結婚前は優しかった夫・慎一は、娘・舞が生まれてから、実際の育児を妻の美雪に任せきりなのに、周囲には“いいパパ”を演じるようになりました。義母もそんな息子を手放しで褒め、美雪のがんばりは置き去りにされていきます。
そんなある日、義母が合鍵を手に、突然わが家へ上がり込んできました。舞の服装から部屋の様子、冷蔵庫の中身まで次々とチェックされ、美雪は自分の育児を採点されているような居心地の悪さを覚えます。やがて鍵のことを尋ねると、慎一が妻に無断で義母に合鍵を渡していたことが判明。「勝手に……!!」と、美雪は言葉を失いました。
さらに義母は「育児は母親がして当たり前」で、感謝が足りないと美雪を諭します。実際には、ほとんど育児をしていないのは慎一のほうなのに——。いつのまにか自分が“ダメな妻”にされていく状況に、美雪の戸惑いは深まっていきました。
そんなある日、美雪は熱を出してしまいます。やむをえず、夫に1日、娘を任せることになるのですが――。
夫に娘を任せた結果














ある土曜日、美雪は熱を出してしまいます。昼食に出かけたがる慎一に「今日一日だけ、舞のことをみてくれる?」と頼むと、慎一は「舞のことは任せて!」と引き受けてくれました。美雪はほっとして横になります。
ところが、その直後から様子が変わります。
「ミルクってどこ? どうやって作るんだっけ?」「離乳食ってどこ〜?」「泣き止まないんだけど、なんとかして!」——。
慎一は少し困るたびに、休んでいる美雪を何度も起こし、結局ほとんどのことを美雪が対応するはめになりました。
しばらくして美雪がスマホを見ると、慎一のSNSには「妻がダウン……今日はパパがワンオペ! しんどいけどがんばる!」という投稿が。コメント欄は「いいパパすぎる」「奥さん幸せ者だな〜」と称賛であふれていました。
「ほぼ何もしてないじゃない!」
1日ただ見ているだけの人がこんなに褒められるのかと、美雪はやりきれない思いを抱えたようです。
そんなとき、友人のカナエから「無理してない?」と気づかうメッセージが届きます。少し救われた美雪でしたが、心配をかけたくなくて、本当のことは言えないまま「大丈夫だよ」と返しました。
そして美雪は、「私が我慢すれば、丸く収まるんだよね……」と、今日もまた自分の気持ちを飲み込んでいくのでした。
◇ ◇ ◇
毎日の積み重ねは当たり前と見なされ、たまに表に出たがんばりばかりが褒められる——。そんな評価のかたよりに、割り切れなさを感じた経験のある人は、少なくないかもしれません。そんなとき、心配をかけたくないからと「大丈夫」と答えてしまうと、しんどさは誰にも気づかれないまま、ひとりで抱え込むことになってしまいますよね。
誰かに弱音を吐くことは苦手という方もいると思いますが、私たちも、気にかけてくれる人や周囲の人に、ほんの少し弱音をこぼしてみることも、時として必要なのかもしれません。その一歩が、はりつめた気持ちをやわらげてくれたり、事態に変化をもたらす機会になったりするのではないでしょうか。
きりぷち