生まれてから2カ月間、横隔膜ヘルニア※のためNICU(新生児特定集中治療室)で眠りっぱなしだった息子。体中管だらけで抱っこすらできず、何もしてあげられない自分が歯がゆい日々でした。そんななか、看護師さんが提案してくれた毎月の「誕生日カード作り」。入院中の息子だけではなく、私たち家族の心もケアしてくれた看護師さんの気づかいのお話です。
※横隔膜ヘルニア:本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気
お見舞いに行っても時間を持て余す日々
息子は生後2カ月まで、口に人工呼吸器を挿入しており、外れることがないようずっと薬で眠らされていました。生まれてすぐ手術を受けてからしばらくはたまに目を開けることがあるものの、夢うつつという感じで、コミュニケーションはとれません。
授乳はおろか抱っこもできず、無反応の息子にやさしく触れるだけのお見舞い。苦しそうなのに何もしてあげることができず、お見舞いに行っても時間を持て余すような日々でした。
誕生日カードを作ってみませんか?
息子が生まれてから1カ月ほど経ったある日、NICUの看護師さんが渡してくれたのは、色画用紙の入った袋でした。息子の写真や、息子の今と生まれたときの身長・体重、かわいらしく「息子くん1カ月おめでとう」と文字が書かれた紙なども入っています。
「息子くんの誕生日カードを作ってみませんか? お姉ちゃんたちの写真なども貼って、枕元に飾ってあげたいんです」と看護師さんはやさしく微笑みました。何かしてあげたいという私たち家族に、看護師さんはできることを与えてくれたのです。
誕生日カード作りで芽生えた絆
帰ってすぐに家族みんなで誕生日カード作りを始めました。写真を印刷して切り抜いたり、上の子に絵を描いてもらったり……。上の子たちは看護師さんがくれた息子が目を開けているときのベストショットを見て、「かわいいねー」と笑っています。
まだ息子に会うことすらできていない上の子たちでしたが、写真を見たり、息子のために物作りをしたりしたことで、「弟ができた」という実感が強まったようです。
NICU卒業時に渡されたもの
生後2カ月を過ぎたころ、息子は病状が少し回復して、少しずつ動きや表情が豊かになり、GCU(回復児病棟)へ移ることになりました。よくしてくれていた看護師さんともお別れ。最後に、看護師さんは私に息子の様子を記した冊子を渡してくれました。
入院中、私たち夫婦がお見舞いにこられない間の息子の様子をつづった大切なものです。夫婦でお見舞いへくるたびに目を通してはいましたが、最後のページにはたくさんの息子の写真と、看護師さんのメッセージが添えられており、あたたかい言葉にまた励まされました。
容体が深刻で、精神的にしんどかったNICU入院中、看護師さんは息子だけではなく私たちのケアもしてくれました。「息子に何かしてあげたいのに何もできない」という私のつらい気持ちを取り除いてくれた誕生日カードは、今でも部屋に飾ってあります。
監修/助産師REIKO
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著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。