出産時に健康保険から支給される出産育児一時金はご存知の人も多いと思いますが、出産前の体調悪化を補助する“妊娠高血圧症候群等の医療費助成”や、出産したお子さんが未熟児の場合や黄疸などの症状が出た場合に補助する“未熟児養育医療制度(助成)”についてはご存知でない人も少なくないと思います。
この2つの制度のポイントと注意点をお伝えいたします。
1.妊娠高血圧症候群等の医療費助成
一部の自治体(都道府県・市区町村)で実施している制度で、妊娠高血圧症や妊娠が原因の糖尿病、貧血、産科出血、心疾患に該当した場合に、健康保険適用後の自己負担額に対して助成がおこなわれます。“妊娠中毒症等療養援護費”など、別の名称の制度であることもあります。
制度が利用できるかどうかは、所得や住民税の課税状況、入院日数等が基準となり、自治体ごとの基準が異なります。たとえば、東京都では、前年所得税額が3万円以下の世帯または入院見込み日数が26日以上の場合が対象となります。また、埼玉県では、前年所得税額が3万円以下の世帯かつ入院日数が7日以上の場合が対象です。すべての自治体で実施されている制度ではないので、お住いの自治体の母子健康の担当部署に確認をしましょう。
2.未熟児養育医療制度
原則、全国の自治体で実施している制度で、自治体によっては「未熟児養育医療給付制度」と表示されることもあります。出生時の体重が2,000g以下の乳児(0歳児)または、生活力が弱く対象となる症状がある乳児が対象となります。対象となる症状は、以下の①~⑤のいずれかに該当する場合です。
① 運動不安、運動異常、けいれん
② 体温が34℃以下
③ 強いチアノーゼ(体の一部分が暗赤色または青白く見えること)、呼吸異常、出血傾向が強い等の呼吸器などの循環器の異常
④ 生後24時間以内に排便がない、生後48時間以上嘔吐が持続などの消化器の異常
⑤ 強い黄疸(おうだん)
対象となった乳児の医療費について、健康保険適用後の自己負担額が助成されます。なお、おむつ代、衣服代、差額ベッド代は対象外です。また、手続きはお住いの市区町村でおこないます。未熟児で出生した場合は、出生日を含む14日以内が申請期間ですので、パパやご家族の協力が必要になるケースもあります。未熟児で生まれる可能性があると診断を受けた場合は、事前に準備されることをおすすめします。
妊娠高血圧症候群等の医療費助成にしても未熟児養育医療制度にしても、必要になる可能性は高くありませんが、妊婦さんや赤ちゃんの体調が思わしくない場合には心強い制度です。今後、出産を控える人は出産育児一時金などともに覚えておくといいでしょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。