あずきは3世紀に薬として日本に伝わった
――石原先生はしょうがや酢たまねぎなど、健康効果が高い身近な食材を発信されています。今回、あずきに着目された理由を教えてください。
石原先生 私が接する患者さんのなかでも、特に女性は便秘やむくみ、貧血、更年期障害など、いろいろな症状で悩まれている方が多いんですね。そうした症状を改善できるような食材はないだろうかと考えていたころに、あずきを使った昔の民間療法のことを知ったんです。
――どんな民間療法でしょうか?
石原先生 妊娠中毒症で高血圧やむくみの症状が出た場合、妊婦さんにはあまり薬を使えないんですね。昔はそうした妊婦さんにあずきの煮汁を飲ませて症状の改善をはかっていたそうなんです。その話を知って、「あずきは特に女性に良い食材なのかもしれない」と思うようになり、あずきのことをいろいろと調べるようになりました。
――それはいつごろのことでしょうか?
石原先生 2010年代の半ばごろで、2016年にあずきの健康効果などをまとめたムック本を出版しました。当時はグリーンスムージーが流行っている時期だったので、そういうものと比べると「あずきはちょっと古くさいイメージなのかな」とも思う部分もありました。でも、一人でも多くの方にあずきの健康効果を知ってもらいたいと思っていたんです。
――ヘルシーで健康効果が高い食材ということで、最近はあずきが注目されつつあります。
石原先生 あずきはあんこの印象が強いので、「カロリーが高い」「太る」と思っている方も多いと思うのですが、実は美容や健康効果が高いスーパーフードなんですね。そもそもあずきは3世紀ごろに薬という位置づけで日本に伝わったんです。
――あずきが薬とは驚きです。
石原先生 中国最古の薬物書である『神農本草経』には、あずきの煮汁が解毒剤として用いられたという記述があります。実際、漢方ではあずきを赤小豆(せきしょうず)と呼び、解毒や排膿、利尿作用があるとされているんです。
あずきには赤ワインの約2倍のポリフェノールが含有
――あずきにはどのような健康効果があるのでしょうか。
石原先生 さまざまなものがあるのですが、特に強調したいことの一つが「抗酸化作用」です。私たちは体に取り込んだ酸素を使ってエネルギーを作りますが、その際に活性酸素が生まれます。体内に活性酸素が増え過ぎると細胞を傷つけてしまい、体の中が酸化して老化やがん、糖尿病、脂質異常、シミやシワといったトラブルの原因を引き起こしします。あずきには体の酸化を抑える「抗酸化成分」が多く含まれているんです。
――どんな抗酸化成分が含まれているのでしょうか?
石原先生 まずはポリフェノールです。あずきには赤ワインの1.5~2倍程度のポリフェノールが含まれていて、活性酸素から強力に体を守ってくれるんです。また、あずきの赤い外皮には、ポリフェノールの仲間のアントシアニンが含まれています。アントシアニンは眼精疲労や視力向上、アンチエイジングなどに効果を発揮する成分でもあるんですね。
同じく外皮に含まれているサポニンにも強い抗酸化作用があり、高血圧の改善や生活習慣病の予防、冷え性の予防、ダイエットなどの効果が期待できます。
あずきによる腸内環境の改善が美容と健康につながる
――抗酸化作用のほかには、どんな健康効果があるのでしょうか?
石原先生 特筆すべきは、腸内環境の改善です。ゆでたあずきにはごぼうの約2倍、さつまいもの約3倍の食物繊維が含まれていて、腸内環境を整えてくれます。さらに、あずきには腸内環境の改善に役立つもう一つの成分も含まれています。「レジスタントスターチ」という成分です。
――どのような成分なのでしょうか?
石原先生 日本語では「難消化性でんぷん」と言い、消化吸収がされにくい炭水化物という意味です。炭水化物は体に必要な栄養素ではありますが、とり過ぎると肥満につながるため特にダイエットをしている人からは敬遠されがちです。
でも、近年の研究によって炭水化物の中には、消化吸収をまぬがれて大腸に届き、大腸内で食物繊維と同じ働きをする成分があることがわかりました。それがレジスタントスターチです。腸内細菌の餌となって善玉菌を増やし、お腹の調子を整えてくれる成分で、あずきには多く含まれているんです。美容にも健康にも腸内環境を整えることが直結しますから、まさにあずきは理想的な食べ物なんです。
あずきにはほかにも、たんぱく質やビタミンB群、若返りのビタミンといわれるビタミンE、鉄、亜鉛、カリウムなど体に必要な栄養素がたくさん含まれています。
<著書>
『メタボ&むくみを撃退! 血圧、血糖値を下げたいなら発酵あずきとあずき茶をとりなさい』
石原新菜/著 木村幸子/レシピ協力 藤井寛/協力
WAVE出版/1500円+税
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