妊娠や出産により、尿漏れなどの人には言いづらいトラブルが起きることもあります。そのようなトラブルは骨盤底筋を鍛える体操をおこなうことで症状が改善される場合もあります。今回は、骨盤底筋と骨盤底筋体操について解説します。
骨盤底筋とは
骨盤内には、尿道や膀胱、子宮、腟、腸、肛門といった内臓があります。「骨盤底筋」とは、恥骨・尾骨(びこつ)・坐骨(ざこつ)に至るまでの間に位置しているハンモックのように内臓などの支えとなる働きをする筋肉のことです。
骨盤底筋が弱くなると、内臓が自らの重みで下がってくる「内臓下垂(ないぞうかすい)」が起こるようになります。骨盤底筋の緩みがひどくなると命にかかわるわけではありませんが、何かと生活に支障が出てきます。
妊娠や出産による骨盤底筋への影響
筋膜と筋肉で構成されている骨盤底筋は、妊娠中のおなかの重みや出産時のいきみ、加齢などが影響してダメージを受けることがあります。骨盤底筋が緩むことで、尿もれや頻尿、便秘といったトラブルも起こりやすくなります。
●妊娠による骨盤底筋への影響
妊娠中は子宮が大きくなり、子宮を支えている骨盤底筋にも負担が加わります。そのため、痔や陰部の静脈瘤(じょうみゃくりゅう)、腰痛、出産後にも痛みが続く場合もあります。
また、出産の準備をするために骨盤底筋群は自然に緩んでいきます。胎児が成長していくと子宮も大きくなり、子宮を支える筋肉や膀胱の筋肉が引っ張られるため、尿もれの症状があらわれやすくなることもあります。
●出産による骨盤底筋への影響
出産時には、胎児を体外に押し出す働きにより、子宮を支える筋肉や膀胱の筋肉がさらに伸びる形となります。
出産後は骨盤がゆがみやすい時期でもあり、骨盤をゆがんだままの状態にしておくと、肥満や腰痛、腟の緩みの原因となる可能性があります。
骨盤底筋群の緩みによって、笑ったときや重い物を持ち上げたとき、咳やむせたときなど、おなかに力が入る動作をしたときに尿もれなどのトラブルがおきることもあります。
骨盤底筋体操(ケーゲル体操)の方法と効果
妊娠や出産で緩んだ骨盤底筋を鍛える運動が、骨盤底筋体操(ケーゲル体操)です。
骨盤低筋体操を始めるにあたり、まずは自分の体調をしっかりと把握しておく必要があります。体操の途中で気分が悪くなった場合は、すぐに中止しましょう。
骨盤底筋体操は、仰向けや立った状態、座った状態でもおこなえるので、自分のコンディションに合わせて楽な姿勢でおこなうことができます。また、運動が苦手な人でも、かんたんにストレスなくおこなうことができます。
●骨盤底筋体操の方法と期待できる効果
骨盤底筋体操は腟や肛門の筋肉をきゅっと締めたり緩めたりする動作を繰り返しおこないます。1日30~100回おこなえば、早ければ2週間、通常は3カ月~半年ほどで効果が現れるといわれています。
●骨盤底筋の実際
妊娠中や産後の尿漏れ以外にも腟の締まりなどのトラブルも改善し、子宮や膀胱などが外に出てしまう骨盤内臓器脱を予防する効果があります。また、妊娠や出産に関わる方だけではなく、骨盤のゆがみを予防することで、冷えや生理不順などの改善効果も期待されています。
●骨盤底筋体操をおこなうときの注意点
骨盤底筋体操を長期間おこなっても尿漏れなどの症状が改善されない場合は、かかりつけの医療機関の医師や助産師に相談してみましょう。
まとめ
妊娠や出産、加齢による骨盤底筋はゆるみやすくなります。骨盤底筋体操を持続していくことで、弱くなった骨盤底筋を強くすることが期待できるので、体調の変化を実感できるようになると思います。
また、尿漏れなどの症状がない方も、骨盤底筋体操をおこなうことで、将来的な尿失禁の予防をすることに役立ちます。毎日コツコツと継続して取り組むことが大切なので、妊娠中や出産後直ぐの方は、無理をしない程度にようにおこなうのが良いでしょう。
監修者:Yuko
看護大学卒業後、大学附属病院産婦人科病棟にて助産師として勤務、私立大学看護学部実習助手、市役所臨時職員を経てベビーカレンダーの記事執筆・監修に携わる。現在一児の子育て中。