こんにちは!助産師のREIKOです。10月から始まったTBS系金曜ドラマ『コウノドリ』もとうとう最終回を迎えました。最後の振り返りをしていきましょう。
おなかの中の赤ちゃんは21トリソミー。高山夫婦のその後は?
第10話で出生前診断を受け、おなかの中の赤ちゃんが21トリソミー(ダウン症候群)と判明した初音映莉子さん演じる高山透子と、石田卓也さん演じる夫の光弘。2人は、一度は赤ちゃんをあきらめると決断したものの、やはり産むという選択をしました。
赤ちゃんを産むと決断しても、やはり先のことを考えると不安になってしまう透子。やはりなかなか現実を受け入れられない弘光。そんななか、大森南朋さん演じる今橋先生から紹介されたのは、ダウン症のある子どもの母親、エミリー・パール・キングスレーさんが書いたという「オランダにようこそ」という詩でした。そして、奥山佳恵さん演じる木村弓枝の家族に会い、話を聞くことで、透子も光弘も少しずつ気持ちを前に進めていったように感じます。
そして無事に女の子を出産。透子はこの子がかわいくて仕方ないといっていましたね。この先、またいろいろ悩むことも出てくるかと思いますが、「1人じゃない」ということを理解している高山夫妻は一つひとつのできごとをみんなで乗り越えていくのではないかと思いました。
小松さんの同期 武田さんのお産の行方は?
吉田 羊さん演じる助産師の小松留美子の同期、須藤理沙さん演じる武田京子もいよいよ出産です。ゆっくりながらも順調に進んでいたお産でしたが、おなかの中の赤ちゃんの心拍数が低下し、緊急帝王切開に。そして、赤ちゃんは無事に生まれたものの、手術室の床には大量の出血が……。武田さんは「子宮型羊水塞栓症」を起こし、心肺停止の状態に陥ってしまいます。
武田さんが発症した子宮型羊水塞栓症は、DIC先行型羊水塞栓症ともいわれます。子宮型羊水塞栓症は、なんらかの原因によって、比較的大量の羊水がママの血液中に流れ込んでしまうことで、血液を固めるはたらきに障害が起き、大量出血を起こしてしまうという状態です。羊水塞栓症の発生頻度は、全分娩数の0.03%ときわめてまれですが、母体死亡率は40~80%ととても高く、妊婦死亡の原因である産科危機的出血の主な原因にもなっています。
救命科の医師のサポートもあり、一命をとりとめた武田さんですが、助産師としてさまざまなお産に立ち会ってきたであろう武田さんもまさか自分が……と思ったかもしれません。前編を通じて、ママや赤ちゃん、そして家族の危機的状態を描いてきた『コウノドリ』。「出産は奇跡だ」と思った方がたくさんいたと思います。その一方で、妊娠・出産・子育てに対する不安や恐怖が強くなったという方もいらっしゃるかもしれません。
『コウノドリ』で取り扱っていたそれぞれのテーマは、めったにないことかもしれませんが、誰にでも起こる可能性があります。ですが、日々自分のからだを気づかうこと、健診をきちんと受けること、1人で悩まないできちんと専門家に相談すること……など、リスクを回避する手立てはたくさんあるように思います。
みんなそれぞれの道へ。でも目指す場所は同じ
能登に帰り、お父さまの後任として働く決意をした四宮先生に続き、小松さんも”お母さんのケアに力を入れた場所をつくりたい”と、ペルソナ総合医療センターをやめる決意を口にします。残された綾野 剛さん演じるサクラは、離れていても、目指す場所は同じ。自分はペルソナにいてお母さん、赤ちゃんと社会を、そしてそれぞれの場所でがんばっている仲間たちをつなげていく。それは、赤ちゃんとお母さんの笑顔に繋がっていくと思うから……といいました。
「全身管理を身につけ、なにかあったときにお母さんと赤ちゃん両方を助けられる産科医になりたい」といって救命科に異動した松岡茉優さん演じる下屋先生、「上ではなく先を目指す。そうすればよりよい未来を子どもたちに届けられるかもしれない」といって、小児循環器科への異動した坂口健太郎さん演じる白川先生、産科医にはならないといっていた宮沢氷魚さん演じる2代目ジュニア赤西先生も、産科医になることを決意し、四宮先生を追いかけて能登の病院へ行きました。
サクラのいうとおり、離れていても、目指す場所は同じ。すべては赤ちゃんとお母さんの笑顔のため、それぞれがそれぞれの役割を果たしていくのだと思います。これは、ペルソナ総合医療センターのメンバーだけではなく、実際に赤ちゃんやママにかかわっている人たちすべてにいえることなのではないでしょうか。
『コウノドリ』では「なにかあったらいつでもきてくださいね。私たちはいつでもここにいますから」というような言葉をよく耳にしました。
私たちベビーカレンダーも、「A Sea of Smiling Babies~赤ちゃんの笑顔でいっぱいに~」をビジョンに、これからママになろうとしている方、子育て中の方、そしてご家族の方たちの力になれたらと思っています。(TEXT:助産師 REIKO)
著者:助産師 REIKO
医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。