ベビーカレンダーは、多様化している家族のあり方=『新しい家族のカタチ』について発信する取り組みを開始しました。当事者のリアルな声を紹介していきます。多様な幸せを実現できる社会、そして、もっと「家族を持ちたい」「赤ちゃんを産みたい」と思う人が増える世の中づくりの一助となりますように。
左:Risaさん 右:Mahoさんとぽこ太郎くん(2023年5月現在、生後6カ月)
「付き合ったころから子どもが欲しい」と思っていたというおふたり。さまざまなステップを経て、デンマークの精子バンクで1,000人以上のドナー候補の中からドナーを決定し、5回目のチャレンジでRisaさんが赤ちゃんを授かりました。
そして2022年11月はじめ、ぽこ太郎くんが誕生。「かわいい!」「天使!」と、ぽこ太郎くんに愛を注ぐMahoさんとRisaさん。
妊娠報告動画では、Mahoさんは「同性カップルの子どもという、普通ではない環境に悩む日がくるかもしれない。だからこそ普通の何倍も、私たちは子どもを幸せにする努力をしたい」と決意をお話しされていました。
そしてぽこ太郎くんが保育園に通いはじめた今。産院、行政、保育園などさまざまな場面で同性カップルならではの出来事があったことを振り返ります。今回はそれぞれの場面で起こったことを紹介します。
※各自治体が同性カップルを婚姻に相当する関係と認めて、証明書を発行する制度のこと
産院への不安。「あの方ちょっとワケあり?」と思われる…?
1つ目は産院でのこと。Risaさんは、産婦人科に行く際には「なんて言えばいいんだろう? なんて説明したらいいんだろう?」と緊張していたと言います。
産婦人科を受診するときに最初に記入する問診票。病院によるとは思いますが、Risaさんが通った産院の問診票には、「母」と「父」の詳細な情報を書き込む欄があったそうです。
Risaさんは「父」を空欄にすることで「あの方ちょっとワケあり?」と思われてしまうのではないかという不安があったと言います。「母と父ではなく(本人以外の欄は)”パートナー”だったら書きやすいのに……」と率直な感想を語っていました。
産院の反応は?立ち会い出産は?
悩んだ結果「父」は空欄に。医師からは「シングルなんですか?」とふわっと聞かれたそうで、「(子どもの)父親はいないけれど養育するもうひとりの親として同性パートナーがいます」と答えたRisaさん。「そうなんですね、わかりました」とそれ以上は何も聞かれなかったそうです。それよりもRisaさんが不安に思っていることはないかと、Risaさんの気持ちにフォーカスした質問が多かったというのが印象的でした。どんな家族もありのままに受け入れている産院の姿勢が伝わってくる気がします。
ちなみに、「同性パートナーですが、立ち会えますか?」とうかがった際、「はい、立ち会えますよ」とあっさりと医師が承諾してくれたそうですが、これには裏話が……。実はこの産院の立ち会いは、本来は親族のみだったのですが、医師が間違ってOKを出したことからそのまま認められたのだそう。助産師さんが教えてくれて「ラッキーだった」ことがわかりました。「OKしてもらえていなかったら、こんなふうに笑って話せなかったかもしれないね」とおふたりは振り返ります。
そして、LGBTQや事実婚の人たちが必ずしも立ち会い出産ができるわけではないという現実を実感したRisaさんは、「同性婚が法律で認められる世の中になってほしい」と切に訴えていました。
出生届を提出!まさかのシングルマザーに…!?
2つ目は市役所でのこと。ぽこ太郎くんが生まれた後、「出生届」を市役所に提出したRisaさん。「出生届」には生まれた子の母と父の欄しかないため、Risaさんはシングルマザーという登録になりました。その後も役所で手続きをするたびに、シングルマザーという扱いで、シングルマザー向けのサポートを案内されたり、「1人で子育ては大変だけれど両親のサポートはあるのか」などと聞かれたりしたそうです。
そこでRisaさんは思い切って同性パートナーがいることを説明しました。すると、市役所側は同性パートナーのことに難なく理解を示してくれたのだとか。市役所で主催している子育て学級にもふたりで参加したそうです。
保育園で聞かれた質問が的を得ていて、逆にビックリ!?
最後は保育園。保育園が決まり、園長先生との面談にRisaさんが行ったときのことです。保育園は付き合いも長くなるし深くなるため、「自分たち家族のことを深く理解しておいてもらった方がお互いにとって良いだろう」と考えていました。
事前に渡された家庭状況を記入する書類には、やはり「父親」「母親」の情報を書く欄があったそうです。しかし、法的な書類ではないということもあり、「父親」の欄を「母親」に書き換えて、Mahoさんの情報を記入したのだそう。
その面談では、園長先生から思いもよらぬ、でも納得のできる質問をされたとRisaさん。園長先生は、ぽこ太郎くんを精子バンクを利用して出産したことや、RisaさんMahoさんが2人で養育をすることを把握したうえで、次の3つことを聞いてきたそうです。
1)父親とはどういう関係性ですか?
まずは「どういう関係として父親が存在しているのか、父親に親権はありますか?」という質問です。
これは、親権を持っている父親だと園に迎えに来られたときに、子どもを渡さなくてはいけないため、保育園側としては把握しておく必要があるそうです。Risaさんは父親に親権がないことを伝えました。
2)他のママたちになにかを聞かれたときは?
2つ目は「周りの子どもたちやママから聞かれたらどう答えればいいですか?」という質問です。
Risaさんは「私たちはオープンだし、周りのママ(パパ)に隠そうとは思っていないので聞かれたらそのままお伝えしてください」とお話しされたそうです。おふたりのオープンな様子や事実を知ってほしい、こういう家族がいることを世の中に広めたい、そんな気持ちも悟って、園長先生は聞かれたのかもしれませんね。
3)2人のママをどう呼んだらいいか
最後は「2人のママのことは、どんなふうに呼べばいいですか?」という質問。
園長先生から「Risaママ、Mahoママですか?」と聞かれて、Risaさんは「じゃあそれで!」と即答したのだとか。というのも、自分たちのことをどう呼ぶか、たとえば「ママ」と「マミー」にするか、「ママ」と「お母さん」がいいかと、ずっと悩んでいたのだそう。「園長先生のおかげで自分たちの母としての呼び名が決まった!」とMahoさんも笑顔を見せます。
保育園からはこの3点を聞かれたのみ。同性カップルの子どもを受け入れたことがあるのかなと思うような的確な質問だと関心するMahoさんに、「すごく自然に聞かれたよ」と答えるRisaさん。受け入れに対してネガティブな雰囲気が一切なかったのだそう。「この園だったら大丈夫だと安心した」とMahoさんは胸をなでおろしました。
園長先生が、実際に保育が始まってからでてきそうな小さな疑問までもすでにイメージしてくれていたことで、3人のことをごく自然に受け入れてくれたことを感じられたのでしょうね。
そしてRisaさんも、ぽこ太郎くんに物心がつき、おしゃべりをするようになったら、周りの子どもたちに「なんでママがふたりいるの?」と聞かれる日がくるだろうと言いました。でも「この保育園なら、心配事も少ないし、相談もしやすい。近くにあってよかった」とおふたり。3人にピッタリの保育園に出会えてよかったですね!
LGBTQを差別する人たちは「知らないだけ」
今回の産院・行政・保育園の対応については「伝える前の緊張」はあったものの、「想像していたほどネガティブなことは一切なかった」とおふたり。日ごろからLGBTQについて「知らないだけで、きちんと会話をすればほとんどの人が味方になってくれる」と考えているそうですが、実際に今回もそう感じたのですね。
おふたりの周りにたくさんの理解者がいるのは、こうした「わかって欲しい」「察して欲しい」ではなく「会話をすること」「知ってもらうこと」を大切にされているおふたりの姿勢も、関係しているのだと思います。
視聴者からは、
「そういえば、わが家の幼稚園や小学校では父の日、母の日とかの絵や工作、作文とかあった気がする。そのときがきたら、これからどうやって対応していくかだけど、ふたりならうまくやっていける」
「おふたりはラッキーだと言ってましたが、おふたりが真剣だから周りも協力したくなるんじゃないかなーって思います!」
「元保育士です。ふたりパパやふたりママ、パパママ、ひとりママやひとりパパなどこれからどんどん多様性に富んだ家族が増えると思います。これからの保育園、保育士の対応など考えていかないといけないんだろうなーと思いました!」
といった意見が寄せられています。
根拠のない誤解や偏見というのは、世の中のあらゆる場所にあるもの。MahoさんとRisaさんの動画を観て、「知らないこと」を「知ろうとする」心がけも大切であることを感じました。そして多様な家族と、多様な性・生の在り方が認められる世の中になってほしいと強く思いました。「諦めなくていい」。おふたりの動画には、LGBTQ当事者の方も、そうでない方も、日々の生活に希望を感じるようなメッセージが込められています。
Risaさんのお仕事復帰とぽこ太郎くんの保育園入園という、新しい生活をスタートさせたMaho Risa Family。ベビーカレンダーはこれからも3人を応援しています!
YouTubeチャンネル「Maho Risa Family」では、お2人の日常生活の様子、妊娠中の様子、出産、子育てについてなど、さまざまな動画が投稿されています。ぜひチェックしてみてくださいね。