育休明けの私に冷たいベテラン社員
第一子の出産を経て、約1年ぶりに職場復帰したときのことです。
私は時短勤務を利用し、以前より早い時間に退勤することになりました。仕事と育児を両立できるか不安はありましたが、久しぶりに職場へ戻れることを楽しみにしていました。
ところが、復帰して間もなく、思うように仕事が進まない日が増えていったのです。
子どものお迎えがあるため、決まった時間には退勤しなければなりません。それでも上司は以前と同じように仕事を振ってきて、退勤時間が近づいてから急ぎの対応を頼まれることもありました。
ある日も、上司から夕方までに終わらせるのが難しそうな仕事を頼まれました。どうしようかと迷っていると、ベテラン社員のA子さんが割って入ってきたのです。
「時短勤務じゃ、こういう仕事は無理でしょ。私がやるから、こっちに回して」
そう言って、私の仕事を引き受けてしまいました。
A子さんは仕事ができる一方、言い方がきつく、職場でも少し怖がられている存在。それからも、急ぎの仕事が回ってくるたびに、A子さんが「それは私がやる」と引き受けることが増えていきました。
私は次第に、A子さんから仕事ができない人だと思われているのではないかと感じるようになったのです。
仕事を奪われ、落ち込んでいたある日…
育休前は、仕事を任されることにやりがいを感じていた私。時短勤務では対応できない仕事があることもわかっていましたが、以前のように働けないことが悔しく、次第に自信を失っていきました。
そんなある日、部署で新しいプロジェクトが立ち上がることになりました。
内容は、社内の業務の進め方を見直し、効率化を図るというもの。私は育休前から業務の段取りを考えたり、他部署との調整をしたりする仕事が得意だったため、興味を持っていました。しかし、時短勤務の自分が中心になって関わるのは難しいだろうと諦めていたのです。
ところが、メンバーを決める打ち合わせの場で、A子さんが突然、私の名前を挙げました。
「このプロジェクト、リーダーは○○さん(私)がいいと思います」
思わぬ推薦に、私は驚きました。上司も「でも、最近はA子さんに仕事を代わってもらうことも多いし、リーダーは難しいんじゃないかな」と難色を示します。
するとA子さんは、きっぱりと言い返したのです。
「時短勤務だからって、仕事ができないわけじゃないでしょ。私がサブに入るから、あなたがリーダーをやりなさい」
それまで私から仕事を取り上げていたA子さんが、なぜ突然そんなことを言い出したのか、まったくわかりませんでした。
A子さんが仕事を引き受けていた理由
打ち合わせの後、私はA子さんに、どうして自分を推薦してくれたのか尋ねました。
するとA子さんは、少し意外そうな顔をして、こう答えたのです。
「あなた、育休に入る前から段取りがよかったじゃない。周りの仕事もよく見てるし、こういう役割に向いてると思ってたのよ」
A子さんから仕事ぶりを褒められたことなどほとんどなかったため、私は驚きました。さらに話を聞くと、仕事を引き受けていた理由もわかりました。
実はA子さんは、上司が時短勤務の私に、残業が必要になりそうな仕事まで任せていることを気にしていたのです。自分もかつて子育てと仕事の両立に苦労した経験があり、私に同じ思いをさせたくなかったとのこと。
「子どものお迎えがあるのに、無理な仕事を抱え込んでどうするの。できる人が引き受ければいいのよ」
そう言われ、私は思わず「てっきり、仕事ができないと思われているのかと……」と打ち明けました。
するとA子さんは、少し驚いた様子で、「そんなこと一度も思ってないわよ。まあ、私も言い方が悪かったわね。ごめんなさい」と謝ってくれたのです。
私はそのとき初めて、A子さんが私の仕事ぶりを認め、陰で支えてくれていたことを知りました。
頼れる先輩と新たな挑戦
その後、私は新プロジェクトのリーダーを任されることになりました。
時短勤務のため不安もありましたが、A子さんがサブとして仕事を分担してくれたおかげで、無理なく進められています。
A子さんの口調がきついのは相変わらずです。それでも、今では仕事で困ったときに相談できる、頼もしい先輩だと感じています。
復帰したばかりのころは、早く帰ることに申し訳なさを感じていました。でも、A子さんのおかげで、周囲を頼ることも大切なのだと気づきました。これからも、自分にできる仕事に自信を持って取り組んでいきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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