子どものドキッと&ヒヤッとエピソード
子育てをしているとドキッとしたりヒヤッとしたりする出来事に日々遭遇します。満タンのジュースのコップをひっくり返したり、高い塀の上から飛び降りようとしたり……。そんな時、保護者のみなさんはとっさの対応に迫られますね。そのドッキリシーンに“性”が絡んでいたらどうでしょうか? 瞬時にうまい対応を取るのは至難の業かと思います。
今回は、私の講座の受講者が実際に出くわしたドキッと&ヒヤッと体験を例に、子どもの行動をどう捉え、どう対処すべきかお話しします。
年少の娘がお友達とチュー
幼い子どものすることだから笑って済ますべき?
Q――年少の娘が「クラスの男の子といつもチューしているんだ」と嬉しそうに話してくれました。相手の子も嫌がっていないようなので「セーフ」でしょうか?
A――実は幼稚園や保育園で子ども同士がキスをするのは珍しいことではありません。「〇〇ちゃんが好き」「〇〇くんと結婚する」なんていう話もよく耳にします。
子どもが人を好きになる気持ちは大切にしてあげたいので、まずは「大切なお友達ができてよかったね」と話を聞いてあげましょう。
次にしていただきたいのが「水着ゾーン」のお話です(水着ゾーンについては第2回をご覧ください)。「水着ゾーン」つまり「口・胸・おしり・性器」は、人に見せても触らせてもいけない、自分だけの大切な場所です。これはお友達にとっても同じことです。
「お口はお友達の大切な水着ゾーンだから、チューはやめておこうね」とはっきり伝えましょう。
もしかしたら、最初は納得しても数日たったらあっけらかんと「またチューしたよ!」なんてこともあるかもしれません。低年齢では仕方のないことですので、そのたびに丁寧に伝えましょう。
保育士さんの胸を……
これって子どもの特権ですか?!
Q――5歳の息子は保育園の先生が大好き。ある日、帰宅するなり「先生のおっぱいモミモミしちゃった!」と衝撃の告白。子どものすることだから、先生も慣れっこでしょうか?
A――先生はどんな気分だったでしょうか? びっくりして何もできなかったのかもしれません。保護者や他の先生の手前、あからさまに拒否したり叱ったりできなかった可能性もあります。
保育士さんの胸を触ることは痴漢と同じ行為であって、子どもだからといって許されません。まずは保育士さんのためにもお子さんのためにも、保育士さんにきちんと謝りましょう。
そして、なぜ先生に謝ったのかを、「水着ゾーン」の説明とともにお子さんに伝えましょう。
保育士さんの胸を触ることは「子どもの特権」ではありません。やってはいけないことだと親からしっかり伝えてください。
なお、今回は男の子の例ですが、仮に女の子でも同じことです。同性異性に関わらず、そして年齢に関わらず、人の水着ゾーンを触ることはNGです。
下ネタ連呼!
何度注意してもやめません
Q――我が家でお友達が集まったときのこと。誰からともなく「うんこ!」「おしり!」などの下ネタワードが飛び交い始めました。「下品なこと言わないの」と注意すると、一度は落ち着きましたが、数分後にはまた再開……。これくらいのことなら大目に見ても良いものでしょうか?
A――確かに、幼児は下ネタワードが大好き。これはまったくそのとおりです。だからこそ、性教育適齢期と言えるのです。
このケースのポイントは2つ。どちらもキーワードはやはり「水着ゾーン」です。
私なら、この状況になったら自分も会話に参加してみます。「うんこって言うだけで、なんだか特別な感じがして楽しくなっちゃうよね!」と、まずはノッてみても良いでしょう。そして「うんことか、おしりとか、おっぱいとか、そういう言葉って、なんで特別かわかる?」と子どもたちに考えさせてみます。「それは、おしりとかおっぱい、おまたやおちんちん、そしてお口って、体の中でも特別な場所だからなんだよ」。このあたりで子どもたちは「ポカーン」状態かもしれませんが、せっかくの好機です、そのまま話を続けましょう。「『口、胸、おまた、おちんちん、おしり』のことを『水着ゾーン』といって、『人に見せても触らせてもいけない、とても大切な場所』なんだよ」と、下ネタワードの持つ意味をしっかりと伝えます。
そして次のポイントは「『水着ゾーン』に関わる言葉は、聞くと嫌な気持ちになる人がいるから、自分のおうちだけで話すようにしようね」ということです。
大切なのは「自分の家でなら言っても良い」とすること。家での発言も禁止してしまえば、それは「タブー」になってしまうからです。「お家でなら言ってもいいし、もし水着ゾーンのことでわからないことや心配なことがあれば、お家の人に聞いてみてね」と一言添えておきましょう。
ただし、自宅で子どもが下ネタワードを連呼することに耐えられない方もいらっしゃるでしょう。その場合は「それは水着ゾーンの言葉だから、お家でもあまり何度も言われると嫌な気持ちになっちゃうな」と、親の気持ちを伝えましょう。
ちなみに、お友達がお家に帰って「水着ゾーン」の話を親御さんにしたときに、親御さんは「?」と思うかもしれません。これを機に、保護者同士でも性教育の話をできればなお良いですね。
もう少し年齢が上がると、「童貞ってなに?」「性犯罪ってなに?」「セックスって何?」など、かなりハイレベルな質問をぶつけられることが出てくるかもしれません。そんなときは第2回でお伝えした魔法の言葉「いい質問だね!」の出番です。その場で答えられれば答えてもよし、「ちょっと無理」なら「すぐに答えるのが難しいから、調べて今度答えるね」とその場を切り抜け、後日改めて話しましょう。
大切なのは「拒絶しないこと」です。
親世代もきちんと教わってこなかった「性」の話。それを子どもに伝えるのはなかなかの試練かもしれません。でも、性の話をするかしないか迷ったら、思い切って「する」ことを選択してみてください。
そして、いざやってみると、「性教育ってそれほどしんどいことではないんだ!」とわかっていただけると思います。お子さんとのコミュニケーションの一環として、ぜひご家庭での性教育にトライしてみてください。
※「水着ゾーン」は株式会社TerakoyaKidsの登録商標です
イラスト:おぐらなおみ(『お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』より)
※本稿は『お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』(辰巳出版)からのじまなみさんに加筆・再編集いただきました。