スプーンを口に咬ませようとするじいじ
「ひきつけだ!」とひと言。それまで熱で赤い顔をしていた娘が四肢を硬直させ、白目をむいて蒼白になっていく姿を目にした父が叫ぶように言いました。そして大急ぎでキッチンからスプーンを持ってくると、娘の口に咬ませようとしたのです。
唖然とする私に「昔、おふくろが弟にやっていた」「ひきつけで舌を噛み切らないためだ」と言い張ります。確かに昔はそのようなことも言われたようですが、今はあり得ないNG行動。普段は泰然自若としている父の思いがけない行動でした。
大声で呼びかけるばあば
母は私を含め3人の子どもを育て上げた経験豊富な子育ての大先輩です。ところが孫のこととなると冷静ではいられないのかすっかり取り乱し、けいれんを起こしている娘の肩を叩きながら耳元で大声で名前を呼んでいました。
あとで聞くと「人間は意識がなくても聴覚だけは残るから」らしいのですが、熱性けいれんの場合は大声をかけたり肩をゆすったり刺激を与えるのはNGと言われています。あまりにうるさいので娘を抱いたまま母と距離をとるしかありませんでした。
逆に冷静になれた自分
見たことのない娘の様子に一瞬頭が真っ白になりましたが、目の前で繰り広げられる自分の両親の行動に、「自分がしっかりしなければ」と落ち着きを取り戻しました。そして私は、娘のけいれんが左右対称におきていることを確認し、発作の時間を計りました。
15分以上続くようであれば救急車を呼ぶ必要があると思いましたが、幸いにも5分以内に収まり、娘の様子は普段通りに。時間にしてみればほんの数分の出来事だったのです。
実は私も夫も赤ちゃん時代に熱性けいれんを起こしていたため「娘もいつかなるかもしれない」という思いがありました。そのことから小児救急の本で熱性けいれんの箇所を熟読しており、結果的に冷静な行動ができたとも思っています。いざというときのために小児救急の本は1冊手元におき、気になるところに目を通しておく大切さを感じました。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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イラスト/キヨ
監修/助産師 松田玲子
著者:川木みさ
7歳差の1男1女を子育て中。英検1級、児童英語指導者TEYL取得。海外サイトの翻訳や子育て体験談の執筆活動中。