愛知県豊明市がスタートした子連れ出勤は『ワークwithチャイルド(愛称・ワチャ)』とよばれ、仕事と子育てを両立できる柔軟な働き方を目指しスタートしたそうです。預け先に困ることの多い夏休みを終えた今、実際に利用した職員の声や今後の課題を聞いてみました。
豊明市の子連れ出勤制度とは
『ワークwithチャイルド』は市役所庁舎内と図書館で勤務する職員が自分の子ども・孫と一緒に出勤し、自身の所属する課や庁舎内に設置されたサテライトオフィスにて仕事ができるという取り組みです。
出勤できる対象年齢は0歳~小学3年生まで。前提として、保育園や幼稚園、児童クラブをはじめ、身内など、普段の預け先に預けられないときに、短時間であっても職場に出向いて仕事をする必要がある状況が発生した際利用が可能だそうです。
つまり継続しての利用というよりも、学童の臨時休業時や祖父母・配偶者の用事などにより預け先がないときの緊急措置として採用されています。
近年では、職員複数名の体調不良や出勤停止によって学童や保育施設が閉鎖せざるをえなくなるケースが散見されました。それにより子育て世代は子どもの預け先をなくし、出勤できなくなったケースもあったようです。しかし「これだけはやらなければならない」という業務がある中仕事を休むのはとても心苦しいもの。豊明市のように子連れ出勤ができれば、子育て世代の悩みがひとつ解消されるのではないでしょうか。
実際の利用状況は?
「子連れ出勤」の取り組みを実施し、5カ月が経過した豊明市。「仕事と子育てを両立できる柔軟な働き方」の普及啓発とともに「子どもと子育て家庭」への理解を深め、より一層子どもと子育て家庭に温かい地域づくりを目指しているそうですが、気になるのは実際の利用状況です。
『ワークwithチャイルド』を企画した豊明市役所の子育て支援課によると、本格導入後、帯同要件(緊急一時的な措置として子どもを職場に帯同することが最良であること)に基づいた利用者はいなかったとのこと。しかし普及啓発の一環として、夏休み中に理由を問わず利用できる期間を設けたところ、2週間で4名(のべ6名)の職員の利用があったそうです。
子連れで仕事は可能だったのか?
では実際に子連れ出勤をされた方や、子連れ出勤者と勤務を共にした方からはどのような声が上がっているのでしょうか。
小学1年生の子どもを帯同した女性職員は、普段は祖父母に預けて出勤しているそうですが、『ワークwithチャイルド』の制度があることで、祖父母に預けられない日があっても仕事を休まずにすむとのこと。実際に使用したところ、子どもにとっても親の仕事を知る機会になったようですが、帯同は半日が限界だと感じたそうです。
一方、小学校低学年の子どもを帯同した職員は、仕事中子どもは夏休みの宿題などをしながら落ち着いて過ごすことができ、普段通りに仕事ができたようです。窓口に来られた業者の方も子連れ出勤制度に理解を示し、和やかに仕事ができたと話していたとのことでした。
気になる周りの声…
しかし、子連れ出勤をする立場に立つと、気になるのは勤務を共にした職員の声です。
豊明市役所の子育て支援課に聞いてみたところ、子連れ出勤者と一緒に仕事をした職員は、いずれも子連れ出勤に理解を示しており「仕事に支障はなかった」「職場の雰囲気が和み、癒された」という声もあがっているようでした。
その和やかな雰囲気も相まってか、「また職場に来たい」と言っていた子どもも複数いたようです。子どもにとっても特別感のある時間となり、その適度な緊張感によって場に合わせた過ごし方ができる、という体感が子育て支援課にもあったそうです。
また勤務を共にした職員の気持ちも、実際に『ワークwithチャイルド』に立ち会うことで、否定的なものから肯定的なものへと変化したそうです。これは子どもや子育て中の職員への理解が深まった結果だと分析しているとのことでした。
子連れ出勤を広めるために…
今後も『ワークwithチャイルド』を継続しておこなうという豊明市。現時点では帯同要件に基づいた利用者はいないとのことですが『もしものときに利用できる制度』があるということは、職員にとって安心材料になることがわかったそうです。
また、年度替わりや今後の長期休暇に使用を希望している職員もいるそう。少しずつですが『ワークwithチャイルド』の定着が期待できますね。
豊明市では随時制度を見直しながら適用範囲を広げていくとのことでした。また、市役所でモデル的に実施しながら、市内企業へも子連れ出勤が普及するような方策を検討しているそうです。また、帯同する子どもの過ごし方に関しては、今後も保護者の課題であると言えます。
子連れ出勤にはたくさんの課題があり、職種によっては難しいケースもあるでしょう。しかし、たとえ使用要件が緊急措置であったとしても、子連れ出勤は子育て世代にとって心強い制度なのではないでしょうか。
「保活」「保育園の洗礼」「小1の壁」など、子どもを育てながら仕事をするのはいばらの道とも称されるほど険しいと考えられています。子連れ出勤が広まることによって、子育て世代の働き方の幅も広がることを期待します。
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