地獄のような日々
夫とはずっと、自他ともに認める仲良し夫婦でした。ところが幸せな毎日から一転、夫の裏切りが発覚し、そこから地獄のような日々が始まったのです。命を終わらせたいと思うこともあるほど落ち込んで、食欲もなく、どんどん痩せていきました。あのころは周りのすべての人が幸せそうに見えて、人に会うのも嫌になりました。
できれば一歩も外に出たくなかったのですが、不思議なことにそんな精神状態でも子どもの送迎などで致し方なく外に出て誰かに会うと、自然と笑顔が出せたのです。人生のどん底にいるのに、笑顔で人と話せることに自分自身でも驚いたくらいです。
ただその反動がひどく、家にいると無気力で、笑顔なんてすっかり消え去っていました。子どもたちには最低限のことをするだけの毎日で、今思い出しても子どもたちには本当に申し訳なかったなと思います。
時間が少しずつ解決してくれた…
夫とはその後、弁護士を介して離婚協議中です。弁護士を通して嫌なことを言われたり、引き続きつらい日々が続いていますが、少しずつ少しずつ強くなっていきました。
そして、子どもたちとも笑い合えるようになって、ちょっとした楽しみも見出せるようになったのです。裏切り発覚から1年を過ぎたころには、つらい日々を踏ん張って乗り越えられたことが自信につながって、ようやく前を向けるようになりました。
めずらしく雪が積もり…
先日、私が住んでいる地域にしては珍しく、まとまった雪が降り積もりました。子どもたちは大喜び! 庭で雪だるまを作ったり、寝転がってみたり、思いっきり楽しんでいました。しかし、あいにくその日は夕方から出かけなくてはいけない用事があり、私は家の中でせっせと出かける準備をしていました。
ところが子どもたちから、ママと一緒に雪合戦したい!とリクエストされてしまったのです。一度はしぶったものの、雪遊びできる機会はなかなかないもんな……と思い直して、仕方なく雪合戦をすることにしました。
笑顔になれていると思っていたのに
いざ雪合戦を始めると、はじめは低かったテンションもだんだんと子どものころの気持ちが蘇ってきて、いつしか歓声をあげて楽しんでいる自分がいました。終わったあとはとても爽快な気分でした。そしてその日の夜、突然息子に、こう言われたのです。「ママ、今日笑ってたね」と。え?とびっくりしていると、今度は娘から「ママがあんなに笑ってるの久しぶりに見た」と言われました。
正直、自分はもう笑えていると思っていたので驚きました。でも、もしかしたらその笑顔はまだ心からの笑顔ではなく、顔だけ笑っていたのかもしれません。そして子どもたちはそれを見抜いていたのかなと、ハッとしました。
ショックな出来事、そして日々の慌ただしさに追われて、すっかり笑うことをなくしていた自分でしたが、心から笑うことの大切さを子どもたちが気付かせてくれました。生きているといろいろなことがありますが、時には忙しない手を止めて思いっきり心を開放し、心から笑顔になる時間をつくっていこうと思います。
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著者:坂井香子
おだやかな娘とわんぱくな息子の母。夫は別居中のため、完全ワンオペ育児奮闘中。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。