2022年度に預けられた子どもは3年ぶりに増加
慈恵病院が「こうのとりのゆりかご」を開設したのは、2007年5月。25人預けられた2008年をピークに増減を繰り返し、今に至っています。
2022年度に預けられた子どもは9人で、過去最少だった2021年度より7人増加しました。報告書によると、9人のうち、男の子は5人、女の子は4人でした。また、新生児が7人、そのうち6人が生後7日未満の早期新生児で、1人が体重2,500g未満の低出生体重児でした。
「こうのとりのゆりかご」では、扉を外側から開けてベッドに赤ちゃんを預けると、ブザーが鳴り、職員が駆け付ける仕組みになっています。預けられた子どもたちは、命に別状はなかったものの、医師による健康チェックの結果、精密検査など何らかの医療行為が必要となった子どもが3人いました。
預け入れは遠方からも
子どもを預け入れたあと、病院や市に直接、あるいは手紙や電話、メールなどで接触があったケースは、7件でした。この事後接触や児童相談所の社会調査などによって、父母などの居住地を確認していますが、その結果、九州(熊本県以外)2件、近畿1件、関東2件、不明4件と、遠方から預け入れに来ているケースもあるようです。
預け入れの背景には…
報告書によると、母親の年齢は10代が2人、20代が3人、40代が1人、不明が3人でした。また、それぞれの婚姻状況は、婚姻が3人、離婚が1人、未婚が3人、不明が2人となっています。そして、子どもの実夫は夫が3人、恋人などが4人、詳細不明が2人でした。
預け入れの理由として最も多かったのが、生活困窮が6件でした。次いで、育児不安・負担感が3件でした。そのほか、親(祖父母など)からの反対が1件、未婚が1件あり、これらの理由が影響しているのか、自宅で出産したケースが5件ありました。
2022年度に預け入れられた子どもを父母などが引き取ったケースはありませんでした。預けられた子どもは、児童相談所への通告などを経て乳児院や児童養護施設、里親の元などで育てられることになるそうです。
「こうのとりのゆりかご」が設置されたことによって救われた命がある一方で、子どもが出自を知る権利の保障についてなど課題も。またそれ以前に、母親の孤独な出産や生活困窮などの問題もあります。今年に入り、10件近い赤ちゃんの死体遺棄事件が報道されています。次元の異なる子育て支援として、政府もさまざまな施策を検討しているようですが、尊い命が1つでも多く失われることのないよう、そして、安心して子どもを産み育てられるような支援体制を早急に整える必要があるのではないかと思います。
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