魚介類は、良質なたんぱく質や栄養素を多く含み、胎児や妊娠中のママの健康を守るために大切な栄養源です。しかし妊婦さんは、できるだけお寿司や刺身などの生食は避けるようにしたり、おなかの赤ちゃんのために食べる量に注意しなければなりません。
今回は、妊婦さんの魚介類の摂取についてお話していきます。
なぜ、妊娠中に魚介類を食べるのに注意したほうがいいの?
魚介類には、良質なたんぱく質や生活習慣病の予防や脳の発育等に効果があるといわれているEPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸を多く含み、また、カルシウムなど健康的な食生活にとって不可欠で優れた栄養源です。魚介類を全く食べないと高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されています。
その反面、注意しなくてはいけないのは摂取する量です。魚介類は自然界の食物連鎖を通じて、特定の地域等にかかわりなく、微量のメチル水銀が含まれています。その含有量は低いので一般的には、健康に害を及ぼすほどのものではありません。産後の授乳期のママや小児でも、問題なく食べれます。
しかし、妊婦さんには摂取量に注意が必要です。メチル水銀は胎盤を通過するため、胎児の神経系が作られる時期に影響があるという報告があるからです。とはいっても心配しすぎないでほしいと思います。赤ちゃんへの影響としては、生まれた赤ちゃんの音に対する反応が遅れるといった可能性があることが指摘されていますが、よほど過剰な摂取でなければ影響は少ないといわれています。
魚介類は健やかな妊娠と出産に重要である栄養等のバランスの良い食事に欠かせないものです。水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることを避けていただければ問題ありません。魚介類の栄養メリットを生かせるようにしましょう。
たくさん食べないほうがいい魚は?どのぐらい食べてもいいの?
お寿司一貫や刺身1切れあたりは15g程度で、切り身一切れ当たりは80g程度なので、参考にしてみてくださいね。
目安の表に掲げた魚介類のうち複数の種類を食べる場合には、表に「週に1回と記載されている魚介類」のうち、2種類または3種類を同じ週に食べる際には食べる量を、それぞれ2分の1、または3分の1にするよう工夫しましょう。また、表に「週に1回と記載されている魚介類」及び「週に2回と記載されている魚介類」を同じ週に食べる際には、食べる量をそれぞれ2分の1にするといった工夫をしましょう。また、ある週に食べ過ぎた場合は次の週に量を減らしましょう。
表の中でもみなさんがよく食べるものは、マグロやメカジキ、ツナ缶などではないでしょうか? マグロのなかでも、クロマグロ、メバチマグロは1回約80gとして週一回までとされていますが、キハダ、ビンナガ、メジマグロ、ツナ缶は通常の摂取量で問題ないそうです。バランス良く食べることが大切です。
お刺身やお寿司など生ものは食べても大丈夫?
生の魚で気になるのは、魚介類に寄生している「アニサキス」による食中毒です。予防のためには、新鮮で安全な食品を適切に扱い、新鮮なうちに食べ切ることが大切です。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどには注意が必要です。また生牡蠣など貝類も同様です。絶対に食べてはいけないわけではないのですが、免疫力が低下しやすい妊婦さんには積極的な摂取はすすめられません。
これらの食品を買う際はいつも以上に鮮度に気を配りましょう。購入後は保管方法や期間を守り、清潔な手や器具を用いて十分に加熱調理をしましょう。出来上がった料理は早めに食べ、保存は冷蔵庫が基本です。食べるときには再加熱をするようにしましょう。
また、スモークサーモンや魚のパテなどの魚の加工品には、リステア菌が付着している可能性があり、食中毒の原因となります。妊娠中は感染しやすく、赤ちゃんに影響することもあります。こちらも注意しておきましょう。
妊娠中の魚介類の摂取については、いろいろな情報があり、心配で避けてしまう方もいるかもしれません。しかし、魚介類の栄養は赤ちゃんや妊婦さんの健康には大切なものなので注意しながらも摂取できるようにしたいですね。
<参考>
厚生労働省HP
「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 乳肉水産食品部会