
刑事上の名誉毀損については例外として、①公共の利害に関する事実であり、②目的が専ら公益を図るものであり、③真実であることが証明された場合には、処罰されないことがありますが(同法230条の2)、私人間の不貞は、通常「公共の利害に関する事実」とは認められません。
したがって、この免責規定によって救われる可能性はほとんどありません。
民事上も、社会的評価を低下させた場合は名誉毀損として、また、私生活上の事柄をみだりに公開した場合はプライバシー侵害として、損害賠償の対象となります(民法709条、710条)。
②名前や顔を隠しても「誰か分かる」ならNG

この点は誤解が非常に多いところです。特定できるかどうかは、「世間一般の人が見て分かるか」ではなく、「その人を知っている人が見れば誰のことか分かるか」を基準に判断されます。
LINEのやり取りの内容、勤務先、家族構成、地名、子どもの学校、投稿の時期などが組み合わさり、周囲の人が本人を特定できる状態であれば、氏名や顔を伏せていても、プライバシー侵害・名誉毀損は成立し得ます。
むしろ個人のSNS投稿は、フォロワーに知人が含まれていることが多く、特定に至りやすい傾向があります。
③夫が公開を許可していても、同意の範囲に注意

なお、仮に夫が公開に同意していたのであれば、少なくとも夫との関係では、本人の承諾があったものとして、違法性を否定する方向に働きます。
ただし、①その同意がどこまでの範囲(どの内容を、どの媒体で、どの期間)についてのものか、②夫婦間の力関係などを踏まえて、本当に本人の意思による同意だったのか、③同意後に撤回されていないか、といった点が問題になります。
口頭のやり取りだけでは、後日「そこまでは認めていない」と争われることが少なくありません。
④夫の同意があっても、不倫相手は別問題

ここが最も重要な点です。LINEのやり取りは双方向のものですから、画面には不倫相手の発言も表示されています。
不倫相手は、夫とは別に、自分自身のプライバシー権や名誉権を持っています。夫が公開に同意していたとしても、それだけで不倫相手との関係でも責任を免れるわけではありません。
不倫相手から妻に対して、損害賠償請求がなされる可能性は十分にあります。
実務上は、妻から不倫相手への慰謝料請求と、不倫相手から妻への公開を理由とする慰謝料請求とが、同じ紛争の中でぶつかり合う形になります。その結果、双方の請求が差し引きされる形になり、本来受け取れるはずだった慰謝料が実質的に目減りすることがあります。
やり取りに写真が含まれていた場合には、撮影者の著作権(公衆送信権)を侵害する可能性もあります。
太田垣弁護士からお伝えしたいこと
気持ちとしては理解できるご相談ですが、SNSでの公開は、慰謝料を取るという目的から見て、ほぼ確実にマイナスに働きます。
証拠は公開せず手元に保全し、内容証明郵便や交渉、訴訟という手続に乗せることが、結果的に最も金銭的な回復につながります。
名前や顔を隠していても、不倫LINEのSNS投稿には要注意
太田垣弁護士によると、たとえLINEの内容が事実で、名前や顔を隠していたとしても、知人などが本人を特定できる状態であれば、投稿した側が法的責任を問われる可能性があるとのこと。
不倫の被害を受けた側であっても、SNSへの投稿によって、逆に責任を問われる可能性があるとは驚きですね。
不倫の証拠となるLINEを見つけた場合は、SNSで公開せず、まずは証拠として手元に残しておくことが大切です。
※一部AI画像を使用しております。