「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。
おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
生後4カ月間に渡り入院していた息子。いよいよ退院が近づき、人工呼吸器をつけた状態で移動する練習をおこなうことになりました。基本の移動はベビーカー、退院時は車での移動が必要となります。思った以上に重く、大きい人工呼吸器。人工呼吸器から息子に至るホースも複雑で、特にベビーカーに載せるのは大変でした。
おさがりのベビーカーで大丈夫?
退院を半月後に控え、移動の練習のため、看護師さんからベビーカーを持ってくるように言われました。人工呼吸器を使いながら移動している医療的ケア児は見たことがあったものの、子ども用車椅子を使っているイメージだった私は、ベビーカーでいいのか看護師さんに聞いてみました。
「赤ちゃんに子ども用車椅子は大きすぎるかも。でも確かにベビーカーには人工呼吸器が載せられないものもあるので、大丈夫なタイプを調べて買う方も多いですよ」。看護師さんの返事に、おさがりのベビーカーを使うつもりだった私は一気に不安になり……。
どんなベビーカーならいいの?
当時の息子に必要なのは人工呼吸器だけで、酸素ボンベなどは必要なかったため、人工呼吸器と血中酸素モニターさえ載れば問題ありませんでした。使用していた血中酸素濃度モニターは厚めのスマホくらいのサイズだったので、人工呼吸器の本体サイズである幅30cm、奥行き20cm、高さ30cmくらいの積載スペースがあれば十分です。
幸いわが家で使っていたのは3輪タイプの大きめなベビーカーで、積載スペースも問題ないように思えました。
人工呼吸器は載ったけど…まさかの盲点
移動の練習の日、人工呼吸器は問題なくベビーカーの積載スペースに載せることができました。息子と人工呼吸器をつなぐホースも包帯でベビーカーの持ち手に縛ったりすればどうにかなりました。
「いよいよ出発!」と思ったのですが、なぜかベビーカーが動きません。よく見てみると人工呼吸器の本体を載せている積載スペースの下に後輪ストッパーがあり、5kgを超える人工呼吸器の重みでストッパーがかかってしまっていたのです。
人工呼吸器と共に移動する大変さを痛感
幸い、本体の位置を少しずらすとストッパーがかからずに済み、何とか移動することができました。しかし、段差などがあればまた人工呼吸器がずれて、ストッパーがかかってしまうこともしばしば。
それ以外にもホースの途中に結露がたまって、人工呼吸器のアラームが鳴ってしまうなどさまざまなトラブルがあり、ただ「息子をベビーカーで駐車場まで連れて行き、車に乗せ替える」だけの練習に数時間かかりました。
移動の練習中は看護師さんがたくさん手伝ってくれたので、終わったときには「これを自分たちだけでできるのか」と不安な気持ちでいっぱいでした。退院を前に、医療的ケア児の移動のハードルは健常児の比ではないと痛感したできごとです。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師REIKO
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。