赤ちゃんとの時間はかけがえのないものですが、赤ちゃんの求めていることすべてに答えてあげることは難しいものです。
Q. サイレントベビーになるのではないかと心配です
2ヶ月半の子を実家から遠く離れた地域で、夫婦だけで育てています。子どもは、生後1ヶ月ごろまでは日中ほとんど寝ていたため、1~2時間ごとの授乳以外は、家事もできていました。しかし、最近はひっきりなしにぐずり、母乳を欲しがるため、なかなか上手く対応することができません。
家事の最中に泣き出しても、すぐに応じてあげられず、「ちょっと待っててね」と声をかけながら、何分も泣かせたままになってしまいます。授乳は母と子のコミュニケーションの時間だと分かっていても、子どもは目を閉じて一心不乱に母乳を飲んでいるので、手持ち無沙汰でつい、テレビや携帯電話を見てしまったりします。
こうした対応によって、「サイレントベビー」になるのではないかと心配になっています。授乳中は目が合わないですし、普段も子どもはなかなか私の目を見てくれず、一生懸命天井や別の場所を見つめています。私の対応が良くなかったのではないか、嫌われてしまったのではないかと、気になってきました。これから、どのような対応を心がけていけばいいでしょうか?
A.たっぷり抱っこしてあげましょう。
「サイレントベビー」は、小児科医の柳沢慧氏が、著書『いま赤ちゃんが危ない-サイレントベビーからの警告』(1990年)において、静かで表情に乏しく、あまり泣かない赤ちゃんを「サイレントベビー」と名付けたことから、注目されるようになりました。赤ちゃんは、泣いたりぐずったり、「アー」「ウー」という声(クーイング)を発したりしながら、母親の注意を自分に引き寄せ、世話をしてもらおうとします。
これは、赤ちゃんなりのコミュニケーション方法ですが、サイレントベビーは、そのようなコミュニケーションを取ろうとしない赤ちゃんであると言えます。
小児科医の堀内勁氏(聖マリアンナ大学名誉教授)は、著書『サイレントベビーからの警告―子どもたちはなぜ壊れるのか』(1999年)で、赤ちゃんが泣いているのに抱っこをせず、そのまま放置しておくような育児がサイレントベビーを生み出すこと、そこから続くさまざまな危険性と抱っこやスキンシップの重要性を述べています。
とはいえ、家事の最中に泣き出したときにすぐに応じられないことで、赤ちゃんがたちまちサイレントベビーになるわけではありません。赤ちゃんとのコミュニケーションは、五感すべてを使って行われます。赤ちゃんが目を閉じていたり、赤ちゃんと視線が合わないようでしたら、語りかけたり、抱っこして背中をトントンしたり、なでたりするなど、聴覚や触覚を使ってコミュニケーションをとる方法もあります。ぜひ、たっぷり抱っこをして、声をかけていただければと思います。
(回答/三石知左子先生)
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