結婚前は優しかった夫・慎一は、娘・舞が生まれてから、実際の育児を妻の美雪に任せきりなのに、周囲には“いいパパ”を演じるようになりました。義母もそんな息子を手放しで褒め、合鍵で突然訪ねてきては美雪を“ダメな妻”のように扱います。美雪は、戸惑いを飲み込む日々を重ねていました。
優しかったはずの慎一が、なぜここまで変わってしまったのか——。
きっかけは、舞が生まれて間もないころ。何気ない育児を母親やSNSで「いいパパ」「イクメン」と褒められ、その称賛に次第に酔いしれていったのです。いまでは舞に向けるのも、“ばぁばに送る写真”のためのカメラばかり。「なんで変わっちゃったのかな」と、美雪は昔の面影を思い浮かべては、小さくつぶやくようになっていました。
毎日のように続く義母の突然の訪問に、美雪はついに、夫へある相談を持ちかけるのですが――。
アポなしで来る義母について夫に相談すると
















ある日も、義母は合鍵を使って突然訪ねてきました。舞のお昼寝の時間だと伝えても、「そんなの、ずらせばいいじゃない」と意に介しません。それどころか「ちゃんと母親やれてる?」と美雪にダメ出しをし、自分の子育てを引き合いに「それが母親であり妻の役目」と説いていきます。やがて舞がぐずり出すと、それすら「母親に余裕がないから」と、美雪のせいにされてしまいました。
毎日のように前ぶれもなくやってくる義母に、美雪は限界を感じ始めます。
「せめて連絡してから来るように言ってもらえないかな」
そう夫の慎一に相談しますが、返ってきたのは「母さんだって家族なのに、なんで連絡なんか要るんだよ」という言葉でした。
話すうちに、義母に合鍵を渡したのは慎一自身で、しかも「美雪も、母さんが来てくれたら喜ぶって」と、美雪の気持ちを勝手に決めてのことだったとわかります。
「むしろ来てくれるんだから感謝しなよ」
お昼寝を邪魔されて困っていると訴えているのに、慎一にはまるで届きません。それどころか「美雪はラクできていいよな」と笑う始末。
「ちゃんと話しているのに、伝わらない……」
言葉が通じないもどかしさに、美雪は深く沈んでいくのでした。
◇ ◇ ◇
「育児の手伝い」と言って、前ぶれもなく突然やってくるお義母さん。けれど、手を貸すことも気にかけることも、“相手が望んでいること”なのか、“自分がしたいこと”なのかで、受け取られ方は大きく変わります。求められていない関わりは、良かれと思っていても、相手のやり方への口出しや、暮らしのペースを乱す負担になってしまうことがあります。だからこそ、誰かに関わるときは、その人の都合やペースに、ひと言配慮する。そのひと言があるだけで、手助けはぐっと受け取りやすくなります。そして私たちも、良かれと思って踏み込みすぎていないか、折にふれて振り返りたいものですね。
きりぷち