都会の生活に慣れるのが精一杯
私は生まれも育ちも田舎なので、東京暮らしを始めたころは人の多さに驚きました。どこからこんなに人が溢れ出てくるのだろうと、人の波を見ているだけでもめまいがしそうになったほどです。
そんな上京したてだったある生理2日目。経血量が多い日のことです。通勤中、電車からバスに乗り換えようと駅構内を歩いていたら、ふとめまいに襲われました。
歩くのもしんどかったのですが、人の波があり「迷惑になるかも」と考えると動かないといけません。しかし、しばらく頑張って歩いたあと、しんどく私はその場に座り込んでしまいました。都会生活に慣れない時期でもあったので、疲労もあったかもしれません。
救世主が現れた
すると……そんな私に声をかけてくれた女性たちがいました。女性たちは近くのベンチに座ったほうがいいと私の両脇を抱え、ベンチまで誘導してくれたのです。
彼女たちのおかげで少しずつ体調が回復。そして、女性たちにお礼を伝えると……実は、女性たちは私と同じ電車に乗っており、そのときから「様子がちょっとおかしい」と思っていたそうです。顔色が悪く、足元もふらついていたため、「貧血かな」と感じ電車を降りたあと、追いかけたとのことでした。そして、実は生理中で、今日は経血量が多い日だということを伝えると……女性たちも「それは大変だったね」「無理はしないでね」と温かい言葉をかけてくれたのです。
事なきを得て職場へ
その後、女性たちはバッグの中から携帯用のおやつなどを取り出して、どこの誰ともわからない私に「どうぞ」と譲ってくれました。
私自身、めまいがよくならなければ救急車を呼ぼうと思っていましたが、とにかくつらい気持ちだったため、女性たちの気づかいには本当に助けられました。上京したてだったこともあって、私の中に「都会の人は冷たい」というイメージがあったものの、この一件で払拭されたのです。
一連の出来事を職場の同僚たちに伝えたら、みんな驚いていました。私と同じようにみんな田舎から都会へ出てきた人たちばかりなので、「都会って怖いと思ってたけど全然違うね!」「やさしい人もたくさんいるんだね!」などと自分のことのように喜んでいました。
今でも電車通勤をしていると、ふとあのときの女性たちのやさしさを思い出し、彼女たちのように他人を気づかうことのできる人になりたいと思うときがあります。今の時代ならSNSなどを使ってお礼を伝える術がありますが、あのときの救世主たちにもう一度お礼を伝えたいと思っても連絡が取れないことが今も悔やまれます。
著者/浦部さくら
作画/まっふ
監修/助産師 松田玲子
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