「86万ショック」から3年
出生数が90万人を割り、「86万ショック」と言われた2019年から3年。出生数は減少を続け、2022年は昨年より4万3,169人減少し、79万9,728 人で過去最少となりました。
2017年の国立社会保障・人口問題研究所では、80万人割れを2033年と推計していましたが、それよりも11年早く少子化が進んだことになります。
コロナ禍の影響は?
日本の少子化の背景には、女性の社会進出が進んだことによる晩婚化・晩産化、子育て環境の問題、経済的な問題、結婚や出産に対する価値観の変化などさまざまな要因があると言われています。そのような状況に加えて、2020年以降懸念されていたのがコロナ禍の影響です。
日本で最初の新型コロナウイルス感染者が確認されたのが、2020年1月。当時、新型コロナは未知のウイルスで、妊婦さんや赤ちゃんへの影響も明らかになっていないことから出産を控える人が増え、出生数にも影響が出るのではないかと言われていました。2020年の出生数は84万835人と減少したものの、減少率は2.8%と、2019年から2020年の減少率と比較しても大きく減少したとは言えない状況でした。しかし、その後は3.5%、5.1%と減少率が大きくなっています。
出生数の減少の要因の1つに婚姻数の減少が挙げられます。日本で最初の新型コロナウイルス感染者が確認された2020年から2021年の2年間減少が続き、2021年の婚姻件数は、51万4,242組で戦後最少となりました。しかし、2022年は1.1%とわずかではありますが増加しています。
出産する働くママは増加
また、厚生労働省は3月3日に「令和2年度 人口動態職業・産業別統計の概況」を公表しました。
調査の結果、共働き夫婦の割合は 80.1%で、前回この調査がおこなわれた2015年より6.3ポイント上昇しました。そして、働いている女性が出産した赤ちゃんは48万9,826人、全体の59.6%で、17.2ポイント上昇しました。また、働いている女性が出産した第1子は24万508人で、第1子全体の62.9%となっており、前回の調査より17.1 ポイント上昇しました。さらに、2人目、3人目を産んだ働いている女性も、前回の調査よりそれぞれ全体の57.7%、54.7%と増加しています。
父母の職業別に標準化出生率(人口千対)をみると、父母ともに「管理職」が最も高くなりました。
※標準化出生率:年齢構成の異なる人口集団の間での出生率について、その年齢構成の差を取り除いて比較ができるようにした出生率
まとめ
2022年の出生数は79万9,728 人で過去最少となり、日本の少子化がさらに深刻化しました。コロナ禍の影響は、日本で最初の新型コロナウイルス感染者が確認された最初の年よりも猛威を振るった翌年のほうが影響があったように感じます。しかし、そのような中でも、出生数自体は減少したとはいえ、働きながら子どもを産み、育てている女性も増加してきています。婚姻数もわずかながらも増加しました。
世界で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症も、ワクチンや治療薬が開発され、元の生活が戻ってこようとしています。新たな変異株の出現も懸念されますが、今後、コロナ禍が妊娠・出産に影響することは少なくなってくるのではないかと考えられます。
しかし、少子化の要因はさまざまあり、これから子どもを産みたいと考えている方、今子育て中の方、それぞれが抱えている問題も異なります。政府は「次元の異なる少子化対策」を掲げていますが、国が取り組むべき施策は多岐に渡ります。働きながら第1子を産んだ方たちが第2子を産みたい、また結婚した方が子どもを産みたいと思えるような、そんな世の中になるような支援やサポートも大事と言えそうです。
少子化は一朝一夕には解決するのが難しい問題ですが、子どもを産み、育てる当事者だけでなく、将来の自分自身にも影響するかもしれないことです。少子化を他人事と考えず、課題を1つずつクリアできるようにしたいですね。