こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第6話の振り返り【後編】は、松岡茉優さん演じる下屋先生にスポットを当ててお話ししたいと思います。
誰もが経験する時期?
『コウノドリ』の第1シーズンでは下屋先生は研修医でしたが、第2シーズンではまだまだサクラや四宮先生の足元には及ばないものの、一人の産科医としてがんばっていました。
医師と助産師とでは少し状況は違いますが、ある程度のことは一人でできるようになり、先輩の目が離れるころって危ういんです。助産師も2~3年もすると仕事の内容もわかって、一人でできることも増えて、それなりの判断力も身についてきます。ですが、ベテランのスタッフと比べると、やはり自分の未熟さを痛感することも多く、早く1人前になりたい、早く○○さんのようになりたいという焦りや葛藤が生じる時期ともいえます。
下屋先生もそのような時期だったのではないかと思います。そして、福田麻由子さん演じる切迫早産の妊婦、神谷カエと出会いますが、カエは甲状腺クリーゼを発症し、赤ちゃんとご主人を残して帰らぬ人になってしまいます。
下屋先生の気持ちは空回り……
もう同じことを繰り返してはいけない……そういう思いもあったのではないでしょうか。下屋先生は、問題のない妊婦さんたちにまで甲状腺の検査をおこない、妊婦さんだけでなく、外来のスタッフも困惑させてしまいます。そして星野 源さん演じる四宮先生に「邪魔だって言ってんだよ」「患者の心配するふりして、神谷さんの死を乗り越えたいだけじゃないかよ」とまで言われてしまいます。
患者さんのためと言いつつ、自分自身が安心するため、ほかの医師になにか言われないようにするために、必要のない診察や検査をおこなう医師もいます。下屋先生にはそのような気持ちはなかったかもしれませんが、”患者さんのため”といいながら”自分のため”におこなっている診療を四宮先生はしっかり見抜いていたのではないでしょうか。
そんな下屋先生を見かねたサクラは、下屋先生に休暇を命じます。休暇はいらないという下屋先生に、サクラは尋ねます。「産科医になったこと、後悔してる?」。いいえと答える下屋先生にサクラは言います。「下屋はどんな産科医になりたい?」。下屋先生は即答できず、休暇をとることになりました。
下屋先生の決意
休暇中に吉田 羊さん演じる小松留美子助産師とBABYのライブに訪れた下屋先生。サクラのもうひとつの顔、BABYが奏でるピアノの音を聴きながら、下屋先生はこれまでのことを思い出し、涙ながらに産科に帰りたいという思いを口にしました。
その後、回旋異常の赤ちゃんの出産に立ち会った下屋先生は、ある決意をし、平山祐介さん演じる救命医、加瀬先生のもとを尋ねます。「患者一人死なせたくらいで舐めんなよ」、加瀬先生は下屋先生にそう言い放ちました。ですが、下屋先生はあのとき最善を尽くしたと言える加瀬先生と違って、自分には後悔しかないと言います。
下屋先生は救命で全身管理を身につけ、なにかあったときにお母さんと赤ちゃん両方を助けられる産科医になりたいと、救命科に異動をすることを決意しました。下屋先生のように何かのきっかけでほかの診療科に異動するという医師もめずらしくありません。やっぱり産科に!といって異動してくる医師もいますよ。
下屋先生の進む先は……
髪を切り、救命科のユニフォームを着た下屋先生が最後のあいさつに産科を訪れます。四宮先生からはジャムパン(しかもホイップクリーム入り!)の餞別と産科メンバーからの激励の言葉とともに、下屋先生は送り出されていきました。
大森南朋さん演じる今橋先生とともに救命科を訪れた下屋先生。古館寛治さん演じる救命科部長、仙道先生からは辛らつな言葉を投げかけられ、加瀬先生には「救命は勉強する場所じゃないんだよ」と言われてしまいます。救命科は常に人の生死と向き合わないといけないという厳しさもあり、先生方にも救命医としてのプライドもあったのではないかと思います。
仙道先生や加瀬先生の態度を見ていると、下屋先生も前途多難な感じもします。ですが、「命の重さ」を常に感じているという点では、産科も救命科も変わりありません。厳しいことを言いながらも、加瀬先生は下屋先生の思いに向き合ってくれるのではないかと思っています。救命科の知識とスキルを身に着けた産科医なんて、本当に心強いです。下屋先生が成長して、産科に戻ってきてくれるといいなと思いました。
自ら成長するために救命科に異動した下屋先生。そして、あらたにペルソナ総合医療センター産科の新メンバーとなる松本若菜さん演じる倉崎先生、そして、看護スタッフの柱ともいえる小松助産師のからだに異変が……。第7話も楽しみです。
著者:助産師 REIKO
医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。