「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。
おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
息子は、生後4カ月に渡りこども病院に入院していたのですが、こども病院では感染予防の観点から大人以外の面会は基本的に禁止されていました。息子の入院が2カ月を超えたころ、息子の状態が良くなってくると、上の子たちは一度も弟に会えないことに疑問を持ち始めていました。
息子の病気、どこまで説明する?
当時、息子の姉にあたる長女と次女は4歳と2歳、息子の病気について理解するのは難しい年齢でした。そもそも横隔膜に穴が開いていたことで、肺が未発達になったという息子の病状は、大人に説明するにも難しいもの。
ただ、退院後も何らかの医療的ケアが必要となる見通しだった息子の病気を、上の子たちに少しでも伝えたいという思いがありました。私と夫は息子の動画や写真をこまめに見せながら、「息子は息をするのが大変なこと」「息するのをラクにするために機械が必要なこと」などを上の子たちに繰り返し説明しました。
どうして弟に会えないの?
最初こそたくさんの管に繋がれている息子の写真に衝撃を受けていた上の子たちでしたが、生後1カ月で人工呼吸器が鼻につけるタイプのものに変わり、体の動きを制限する薬も減ってからは、「目、開けてる。かわいい」「声が出たね」など弟の存在を受け止めてくれるようになりました。
そして同時に「会いたい」「どうして会えないの?」といった言葉も増えてきました。
ガラス越しの初対面
上の子たちが会いたがっていることを看護師さんに相談すると、次の面会のときに息子のベッドの位置が窓際に変わっていました。「ここからなら、お姉ちゃんたちも息子くんの様子を見られます!」と看護師さんが教えてくれたので、慌てて娘たちを窓のところに連れてくるよう夫に連絡。
やがて、ガラス越しに上の子たちの顔が見えて、私は看護師さんに促されながら息子の顔が窓から見やすいように抱っこしました。息子の姿が見えると、上の子たちはガラス越しでも声が聞こえてくるくらいはしゃいでいて、看護師さんへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
GCUへ移動、そして…
鼻に取り付けるタイプの人工呼吸器でも呼吸が安定するようになり、体重も少し増え始めた息子はNICU(新生児特定集中治療室)からGCU(新生児治療回復室)に移動することになりました。
GCUも大人以外の面会は原則禁止でしたが、特別に区切られた個室があり、そこで大人以外を含めた家族みんなでの面会(特別面会)をおこなうことができるのです。「やっと弟に会えるよ」と上の子たちに話して、返ってきた笑顔は今でもよく覚えています。
何カ月も弟に会えないまま、毎日のように「弟のお見舞い」としてNICUの待合室で待つ日々は、上の子たちにとってすごく退屈だったろうと思います。そんななか、病院側が精一杯きょうだいのつながりを作るサポートをしてくれて本当にうれしかったです。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師REIKO
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。