夫の不倫を知り、離婚に向けて準備を開始
娘が高校生になったころ、夫の帰宅時間が以前にも増して遅くなりました。家族3人で食卓を囲む機会はほとんどなくなり、娘も「最近、パパの様子がおかしいよね」と心配するほど。
しかし、長年にわたる夫の冷たい態度に、私の愛情はすっかり冷めていました。そのため、帰宅が遅くなっても「また飲み歩いているのだろう」と考える程度だったのです。
そんなある休日、娘と買い物に出かけたときのこと――。
途中で忘れ物に気づいた私は、娘を近くの店で待たせ、ひとりで自宅に戻りました。すると、夫がいる部屋から楽しそうな話し声が聞こえてきたのです。
「あいつ、専業主婦のくせに要領が悪くてさ。メシもまずいし、本当にうんざりしてるんだよ」
「それに比べて、君は若くてかわいいよな。話してるだけで俺まで若返る気分だよ」
どうやら夫は、女性と電話をしている様子。相手を褒める言葉や親しげな口ぶりから、ただの知人とは思えませんでした。
驚きはしたものの、不思議と怒りは湧いてきませんでした。むしろ、夫の最近の行動に納得がいったほどです。
そのまま私は夫に気づかれないよう、静かに家を出ました。そして、その日、ある決意を固めたのです。
「娘が高校を卒業するまでは、今の生活を続けよう。でも、そのあとは私も自分の人生を考えたい」
娘はすでに父親と距離を置いていましたが、進路を決める大切な時期に、家庭の問題で余計な負担をかけたくありませんでした。ただし、何もせずに我慢し続けるつもりもありませんでした。
まずは家計を見直し、離婚に向けた準備に必要な費用を少しずつ確保しました。さらに、夫の不倫について相談するため、探偵事務所を訪ねました。
調査を依頼した結果、夫が特定の女性と繰り返し密会し、宿泊施設に出入りしていたことが判明。複数回にわたる調査で、不貞行為を裏付ける資料を得ることができました。
私はその資料を持って弁護士にも相談し、離婚に向けて必要な準備を進めていきました。もちろん、夫には何も伝えずに。
夫からの離婚宣言に返した私の一言
それからしばらくして、娘は無事に高校を卒業。希望していた会社に就職し、ひとり暮らしを始めました。
娘が家を出て間もないある日、夫が突然、私に話しかけてきました。
「お前、すっかり老けたよな。やっぱり40過ぎのオバサンは無理だわ」
あまりにも失礼な言葉にあきれましたが、私は何も言いませんでした。すると夫は、さらに信じられないことを言い出したのです。
「今まで娘のために我慢してやってたけど、もう限界だ。俺はもっと若い女と再婚して、人生をやり直したいんだよ」
そう言って夫が取り出したのは、なんと離婚届でした。
「お前とは性格も合わないし、もう一緒にいる意味もないだろ。さっさと離婚しようぜ」
勝手な理由を並べ立て、当然のように離婚を迫ってきた夫。どうやら、私が不倫の事実を知っているとは少しも思っていなかったようです。
しかし、私はそんな夫の言葉を聞いて、心の中で喜んでしまいました。私も離婚を考えていたので、夫のほうから切り出してくれたのは、むしろ好都合だったのです。
「わかりました。離婚しましょう。今までありがとうございました」
私が笑顔で答えると、夫は「は? お前、本当にそれでいいのか?」と言って、目を丸くしました。
「ええ。私もこれからは自分の人生を大切にしたいので」
泣いて引き止められるとでも思っていたのか、夫は拍子抜けしたような表情を浮かべていました。
私はその場で離婚届に署名しましたが、提出については弁護士に相談してから進めたかったので、そのまま離婚届を預かりました。
その後、離婚に必要な手続きを確認し、財産分与などについては後日話し合うことにして、正式に離婚が成立。私は娘にも事情を説明し、本人の了承を得たうえで、しばらく娘の部屋に身を寄せることに。
こうして私は、長年我慢を重ねてきた結婚生活に、ようやく終止符を打つことができたのです。
不倫相手との再婚を夢見ていた元夫の末路
離婚が成立してから数日後、元夫から突然電話がかかってきました。
「おい! 弁護士から慰謝料の請求が来たぞ! どういうことだよ!」
電話口の元夫は、ひどく取り乱していました。
実は私は、離婚前から弁護士に不倫の証拠を確認してもらい、慰謝料請求についても相談を進めていたのです。
離婚が成立したあと、弁護士を通じて元夫に慰謝料を請求した私。財産分与についても、あわせて話し合いを進めたいと伝えていました。
「あなたが不倫していたことは知っていました。証拠も弁護士さんに確認してもらっています」
私がそう伝えると、元夫はしばらく黙り込んでいました。
「……いつから知ってたんだよ」とぽつりとつぶやいた元夫。
「ずいぶん前からです。だから、私も離婚の準備をしていました」
元夫は何か言い返そうとしていましたが、私は今後の話は弁護士を通してほしいとだけ伝え、電話を切りました。
その後、弁護士を通じて話し合いを重ね、元夫とは慰謝料の支払いについて合意。
しかし、元夫にとっては、さらに予想外の出来事が待ち受けていたようです。
離婚からしばらくたったころ、共通の知人を通じて、元夫が再婚を考えていた女性と別れたという話を耳にしました。その女性は、自分の借金を返済するためのお金や生活費を、元夫に繰り返し求めていたそうです。
元夫は「妻と離婚したら君と結婚する」と約束し、女性のために相当な金額を使っていたのだとか。
ところが、離婚後に慰謝料の支払いが決まり、これまでのように金銭的な援助ができなくなると、女性は元夫から離れていったそうです。
結婚を前提にしていたはずの相手に去られたうえ、女性を援助するために借り入れたお金の返済と、私への慰謝料の支払いが重なり、元夫は経済的にも苦しい状況に陥ったと聞きました。
もっとも、その女性が最初からお金目当てだったのか、本当のところはわかりません。ただ、若い女性との再婚を夢見て私を見下していた元夫が、思い描いていた人生を送れなかったことだけはたしかでした。
一方、私は娘の家で生活を立て直しつつ、久しぶりに仕事を始めました。
長く専業主婦をしていたため、最初は不安もありましたが、少しずつ仕事にも慣れ、自分で収入を得られることに今は大きな喜びを感じています。
その後、落ち着いたところで娘の家を出て、自分の住まいを借りることに。今では休日に娘と買い物や食事に出かけたり、自分の稼いだお金で好きなものを買ったりと、穏やかな毎日を過ごせるようになりました。
結婚生活を振り返ると、つらいこともたくさんありました。それでも、娘と出会えたことだけは、何にも代えがたい幸せでした。
40代になってから新しい生活を始めることに、不安がなかったわけではありません。しかし、あのとき思い切って離婚を選んで、本当によかったと思っています。
これからは誰かの顔色をうかがうことなく、自分らしい人生を楽しんでいきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。