こんにちは! 助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』もいよいよ終盤。救命科に異動した松岡茉優さん演じる下屋先生、小児循環器科への異動を決めた坂口健太郎さん演じる白川先生に続き、星野 源さん演じる四宮先生の去就も気になるところ。さっそく振り返っていきましょう。
産科医療体制の現状
塩見省三さん演じる四宮先生のお父さま、晃志郎は、石川県にある町の病院でただ一人の産婦人科医です。第8話では、その晃志郎が倒れ、肺がんのステージⅣであることが明らかになりました。肺がんのステージⅣとは、脳や肝臓、骨などにがんが転移して、一般的には「末期」と呼ばれる状態です。本来であれば治療に専念すべき晃志郎ですが、「この町をお産のできない町にしたくない」という強い思いを持ち、診療を続けていました。
近年、産婦人科医や出産可能な施設の減少が問題となっています。それに対し国は、総合周産期母子医療センターあるいは地域周産期母子医療センターにハイリスクなケースを集約し、一般病院や診療所ではローリスクの分娩を取り扱うなどの周産期医療体制の整備に力を入れてきました。このような体制づくりが進む一方で、地域格差も明らかになり、今後の課題のひとつにもなっています。
離れていても……
ペルソナ総合医療センターに戻った四宮先生ですが、再び晃志郎が倒れたとの連絡が入ります。晃志郎の元にかけつけた四宮先生。そのとき、晃志郎が診ていた妊婦さんが常位胎盤早期剥離の疑いで搬送されてきます。
常位胎盤早期剥離は妊娠中に突然胎盤が剥がれてきてしまう病気です。常位胎盤早期剥離を放置するとママもおなかの中の赤ちゃんも危険な状態に陥ってしまうため、一刻も早く帝王切開をおこなう必要があります。
体調もままならない状況にもかかわらず、自分が執刀するという晃志郎を制し、四宮先生が執刀することに。四宮先生が執刀すると聞いた妊婦さんのご主人は、怪訝そうな態度でしたが、晃志郎は「うちの息子を信じてください。東京で立派に医者やっています」といいます。離れていても晃志郎は常に四宮先生を気にかけ、産婦人科医としての成長を感じていたのではないかと思いました。
産婦人科医は四宮先生ただ一人。第一助手は……
生まれてくる赤ちゃんの状態が悪いかもしれないことも予測されるため、NICUの立ち合いを依頼したものの、病院に来るまでには時間がかかるとのこと。そして、帝王切開の第1助手として現れたのは、整形外科の医師でした。
先ほど、産婦人科医の数や配置の地域格差について少し触れましたが、医師数が確保できないため、お産の取り扱いを辞めてしまったり、お産の取り扱う数を制限してしまう施設も増えています。それを回避するために、ほかの施設の産婦人科医が助っ人に入るということもあるようです。ですが、ドラマのように、他科の医師が帝王切開に入らなければならない状態というのはかなり厳しい状況なのではないかと思いました。
無事、帝王切開は終了
無事、帝王切開は終了し、ママも赤ちゃんも状態がいいことを晃志郎に報告する四宮先生。今回赤ちゃんを出産したママも、生まれた赤ちゃんのお姉ちゃんも取り上げた晃志郎は、おなかの中の子も取り上げたかったと悔やみますが、四宮先生は「父さん、よくここで医者続けてきたな……」といいます。
人員不足とはいえ、緊急事態には最低限の人員が確保でき、NICUもすぐ近くにあるペルソナ総合医療センターで働く四宮先生。地域の産科医療の現状は想像以上に壮絶で、その環境で自分の父親が奮闘しているということを肌で感じたのではないでしょうか。
そんな四宮先生に対し、晃志郎は「ここが好きだからな」といい、「まだまだお前には負けんぞ」といいます。最後にしっかりと握手した2人。多くは語らずとも、お互いを尊敬し、ライバルとして認めている2人の関係にぐっときた方も多かったのではないかと思います。
自分の父、晃志郎がおかれている状況を知った四宮先生。その一方で、第8話では常位胎盤早期剥離の研究に専念しないかとも言われていましたね。加えてペルソナ総合医療センターの人員不足……。四宮先生はどのような選択をするのでしょうか? 後編では、もう一つのお話、「不育症」について振り返りたいと思います。
著者:助産師 REIKO
医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。