会陰切開とは出産の際に、腟と肛門の間である会陰(えいん)と呼ばれる部分を切開することを言います。必要に応じて局所麻酔をしてから、赤ちゃんの頭が出てくる直前に医師によりおこなわれる医療手技のことです。出産後は会陰切開した部分を縫合する処置をしますが、痛みが長引く方もいるために出産後に心配されることの1つのようです。
会陰切開をする理由
会陰切開とは、赤ちゃんが出てくる腟の入り口を広げるために、産婦人科医により消毒、局所麻酔後に腟と肛門の間の皮膚を肛門に向けて垂直または斜め方向に切り込みを入れる処置のことを言います。会陰切開の目的は、
1.重症の裂傷が起こるのを予防する
2.分娩(特に子宮口が開大してから赤ちゃんが生まれるまで)時間を短縮し、赤ちゃんへの負担を軽減する
3.裂傷で生じる傷は各臓器の機能を障害することもあるため、その保護をする
の3つが大きな理由です。赤ちゃんの頭が腟の入り口から出るためには会陰が十分に伸びる必要があります。最近では高齢での出産が多くなり、会陰の伸展が不良であったり、赤ちゃんの頭が大きかったり、皮膚の伸びが悪いと裂傷が起こる可能性が高まります。
裂傷の場合、皮膚がギザギザに裂けてしまうことがあり、重症ですと直腸や肛門まで裂けてしまうこともあります。ギザギザに裂けてしまうとうまく縫い合わせられなかったり、出血や痛み、裂傷により直腸の機能不全が起こるため、これらを予防するためにも会陰切開が必要になることがあります。
会陰切開時の痛みと痛みの続く期間
会陰切開をする上で気になるのが、会陰切開の痛みはどのぐらいのものなのかということではないでしょうか。まずは会陰切開をするときの痛みですが、切開前に局所麻酔の注射をおこないます。もちろん針を刺すときに痛みはありますが、切開時の痛みは麻酔が効いているため心配はいりません。
縫合については最近では溶ける糸を使用することが多く、その場合、抜糸の必要がありません。切開後の痛みについては個人差はありますが、退院するもしくは出産1週間後には痛みも落ち着き、産後1カ月でほぼ痛みがとれてくるようです。抜糸が必要な糸を使用している場合には退院の前に抜糸をおこないます。
会陰切開後の過ごし方と抜糸後について
会陰切開後の痛みの程度や注意する点について経過とともに解説します。
1.産後~産後3日目
会陰切開後の過ごし方は同時に産後の安静が必要な時期でもあるため、産褥期の過ごし方に準じて過ごしましょう。傷の痛みは最初、少し強めに感じる方もいらっしゃいますが徐々に和らいできます。排尿・排便時は傷口部分を清潔に保つようにしておきましょう。また悪露(おろ)のパッドの交換は会陰切開の傷口を清潔に保つためにも4~6時間に一度はおこないましょう。この間、傷の引きつれ感を感じる方もいます。痛みがひどい場合には医師や助産師に相談しましょう。
2.産後4日目~5日目(退院)
早ければ4日目、遅くても退院前には抜糸可能となります。最近では溶ける糸を使用するために抜糸が必要にならない場合もあります。抜糸をする場合は、抜糸の際には麻酔は使用しないため、チクチクした痛みを感じることはあります。抜糸後の傷口は清潔を保つ必要があります。
3.退院~産後1カ月程度
このころになると悪露の排泄も落ち着きます。痛みを感じることや傷口の引きつれ感などはほとんどなくなります。傷口を清潔に保ち、悪露のパッド交換は変わらずおこないましょう。
会陰切開後の痛みを和らげる方法
痛みを和らげるために、排尿や排便時、座る際にいくつか気をつける点があります。
まずは排尿や排便時にいきまないようにしましょう。また、排尿後は清潔なガーゼやコットンで会陰切開部をやさしく拭きましょう。
赤ちゃんにおっぱいをあげる際などはベッドや椅子に座る必要があるので、傷口が触れて痛むという方もいます。痛みを和らげるためには傷口を浮かせることができる円座や低反発のクッションを使うのもよいでしょう。
会陰切開の痛みは産後1カ月になるとほとんどなくなり、日常生活が可能になると言われています。しかしなかには、腫れや痛みが長く続く方もいらっしゃいます。痛みが我慢できないときには鎮痛薬などでコントロールをしましょう。傷口が清潔に保てなかったときには回復が長引くこともあるため、傷口のケアは大切です。
まとめ
会陰切開はしたくないと否定的な方もいらっしゃると思いますが、会陰切開をすることでママや赤ちゃんの負担が軽減されます。会陰切開に対する知識を持っておくことでその必要性などを理解しておき、出産に臨まれるといいと思います。
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