よくかんで食べると脳の働きが活性化する
――体を老けにくくして若々しさを維持するためには、どのような方法があるのでしょうか?
白澤先生 食生活においては、かむということが大切です。現代人は咀嚼力が極めて弱くなっています。近年の統計によれば、40代、50代の約8割が歯周病を患っているという結果が出ています。歯周病になると歯肉が弱くなり、かむときの圧力に耐えられなくなります。その結果、余計に咀嚼力が低下するという悪循環に陥ってしまうんです。
――咀嚼力が低下すると体にはどのような影響を及ぼすのでしょうか?
白澤先生 かむことで脳内の血流が増え、脳の運動野や感覚野、前頭前野などが活性化することがわかっています。かまなくなると脳内の血流の流れが悪くなって機能が低下し、うつや記憶力の低下など、さまざまな弊害が生じてしまいます。つまり、かまなくなると確実に老けてしまうんです。
食卓にはかまないと食べられないものを用意する
――食事の際にはかむことを意識するのが良いのでしょうか?
白澤先生 私のクリニックにいらっしゃる患者さんの中で、あまりよくかまずにものを食べている方には「“ありがとう”を6回、心の中で言いながらかみましょう」とお伝えしています。ひと口につき30回かむのが理想的で、「ありがとう」を6回繰り返すとちょうど30回になるんです。
また、かまないと食べられないものしか食卓にのせない、という考え方を持つことも重要ですね。
――例えば、主食を玄米や雑穀にするというのはいかがでしょうか?
白澤先生 カレーやオムライスを好む人は多いですが、実はほとんどの人はあまりかまずに飲んでいる状態なんです。なぜかというと、カレーやオムライスのケチャップでコーティングされた白いご飯はスルッと喉に入っていくからです。
でも、玄米に雑穀を入れたもので食べるカレーやオムライスは、よくかまないと喉に流れていきません。玄米と雑穀を混ぜたご飯など、かむことが必要なものを主食にするのはとても良いことです。
食事やおやつには昔から食べられているものを
――他には、どのような食事がおすすめなのでしょうか?
白澤先生 健康長寿の人が多い長野県では、3時のおやつが野沢菜とお茶だそうです。
近年は「やわらかい」「甘い」がおいしいものの代名詞のようになっていますが、かつての日本の食材は、ご飯でも野菜でもかんでいるうちに甘さを感じるものがメジャーでした。食材の生成技術が進んで砂糖や小麦粉が一般的になるにつれて、甘くてやわらかくてかまずに飲み込めるようなものが主流の現在の食生活に変わってしまったんですね。
ですから、先の野沢菜のように昔から食べられているものを食卓にのせることも大切だと思います。
――白澤先生は普段、どのようなものを食べているのでしょうか?
白澤先生 毎日、サラダや漬物でたっぷりの野菜を食べています。国内の10カ所ほどに畑がありまして、そこで作ったオーガニックな野菜を食べるのが基本です。
――畑での野菜の栽培は、先生の趣味なのでしょうか?
白澤先生 いえ、研究の一環です。私は、土壌微生物の多様性を十分に保つことが人間の健康寿命に関係しているのではないかと考えているんです。
実際、さほど人間の手が入っていない土地と、農薬や化学肥料が使われている土地では土壌微生物の量が倍近くも違うんですね。その違いは確実に体に表れますから、健康を実現するための畑のようなインフラを日本国内に作るべきではないかと考えています。その実現に向けて、自分の体を使ってさまざまな実験をしているところなんです。
――老けにくく健康であり続けるためには、食への意識を持つことが大切ということでしょうか?
白澤先生 必要なのは、その食材がどんなところで作られたものなのか、どのような栄養価があるのかなど、自分が食べるものに対する深い洞察力ですね。私は「元気で長生きになるためには、知識と考え方が大切ですよ」というメッセージを多くの人に届けたいと思っているんです。
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