奈津美は元夫・大輔の不倫が原因で離婚。そのときに力になってくれたのは元義母でした。そのため元義母のことを慕っていて、今でも定期的に会っています。ある日、義母から、急用で面倒が見られない子どもを代わりに預かってほしいと頼まれたのすが、そこに現れたのは……。
離婚後も良好だった義母との関係
元夫・大輔が同僚と不倫をしていたことが原因で奈津美は大輔と離婚していましたが、義母とは離婚後も関係は良好で、定期的に会っていました。
ある日、義母は、大輔が仕事をせずにパチンコ三昧の日々を送っていると奈津美に愚痴をこぼしてきました。離婚のきっかけになった不倫相手とは別れ、会社も辞めてしまったとのこと。しかも、年金暮らしの義母にパチンコ代をせびっているよう……。
その話を聞いた奈津美は、さすがに家から出したほうがいいのではないかと提案してみますが、義母は1人息子を突き放すことはできない様子。
再婚なんて絶対無理
「奈津美~、俺今日パチンコで勝ったんだ」
「だからこれから飯行かないか?奢るぞ~」
何事もなかったかのように奈津美に連絡をしてくる大輔。しかも、自分の不倫が原因で離婚したにもかかわらず、再婚を迫る始末……。
いつもはまともに相手をしない奈津美ですが、この前義母が愚痴っていたことを思い出し、今回は一言物申すつもりで大輔と話します。
「子どもじゃないんだから、親に迷惑を掛けるような事は止めなさいよ」
そう言うと、大輔はまた再婚してくれたら仕事も頑張れそうだと繰り返していました。もちろん、奈津美にそのつもりはありません。とにかくこれ以上義母を巻き込まないでほしい、ただただそう思っていました。
託児を頼まれたのはまさかの…?!
数日後、約束をしていた義母から、急用が入ったから食事の予定を変えてほしいという連絡がありました。もちろん奈津美はその場で了承の返事をしますが、さらに義母は言いづらそうに続けます。
「それでね...食事を断った上でこんな事をお願いするのもあれなんだけど...」
「明日1日だけ預かって欲しい子がいるの」
子育て経験のない奈津美は戸惑いましたが、義母曰く、しっかりしている子だからそこまで構わなくて大丈夫とのこと。それなら、いつもお世話になっている義母のお願いだし……と引き受けることに。
そして翌日。
どんな子がやってくるのか分からず、すこし緊張気味の奈津美。そこに義母から連絡が入ります。
「例の子、そっちの家の前着いたって!」
それと同時にチャイムが鳴ります。急いで出てみると、そこには見慣れた人物が……
奈津美は義母にどういうことか尋ねます。
「あの、元夫がいるんですが...」
てっきり親戚の子どもを預かると思っていたため、この事態がまだ飲み込めません。しかし、電話口の義母はなんのためらいもなく言い放ちました。
「ええ、合ってるわよ?」
確かに義母にとって大輔は「子ども」。でも、もう誰かに面倒を見てもらうような年齢ではありません。しかも、義母は、離婚までのいきさつをすべて知っているはず……。それなのになぜこんなことをするのかと怒りをぶつける奈津美。その間も、大輔はインターホンを鳴らし続けていますが、警察を呼ぶといって追い返しました。
落ち着いてから義母に事情を聞いたところ、大輔は奈津美との再婚を望んでいて、再婚が叶えば働くと言ったため、義母が一役買ったということでした。
結局、息子かわいさで借金まで作っていた義母。そんな負のループは今すぐに断ち切らないといけないと思い、奈津美は義母に今度こそ息子を突き放すことを提案します。何も知らずに奈津美に連絡をしてきた大輔に、義母が必要最低限の荷物を持って親戚の家へ出ていったことを伝えました。慌てて大輔も後を追ったようですが、もちろんすべての事情を知った親戚から大目玉を食らい、逃げ帰っていったそう。
その後、住み込みで昼夜問わず働いて借金を返済している大輔。義母も、年金で慎ましくも静かな生活を送っているのでした。奈津美は今、縁もゆかりもない土地に引越し、自分だけの人生を楽しんでいます。
親にとってはいくつになっても「子ども」であることには変わりませんが、なんでもやってあげることが親の仕事ではありませんよね。義母は息子を甘やかし過ぎていたようです。子どもが自分でやらざるを得ない環境を作るのも、親として大切なことなのかもしれませんね。