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『コウノドリ』命の選別?出生前診断と夫婦の選択 第10話を振り返る

こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第10話は、「出生前診断」がテーマでした。いろいろ考えさせられた第10話を振り返っていきたいと思います。

 

こんにちは!助産師のREIKOです。TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第10話は、「出生前診断」がテーマでした。いろいろ考えさせられた第10話を振り返っていきたいと思います。

 

出生前診断とは?

綾野 剛さん演じるサクラのもとに1組の夫婦が訪れます。出生前診断を受け、”21トリソミー(ダウン症候群)陽性”と検査結果が出た、初音映莉子さん演じる妊婦の高山透子と、石田卓也さん演じる夫の光弘です。

 

出生前診断はおなかの中の赤ちゃんが先天的な病気、染色体異常などがないか検査して診断することをいいます。出生前診断の方法はさまざまありますが、透子が受けた検査のようにママの血液を調べる方法は医療的な処置を必要としないため、検査を希望される妊婦さんも増えてきています。

 

これまでは、クアトロテストなど、ママの血液を用いて、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミー、開放型神経管奇形の確率を調べる「母体血血清マーカー検査」が一般的でした。そして、2013年からは「NIPT(新型出生前診断)」が日本でもはじまりました。

 

NIPTは、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの確率を調べるものです。母体血血清マーカー検査にくらべて、検査ができる週数の範囲が広い、検査結果の精度が高いことに加え、限られた医療施設でおこなわれているということ、誰でも受けられる検査ではないことなどの特徴があります。

 

21トリソミー(ダウン症候群)って?

しかし、これらの検査だけでは確定診断ができません。確定診断をおこなうためには、羊水検査や絨毛検査が必要になり、その際には医療的な処置が必要なります。確定診断を受けるかどうかは、検査に対する説明やじゅうぶんなカウンセリングが必要になります。透子もサクラの説明を受け、羊水検査をおこないました。その結果は、「21トリソミー(ダウン症候群)」。

 

21トリソミー(ダウン症候群)は、21番目の染色体に異常があり、大多数は本来2本である染色体の数が3本であることが原因で、心疾患や消化管の異常など、さまざまな疾患を合併し、中等度の発達遅滞や精神遅滞をともなう染色体異常です。染色体異常の中でも、もっとも多く、頻度は1/1,000とされていますが、近年では高齢出産の影響もあり、約1/600との報告もあるようです。21トリソミー(ダウン症候群)の子は、温厚で親しみやすく、通常の社会生活を送ることも多いといわれており、平均寿命も60歳前後とされています。

 

出生前診断で検査される18トリソミーや13トリソミーも染色体異常ですが、21トリソミー(ダウン症候群)に比べて短命で、18トリソミーは子宮内胎児死亡となるケースも多く、50%は生後1カ月、90%は1年以内、そして13トリソミーの90%は約1年の寿命であるといわれています。

 

産まない選択をした人・産んだ人・産む選択をした人

今回、21トリソミー(ダウン症候群)の赤ちゃんをめぐってそれぞれの選択をしたママがいましたね。

 

りょうさん演じる明代は、上のお子さんのこと、夫婦で経営しているお弁当屋さんのこと、経済状況などの理由で、おなかの中の赤ちゃんをあきらめました。今回のようなケースに限らず経済的理由は、おなかのなかの赤ちゃんをあきらめる理由の上位にもなっています。ですが、赤ちゃんをあきらめるという選択にいたるまでには、さまざまな葛藤があったことでしょう。

 

奥山佳恵さん演じる木村弓枝は、21トリソミー(ダウン症候群)のお子さんを産み、育てていました。女優の奥山さんは実際に21トリソミー(ダウン症候群)のお子さんを育てているママでもあります。弓枝の21トリソミー(ダウン症候群)の子どもを産み育てることの大変さやよろこびは奥山さん自身の言葉のようにも感じました。

 

そして、透子は一度はおなかの中の赤ちゃんをあきらめる選択をしましたが、処置を前にやっぱり産みたいという意思を示しました。実際の現場でも、一度は赤ちゃんをあきらめるつもりで入院をしたけれど、やっぱり赤ちゃんを産みたいといって、妊娠を継続するケースも少なくありませんでした。

 

医療の進歩によって……

NICUでの白川先生との会話で、今橋先生は、昔に比べてより多くの命を救えるようになって、悩む家族が増えていることも現実だといいました。

 

たしかに以前は流産となってしまったり、早産で生まれても助からなかったりするケースが、周産期医療の進歩によって、赤ちゃんが生存可能な時期まで妊娠が継続でき、たとえ早産で生まれたとしても救命が可能になってきています。ですが、命が助かったとしても妊娠週数が浅ければ浅いほど、赤ちゃんに合併症や後遺症が生じるリスクは高くなります。命は助かったけれども、今後のことを考えると……というケースも少なくないのではないでしょうか。

 

それに対し、超音波や出生前診断などがなかったころ、21トリソミーなどの異常は赤ちゃんが生まれてからでないとわからなかったと思います。ですが、今では赤ちゃんが生まれる前にわかる疾患も増え、その結果、中絶を選択するケースもあります。

 

私たちができること

今まで生まれてこれなかった赤ちゃんが生まれてこれるようになり、生まれてきていた赤ちゃんが生まれてこれなくなっているともいえるのかもしれません。これを「命の選別だ」と表現する人もいます。

 

ですが、「命の選別という言葉にみんながとらわれている。母親、父親、家族の事情に目が向けられていない。それぞれの事情の上に命が生まれてくる」とサクラが言ったように、出生前診断を受ける・受けない、その結果で赤ちゃんを産む・産まない……。その選択の背景にはさまざまな要因があり、どれが正解ということは一概には言えません。実際に自分が透子の立場だったら……と考えた方や、実際に透子や明代、弓枝、それぞれと同じような状況にいる方もいらっしゃるかもしれません。

 

自分の選択が間違っていなかったかどうかということの答えはすぐには出ないと思いますが、サクラが言っていたように、私たち医療者ができることは「ご家族が出した選択に対し、間違っていなかったと思えるように家族と一緒に命に向き合っていくこと」。まさにその通りだと思っています。自分がした選択、あるいはこれからしようとしている選択についてもし迷いがあるのなら、ひとりで悩まず、身近な専門家に相談してみてくださいね。

 


TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』も次回はいよいよ最終回! お父さまが亡くなられたとの連絡が入った四宮先生、第10話でなにか言いかけた小松さんの今後も気になりますし、須藤理沙さん演じる小松さんの同期の助産師、武田の出産の行方も気になります。最後まで見逃せません!

 


著者:助産師 REIKO

医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

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