神奈川県平塚市では父親の育休取得と家事・育児参画の促進を目的に、2024年3月定例議会にて議決成立後の2024年4月より、産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した平塚市内在住の被雇用者の男性に、10万円の交付金の支給を始めるそう。交付を受けるための条件や今後の展望について、平塚市役所健康課に話を聞きました。
産後パパ育休とは?
産後パパ育休(出生時育児休業)とは、育児休業とは別に、出生後8週間以内に4週間まで育児休業が取得できる制度です。育児・介護休業法の改正に伴い2022年10月に新設された制度で、女性でいう産休(産後休業)に該当します。
産後パパ育休は従来の育児休業と異なり、休業に入る2週間前までに職場に申し出れば取得ができます。また、初回の申し出時に申請すれば、2回に分割しての取得が可能となるため、休業期間の合間に就業期間を取ることができ、職場への負担が軽減できると考えられています。
平塚市の産後パパ育休取得応援交付金をもらうためには?
平塚市が導入予定の「産後パパ育休取得応援交付金」は、平塚市の住民基本台帳に登録があり、産後パパ育休等を取得した男性従業員を交付対象としています。
また、交付にはいくつかの条件があります。
・生後8週間以内に4週間以上の育児休業等を取得。
・出産前に平塚市健康課が実施する母親父親教室に参加して、赤ちゃんの扱い方はもちろん、女性の体の負担や変化、男性が育休を取る意義などを学ぶ。
・「パパ育宣言」を提出し、結果報告をおこなう。
これらの条件から、交付金による金銭的支援はもちろん、それを通じた男性の出産・育児への理解を深めることが目的だとわかります。
平塚市は「希望する結婚、妊娠、出産が叶い、ゆとりが持てるような総合的な支援策を展開する」ことを掲げており、その一環として産後パパ育休取得応援交付金を導入したそう。父親の育休取得と家事・育児参画の促進が、子どもを産み・育てることの後押しになると考えたようです。
取るだけ育休を排除!
しかし、夫の育休取得にはいわゆる「取るだけ育休」のような課題があります。取るだけ育休とは、育児休業を取得したものの家事や育児をせず、逆に妻の負担になってしまうという悲しき状況のことを言います。
食事の支度や洗い物が増えるなどの物理的負担はもちろん、家事・育児をしない夫へのストレスが募る精神的負担は、非常に大きいはずです。
平塚市では、取るだけ育休を防止するための一策として「パパ育宣言」の提出を義務としているそう。パパ育宣言とは、育休中の夫に担ってもらいたい役割を夫婦で話し合い、夫がやるべきことを明確にするというもの。育休取得後には妻が評価をおこなうそうで、仮に妻が「取るだけ育休だった」と判断したら、交付金は支払われないと言います。
なお、交付にあたり参加が義務付けられている母親父親教室の受講回数や所要時間、具体的なカリキュラム、パパ育宣言の見本などは、2024年3月1日以降、準備が整い次第平塚市のホームページにて順次公開予定とのことでした。
パパ育宣言の懸念
取るだけ育休を防ぐ一策には大きな意義を感じるものの、交付金が欲しいのであれば、たとえパパ育宣言通りの休業期間を過ごさなくとも、妻は評価をするのではないかという疑問が残ります。それではパパ育宣言が意味をなさなくなってしまうでしょう。SNS上でもこの点を心配する声が多数見られました。
平塚市役所健康課曰く「令和6年4月1日以降、事業を開始する中で、事業の充実を目指し検討する」とのこと。
また心配する声がSNSに多く寄せられていた一方で「条件や付属する教育、評価が細かくてすごい! 女性目線がたくさん盛り込まれているのでは? と思います」と、平塚市の制度に期待を寄せる投稿も見られました。本来あるべき育児休暇を過ごせるような施策になることを願います。
パパに育休を取ってほしい?
ベビーカレンダーの投票箱を使った調査によると、約半数がパパの育休を必要としていました。
また、26%の人は「悩ましい」という回答。この回答には、取るだけ育休への懸念や、収入のダウン、ハラスメントの心配、キャリアへの影響が考えられるでしょう。
平塚市の産後パパ育休取得応援交付金のような金銭的支援はもちろん、社会の理解や後押しがますます加速し、必要とする人が必要とする形で育休を取得できることを願います。
もしあなたが「パパ育宣言」を作るとしたら、どんな役割を盛り込みますか?コメント欄から教えてください!