こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』、先週の金曜日に第3話が放送されました。今回は、やはり高橋メアリージュンさん演じる、佐野彩加について語らずにはいられません。さっそく第3話を振り返ってみましょう。
誰も彩加の状況を見ていない!?
心室中隔欠損症で生まれた彩加の赤ちゃんの経過は順調。手術もしなくて済みそうで、このまま容体が安定していけば、保育園にも預けて大丈夫だといわれます。しかし、なかなか保育園は見つかりません。
ある日、彩加の母親が彩加の家を訪れます。仕事復帰を急ぎたい彩加に対し、彩加がいなくても会社は大丈夫なのではないか、3歳まではできるだけ子どもと一緒にいたほうがいい、子どもの心疾患も彩加がお産ぎりぎりまで働いていたせいではないのか、夫が外で働き、妻が家で子どもを育てるべき……など、母親は彩加に背中を向けて話します。
本来であれば、いちばん身近な子育ての先輩であるはずの母親が発した、心ない言葉の数々。このシーンを見て、母子関係って本当に大切だなぁと改めて感じます。私の同僚に、元小児精神科の看護師だったスタッフがいたのですが、彼女が小児精神科で働いていたとき、やはり母子関係に問題を抱える患者さんが多かったのだそうです。そんな患者さんを見てきた彼女は、いい母子関係をつくるには最初が肝心!ということで助産師になったんですよ。
医師たちも気になる彩加。なにかしたいけれど……
日本産婦人科学会の調査によると、産後自殺で亡くなった方の数は、出血で亡くなった方の倍で、自殺した半数の方が「産後うつ」だったとのこと。この調査結果を受け、今、妊娠中からのママのメンタルケアの重要性が求められています。
彩加の様子が気になるペルソナ総合医療センターの医師たちは、周産期カンファレンスでも彩加の様子や産後うつを話題にあげます。そんななか、彩加の赤ちゃんが軽い気管支炎で救急外来を受診したとき、浮かない顔の彩加を見かねた、吉田羊さん演じる助産師の小松留美子は、思わず自分の連絡先を彩加に渡してしまいます。そして、偶然通りかかった綾野 剛さん演じるサクラと、大森南朋さん演じる今橋先生に見られてしまい、留美子は医師たちにとがめられます。
私も、留美子の”彩加の力になりたい”という気持ちはよくわかります。しかし、今橋先生がドラマの中で言っていたように、個人的な連絡先を渡すことは「ルール違反」。患者さんのことを思うあまり、留美子のような行動に出てしまう若いスタッフや看護学生は実際の現場でもいます。でも、それはいけないこと。難しい問題こそ、スタッフで共有し、解決していく必要があると思います。
追いつめられた彩加は……
保育園探しも思うようにいかない彩加。そして、彩加の仕事復帰をめぐってナオト・インティライミさん演じる夫から「なんでそんなイライラしてんの?出産してから性格変わったよ」という言葉が。自称イクメンの夫、ひと昔前の子育て論を押し付ける母親……。彩加の気持ちを理解してくれる人はおらず、彩加はどんどん追い込まれていきます。
そして、ある日、彩加の会社の後輩が彩加の家を訪れます。散らかっていたお部屋はきれいに整頓され、彩加の身なりもきちんとしています。そんななか、「彩加が立ち上げたプロジェクトのリーダーが彩加の同僚になった」という、彩加にとってとても衝撃的な報告がありました。
産休や育休中は、社会との繋がりがなくなったように感じる働く女性も多いと思います。今までバリバリ働いてきた彩加にとって、自分がいなくても変わりなく会社のプロジェクトが進んでいる現実は耐え難いものだったことでしょう。
「しっかりしなくちゃいけない」「きちんとやらくちゃいけない」……そう思う人ほど、つらくてもがんばるし、弱音を吐かないし、誰かに助けてもらおうとしません。そして、どんどん悪い方向に追いつめられていってしまうのではないかと思います。
そして彩加は、赤ちゃんをペルソナ総合医療センターの受付においたまま、いなくなってしまいます。追いつめられた彩加はどうなってしまうのでしょうか? そして、サクラたちは彩加を救うことができるのでしょうか? このつづきは、”『コウノドリ』第3話「私はダメなお母さん?」を助産師が振り返る!中編”でお話ししたいと思います。
著者:助産師 REIKO
医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。