2020年と比べた初診人数について、約半数が「減った」と回答
コロナ禍における産院の状況を調査するため、日本全国の産院76院を対象に「お産の初診人数について前年(2020年)に比べて変化はありましたか」と質問したところ、最も多い回答が「まあ減った」(39.8%)、次いで「変わらない」(31.5%)という結果となりました。「かなり減った」「まあ減った」を合計すると49.4%を占め、約半数の産院で2021年の初診人数が2020年より減っていることがわかりました。
2021年6月4日に厚生労働省より発表された、2020年の人口動態(※1)によると、2020年の出生数は前年より約2.8%減少の84万832人で、1899年の調査開始以来過去最少を記録。とはいえ、内閣府が公表している平成27(2015)年版高齢社会白書の「出生数及び死亡数の将来推計」では、2020年の出生数の予測は83万6,000人とされており、それと比較すると上回っている状況です。
また、2018年から2019年の減少率が5.8%だったことと比較しても、大幅な減少とは言えず、2020年時点では新型コロナウイルスが出生数に影響したとは言い切れない状況でした。
しかし今回の調査の結果から、現場の肌感覚としても出生数の減少傾向が浮き彫りとなり、2021年においては新型コロナによる少子化への影響が懸念されます。
(※1)令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況<結果の概要>
「立ち会い」や「面会」はコロナ禍で依然として約9割が制限中
産院の現状をさらに具体的に調査するため、「診療の付き添い」「里帰り出産」「立ち会い出産」「面会」「母親学級・両親学級」のそれぞれの受け入れ状況についても質問をおこないました。
その結果、「里帰り出産」以外の4つの項目で9割以上の割合でコロナ禍前と比べて制限があることが明らかに。
具体的には「立ち会い出産」について「受け入れていない」44.7%、「制限付きで受け入れている」51.4%、「面会」は「受け入れていない」59.2%、「制限付きで受け入れている」39.5%と、「立ち会い出産」と「面会」は9割以上の割合で制限があることが明らかとなりました。
▼立ち会い出産
▼面会
また、同様に「母親学級・両親学級」についても「開催していない」39.5%、「制限付きで開催している」51.3%と9割以上が制限中という結果となりました(有効回答数:76)。
さらに診療への「付き添い」に関しては、「受け入れていない」が58.7%、「制限付きで受け入れている」が41.3%と、回答を得られた75院すべての産院で制限があるとの結果に。(ただし妊婦さんが外国人など通訳が必要な場合や、夫婦双方に説明が必要な場合などは受け入れる、と回答する産院が多数)
一方で、「里帰り出産」については「受け入れる」が63.2%と、半数以上の産院が受け入れていることがわかりました(有効回答数:76)。「制限付きで受け入れている」(33.3%)も含めると97.3%となり、制限はありつつも、ほぼすべての産院が里帰り出産を受け入れているという結果に。制限の内容としては、「帰省後2週間の自宅待機」という回答が多数でした。
上記の結果から、コロナ禍においては感染予防の観点から「妊婦さん以外の人が院内に入ること」を制限する産院が多いことがうかがえます。
立ち会い出産や面会が制限されることで、出産を控えている妊婦さんが不安や孤独感を抱いたり、これから子どもを授かりたいと考えている女性やそのご家族が、妊娠・出産をちゅうちょし、先送りにしたりする可能性も考えられます。
しかしながら、コロナ禍における産院の対応は制限することばかりではありません。
安心して出産に臨めるように、約8割の産院が「コロナ対策サービス」を開始
コロナ禍で妊娠・出産にまつわる制限が依然としてあるからこそ、産院では妊婦さんの孤独感や不安を軽減するための新たな取り組みも生まれています。
新型コロナ感染拡大の影響を受けて「新たなシステムやサービスを導入した」と回答した産院は75.0%と、約8割の産院が2020〜21年にかけて新しい取り組みを開始していることが明らかとなりました。
具体的な取り組みやサービスの内容として、回答が多かったものは下記のとおりです。
1位:母親学級・両親学級の代わりとなる資料等の制作・・・35.5%
2位:リモート母親学級・両親学級・・・30.3%
3位:リモート立ち会い出産(ビデオ撮影や、テレビ電話をつなぐなど)・・・28.9%
4位:リモート面会(テレビ電話をつなぐなど)・・・17.1%
4位:出産直後の写真・ビデオ撮影・・・17.1%
6位:エコー写真・動画をスマートフォンやパソコンで閲覧できるサービス・・・14.5%
※複数回答可
その他にも、「オンライン予約」(10.5%)、「オンライン診療/妊婦健診」(7.9%)などが挙げられ、ITを活用した取り組みが多く開始しています。コロナ禍以降、「DX」(デジタルトランスフォーメーション※2)という言葉がよく聞かれるようになりましたが、産院においてもDXが取り入れられつつあるようです。
(※2)「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のこと
また、こうした新たな取り組みに関して、産院からは下記のようなコメントが寄せられました。
・「エコー写真や動画をスマホで閲覧できるシステムが、健診に付き添えないご家族に喜ばれた」
・「オンライン予約システムを導入したところ、患者さんの人数の予測ができるようになり、受付の残業が減り、患者さんの待ち時間の短縮にもなって、とても便利になった」
・「外来予約システムで院内の混雑を回避し、患者さんから喜ばれた。リモート立ち会い出産がご家族から好評だった。いつでもリモートでビデオ通話ができるため(Free Wi-Fi設置)、入院患者さんから喜ばれた」
・「オンラインでの立ち会い出産、学級などは新型コロナが収束しても続けていこうと思う」
日本で初めて緊急事態宣言が発出された2020年4月から1年以上経過し、コロナ禍という非常事態においても体制が整いつつある状況下で、妊婦さんの不安や孤独を軽減するため各産院がITを駆使した工夫を凝らしている現状がうかがえます。
上記のようなITを用いたサービスは、妊婦さんが安心して出産に臨める環境づくりとしてだけでなく、ご家族の安心にも繋がります。
実際に、ベビーカレンダーに寄せられたコロナ禍の出産体験談のなかには、立ち会い人数は通常1名までとされていたところ、リモート立ち会い出産になったことで家族全員とテレビ電話をつなぐことができ、にぎやかな出産で良い思い出になったという声もありました。
コロナ禍の出産の現場において、産院の新しい取り組みが家族の絆をより深めていると言えるのではないでしょうか。
制限解除のカギは、ワクチン接種率や警戒レベルの引き下げか
このように産院でデジタルを活用した新たな取り組みが生まれつつも、望まれるのは現状制限されている立ち会い出産や面会などが再開すること。そうした日常が戻るのはいつ頃になるのでしょうか。
「現在受け入れや開催を休止・制限しているものについて、今後どのような状況になれば再開を検討しますか」と質問したところ、最も多い回答は「再開の目処は立っていない、まだわからない」(51.5%)でした。残念ながら半数を超える産院で、まだ再開の目処は立っていないようです。
しかし、次いで多い回答が同率で「全国民のワクチン接種が完了したら再開予定」(15.7%)、「県内の感染状況の警戒レベルがステージ1に引き下げられたら再開予定」(15.7%)となっており、「ワクチン接種率」や「各自治体の感染状況の警戒レベル」が立ち会い出産や面会の再開の一つのターニングポイントと考えられていることがわかります。
菅義偉首相は2021年6月9日の党首討論において、新型コロナウイルスのワクチンに関し、「希望するすべての人への接種を10~11月に終える」と表明しており、ベビーカレンダーが厚生労働省に確認をおこなったところ、同省からも同様の回答を得ました(2021年7月26日時点)。
これらの状況を踏まえると、2021年秋の終わりごろには徐々に産院での現在の制限が緩和され始める可能性があるのかもしれません。
<調査概要>
調査対象:日本全国の産院76院
調査期間:2021年6月10日(木)~2021年6月20日(日)
調査件数:76件
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