「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。 おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
息子の呼吸の補助が酸素吸入器のみになってからは人工呼吸器をつけていたころと比べると身軽になったので、よく息子を連れて出かけるようになりました。その分息子はいろいろな人の目に触れることが増え、時には心ない声をかけられることも。ここでは、息子と出かけていたときにかけられた、つらかった言葉とうれしかった言葉をご紹介します。
「かわいそうに」は日常茶飯事
息子を連れて出かけているときに、何度となく言われたのが「かわいそうに」という言葉。特に年配の女性から、目が合うと社交辞令のように言われることが多かったです。基本的に悪気はなく、どちらかというと心配な気持ちから言われているように感じました。
しかし「息子がやっと元気になって酸素吸入器だけになった」と喜んでいた私は、「かわいそうに」と言われるたびに、何となく出鼻をくじかれたような悲しい気持ちになりました。
息子の将来を否定する言葉にぼうぜん
言われたのは一度だけだったのに、忘れられないのが「赤ちゃんであんなのつけてたら、もうまともな大人にはなれないだろう」という言葉です。
ショッピングモールのエレベーターで一緒になった、まったく面識のない年配の女性2人組が、こちらをちらちら見ながら息子の将来を否定するような言葉を平気で言い合っていたときには、怒りを通り越して呆れてしまいました。事情も知らないのに、どうして他人にあんなひどいことを言えるのか今でも理解できません。
息子自身を見てくれた喜び
医療的ケア児はどうしてもその病状や医療的ケアに目が向いてしまいがちだと思うのですが、なかには「眉毛がきりっとしてるね」や「表情が豊かになってきたね」など、医療的ケア関係なく息子自身を見て話してくれる方々もいて、とても心に残っています。
医療的ケア児と言えど、もちろんいつも「かわいそう」なわけではなく、他の子と同じように「かわいいな」「おもしろいな」というポイントもたくさんあったのです。ごくたまにではありましたが、医療的ケア児ということを取っ払って育児トークができたときは非常にうれしかったです。
当時は戸惑ったけど今ならわかる声掛け
息子とのおでかけ中、「元」医療的ケア児の母親の方から何度か声をかけられました。大体「医療的ケア児の世話って大変だよね。でもうちの子はちゃんと元気に育ったよ」という内容で、正直当時は受け答えに困っていました。
だけど息子の医療的ケアがすべてなくなった今、当時の息子と同じような医療的ケア児を連れているお母さんを見つけると、つい声をかけたくなります。当時の孤独な頑張りを思い出し、どうしても「ひとりじゃないよ」と伝えたくなってしまうんです。私に声をかけてくれた人たちもこういう気持ちだったのだなと思うと、時を経て胸が熱くなります。
医療的ケア児を連れておでかけしているときにかけられた言葉に傷ついたこともありましたが、それ以上にうれしかったこともたくさんありました。当時の気持ちを忘れないようにして、私も誰かの心を温められるような声掛けができたらいいなと思います。
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監修/助産師REIKO
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療的ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院で農学を学んだ経験から食についても執筆。