こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第3話の振り返り。前回は、高橋メアリージュンさん演じる佐野彩加がいなくなってしまう場面まで振り返りました。今回は、その続きからお話ししたいと思います。
彩加はどうなっちゃうの!?
職場復帰を望んでいた彩加ですが、現実は厳しく、自分の存在意義にすら疑問を持つようになってしまいます。そして、彩加は赤ちゃんをペルソナ総合医療センターの受付においたまま、いなくなってしまいます。さらには、病院の屋上から飛び降りようとしていました。
そこに駆け付けたのは、星野 源さん演じる四宮先生。彩加は、「もうどうでもいいんです。誰にも必要とされていない。母親としてもダメ。わかんないでしょ」といいます。それに対し、四宮先生は「佐野さんの言うとおりですよ。俺にはあなたの気持ちはわからない。だから今あなたを引き留めているのは、俺のわがままです。まだ治療の道がある患者を放っておくことはできない」そして、「治療です。治ります。話したくなければ黙っていていい。ただ少しだけ話をきいてください」と声をかけながら、彩加に手を差し伸べます。
別々の人間だからこそ
四宮先生が差し伸べた手を彩加は握り、四宮先生もしっかり彩加の手を握りしめました。彩加は自殺を踏みとどまり、自分が産後うつにかかっている可能性が高いという説明を受けます。そこに彩加の夫が来院し、「どうしてこんなことを。言ってくれよ。夫婦は2人でひとつって母さんも言ってたじゃない」と声を荒げます。
すると四宮先生は、「なんだそれ。人間は2人でひとつになんかなれない。死ぬまでひとりだよ。たとえ夫婦でも別々の人間だからこそお互いを尊重しあう。それではじめて助け合えるんだろ」と。第1話の「手伝うじゃないだろ?あんたの子どもだよ」という言葉同様、少しぶっきらぼうながらも多くの人たちに共感を与えた言葉でしたね。
彩加が自殺するまでに追い込まれていたことを知る夫も反省したようですが、ここで注目したいのは、今橋先生による夫へのフォローです。今橋先生のフォローによって夫の心も救われたと思います。また、今橋先生の”自分も同じだ”という言葉によって、今回のできごとがこの夫婦だけではなく、誰もが陥る可能性のある問題だと言っているような気がしました。
小さなことだけれど、難しいこと
彩加を精神科の医師に繋げることができた、綾野 剛さんが演じるサクラと四宮先生。サクラは「本当に僕たち、産科医のできることは小さいね。ただ気付くこと、誰かに繋げることしかできない」と語ります。すると、四宮先生は「生まれた瞬間から赤ちゃんとお母さんの変化を見続けていく。それは小さなことじゃないだろ?」と答えていました。
多くの人が正常に経過する妊娠・出産だからこそ、しっかり見ていかないと、のちのち大きな問題になることもあります。気になることがあっても、なかなか対応が難しいケースもあります。気になるママの家庭訪問を、地域の保健師に病院のスタッフが依頼して保健師が家庭訪問しても、留守で会えないというケースも少なくありません。本当に問題があるケースは、なかなか表に出てこないことも多いんです。
「相談したいことがあるけれど、産科のスタッフはみんな忙しそうで、なかなか聞きづらい」という声を現場でもよく耳にします。たしかに忙しいときもありますが、やはり反省しなければなりませんね。でも、声をかけたスタッフがすぐに対応できなくても、そこはチームで仕事をしていますから、ほかのスタッフが対応できます。また、スタッフはいろいろな業務が重なったとき、どのように対応したらいいかというトレーニングも積んでいるので、遠慮なく声をかけていただきたいなと思っています。
「赤ちゃんが0歳なら、お母さんもお父さんも0歳ですよ」。サクラの言うとおりです。0歳ならできないことが多くても、わからないことがあっても当然で、誰かの助けを借りることもいけないことではありません。子育て中は、赤ちゃんのことばかりに気がいってしまって、なかなか余裕がないかもしれません。そんなときは、いったんまわりを見渡してみてください。きっと手を差し伸べてくれている人がいると思います。
後編では、まわりの人の話やジンクスに振り回されている、川栄李奈さん演じる山崎麗子のお話について、無痛分娩について触れながら振り返りたいと思います。
著者:助産師 REIKO
医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。