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賛否両論「TOLAC」ってなに?『コウノドリ』4話を振り返る【前編】

こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第4話は、帝王切開後の経腟分娩を希望している妊婦さんのお話でした。第4話では、この妊婦さんを受け入れるにあたり、産科や新生児科などの周産期医療にかかわる人員不足の現状にもスポットが当てられていましたね。それではさっそく『コウノドリ』第4話を振り返っていきましょう。

 

こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第4話は、帝王切開後の経腟分娩を希望している妊婦さんのお話でした。第4話では、この妊婦さんを受け入れるにあたり、産科や新生児科などの周産期医療にかかわる人員不足の現状にもスポットが当てられていましたね。それではさっそく『コウノドリ』第4話を振り返っていきましょう。

 

「TOLAC(トーラック)」ってなに?

安めぐみさん演じる秋野 連は妊娠30週。上のお子さん、美奈ちゃんの子育てに手を焼いていました。連は美奈ちゃんにきつく当たる原因が、帝王切開で出産したことで美奈ちゃんへの愛情が足りないのではと考えていました。そのため連は今回の出産は、ママの産道を通して赤ちゃんを産む、経腟分娩を希望します。

 

帝王切開をしたことのある妊婦さんに対して、経腟分娩を試みることを「TOLAC(トーラック:trial of labor after cesarean section)。そして、経腟分娩が成功した結果を、「VBAC(ブイバック:vaginal birth after cesarean section)といいます。ちなみに、第4話でNICUに赤ちゃんが入院しているにもかかわらず、旅行に行っていた母親を演じていた木下優樹菜さんも、第2子はVBACだったんですよね。

 

TOLACのリスクって?

今、通院している産院ではTOLACができないため、連はペルソナ総合医療センターの綾野 剛さん演じるサクラのもとを訪れます。「TOLACにはリスクが伴います。それはご存知ですか?」と尋ねるサクラに、連はだいたいのことは調べてきたといい、「陣痛を感じて産道を通して産むと子どもへの愛情が違うんですよね」といいます。

 

サクラが連に説明したように、TOLACに母子ともにリスクがあります。TOLACの最大の合併症は「子宮破裂」です。子宮破裂を起こすと、母体は大量出血から出血性ショックを起こし、命の危険が伴います。おなかの中の赤ちゃんも、子宮への血流が減ることにより胎児機能不全を起こし、最悪、死亡してしまう恐れもあります。ですので、子宮破裂の兆候があった場合、直ちに帝王切開に切り替える必要があります。

 

四宮先生の言っていることはまちがいではない

連の希望をできるだけ叶えたいというサクラに対し、星野 源さん演じる四宮先生は、「サクラ、お前ホントあきれるわ。お前のそのやさしさのせいで、妊婦はもちろん、俺たちも余計なリスクを背負わされてんだよ」と言っていました。

 

TOLACでは、陣痛促進剤が使えないので、自然に陣痛が来るのを待ちます。そのため、出産が夜間になる可能性もあります。多くの医療施設では、夜間の医療スタッフの人数は日中よりも少なく配置されています。その中で、子宮破裂を起こし、緊急帝王切開になったら……と考えると、四宮先生の言っていることは間違いではありません。

 

私も実際に夜間、TOLACから切迫子宮破裂で緊急帝王切開になったケースや、TOLACの妊婦さんではないですが子宮破裂を起こして緊急帝王切開になったケースに立ち会ったことがあります。このときは本当に緊急で、とにかく1分1秒でも早く帝王切開をしないと!という状況でした。

 

周産期医療にかかわる人員不足はどこにでもある話

私が立ち会ったケースはいずれもほかの出産がなく病棟も落ち着いていたので、スタッフ全員で対応ができ、ママも赤ちゃんも無事でした。しかし、ほかに出産があったら、ほかの緊急手術が入っていたら、新生児科の医師が救急搬送に出動していたら……と考えると、運がよかったのかもしれません。

 

ドラマの中でも、産科や新生児科など周産期医療に携わる人員不足は深刻なようで、大森南朋さん演じる今橋周産期センター長が医師の確保に奔走していましたね。厚生労働省の9月の発表によると、昨年10月時点で産婦人科と産科を掲げていた病院は1,332施設(前年比21施設減)で、統計を取り始めた1972年以降の過去最少を更新したとのこと。産婦人科不足は以前からも言われていましたが、少子化に伴う出生数の減少や医療訴訟の増加、勤務形態の問題などさまざまな要因が考えられます。また、医師の数は地域格差も大きいという問題もあります。

 

 

人員不足の問題を抱えながらも、連の希望を受け入れ、TOLACに臨むペルソナ総合医療センターのスタッフたち。連は無事に出産することができたのでしょうか?この続きは、後編でお話ししたいと思います。

 


著者:助産師 REIKO

医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

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