妊娠中は、時期によってさまざまな呼び方がありますよね。お腹が大きくなり、分娩が近づいてくると臨月や正期産などと耳にすることも多いと思います。今回は臨月と正期産の違いについて、臨月の過ごし方や臨月に起こる異常と分娩の兆候の違いについてお話していきたいと思います。
臨月はいつから?
一般的に臨月とは、妊婦さんのお腹が大きくなってきて、出産間近の状態を指します。妊娠10カ月のことで、妊娠36週0日から39週6日までとなります。産婦人科で出産に適した時期(正期産)とされているのは、妊娠37週0日から41週6日までとなっているので、臨月=正期産ではありません。妊娠36週以降の妊婦健診では、内診で子宮口がどれだけ開いているか、胎児の頭が下がっているかなどを確認し、胎児の体重や頭の大きさ、胎児の向きなどから自然分娩が可能かどうかの評価をします。これは、分娩に向けてお母さんの体の準備がどれだけ進んでいるかのチェックです。胎児については、CTGという胎児の心臓の音を聞いて、元気かどうかがわかる検査もあり、お母さんや胎児が異常なく出産を迎えるために行われます。妊婦健診は、妊娠時期によって回数が異なり、妊娠36週以降の妊婦健診は週1回になります。妊娠23週6日までは4週間に1回ですが、妊娠24週以降~35週6日までは2週間に1回となって回数が増えていきます。妊婦健診は必ず受けて、出産までお母さんの健康や胎児の成長に問題がないか確認してもらいましょう。
臨月の過ごし方
臨月になるとお腹も大きくなり、出産が近づいてきて落ち着かない方も多いのではないでしょうか。ここでは、妊娠36週以降の妊婦さんの生活についてお話しします。
・適度な運動をしましょう
妊娠が分かっても仕事を続ける妊婦さんは多くいますが、出産前は予定日から6週間前(双子などの多胎妊娠は14週間)になると産前休業を取得することができるので、多くの妊婦さんは家でゆっくり過ごすことになります。妊婦健診で特に運動の制限を言われていない場合は、適度に運動をすると良いでしょう。気分転換や体重増加が緩やかになる、安産傾向になりやすいなどの効果があります。しかし、お腹の張りや出血など気になる症状がある場合は病院へ受診するようにしましょう。
・入院や退院後の準備
いつ出産になってもいいように入院や退院後の準備を確認しておきしょう。いつ入院しても良いように母子手帳や保険証を常に持っておきましょう。また、陣痛が起きた時に慌てないため、病院やタクシーの電話番号などの確認をしておくと良いでしょう。
・分娩に向けてイメージトレーニングをする
陣痛が来てから分娩するまでのイメージトレーニングをしておくといざ陣痛が来たときに慌てずにすむかもしれません。病院では陣痛や分娩について、集団や個別に指導を受けることもあります。しっかりと話を聞いて、分からないことは確認をしておくと良いでしょう。
・感染症について
妊娠中は感染症の流行も気になるところです。万全の体調で出産に臨めるように、感染予防をするようにしましょう。毎年猛威をふるうインフルエンザは、日本で妊婦さんが重症化した報告はありません。しかし、厚生労働省ではワクチンの接種が推奨されており、予防接種を受けておくことで感染するリスクを減らすことができます。インフルエンザの予防接種を受ける際には、必ず母子健康手帳を持参してください。インフルエンンザワクチンを接種するしないに関わらず、アルコール消毒やこまめに手洗いとうがいを行うことで感染リスクを減らすことができます。できるだけ人ごみを避けるように意識することも大切です。感染対策はインフルエンザだけでなく、さまざまな感染症を予防することにもなります。
臨月にみられる異常と分娩の兆候との違いについて
臨月になると心配なのが陣痛ですが、陣痛を経験したことのない妊婦さんは、陣痛の前に起こる前駆陣痛なのか本格的な陣痛なのかの判断が付きにくいこともあるかと思います。臨月に多い腹痛を伴う異常と分娩の兆候の違いについてお話していきます。
常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)
妊娠32週を過ぎて出血があった場合には、「常位胎盤早期剥離」の可能性が考えられます。常位胎盤早期剥離は、胎児が生まれる前に胎盤が子宮から剥がれてしまうことです。胎盤が剥がれたところから出血が多くなり、妊婦さんや胎児が亡くなることもあります。妊娠前や妊娠中に高血圧症と診断された、子宮内の感染を起こしている、交通事故などでお腹に衝撃が加わったことがあるなど、さまざまな原因があります。症状として現れる痛みの多くは、下腹部痛や背部痛、子宮の痛みです。性器出血には羊水が混ざっていることもあります。出血の多くは体の中へと溜まっていくので、腹痛が強く、手術を必要とすることが多いです。強い痛みがある場合は、すぐに病院へ連絡しましょう。
前期破水
分娩の前に胎児や羊水を包んでいる卵膜が破れてしまうことです。妊娠中のすべての時期に起こりうる可能性があるのですが、約60%が妊娠37週以降に発症します。羊水が流れ出ている感じや、水っぽいおりものが出ることで、妊婦さんも異変に気づくことがあります。少量の出血が混ざることがありますが、慌てずに分娩予定の産婦人科へ連絡をして陣痛が来るのを待ちましょう。尿漏れと破水した場合に、自分では判断ができない場合があるので、必ず病院で検査してもらいましょう。前期破水が起きた場合、約80%が24時間以内に陣痛が起こり分娩に至ります。陣痛が長時間にわたってこない場合には、子宮の中の感染リスクや胎児が元気でなくなる場合があるので、薬剤で陣痛を誘発させて、分娩となることが多いです。
正常な分娩の兆候としては、おしるしといった少量の性器出血があったり、胎児の頭が下がってきたり、子宮口が開いてきたり、体にさまざまな変化が現れます。日本産婦人科学会のガイドラインには、胎児を娩出するまで続く陣痛が、10分以内の周期で規則正しく発来する、もしくは60分に6回になったときが分娩の始まりとしています。つまり、持続的な下腹部痛が起きているなら、異常が起きている可能性が考えられます。早めに分娩予定の産婦人科に相談しましょう。
まとめ
臨月は体の変化に注意しながら、陣痛が起こるのを待ちましょう。腹痛や出血が分娩の兆候なのか、異常なのか、違いを知っておくことで安心して臨月を過ごすことができます。もしも異変に気づいたら、落ち着いて病院を受診してください。もうすぐ赤ちゃんに会えると思うと嬉しいですよね。育児で忙しくなる前にパートナーやご家族とゆっくりご飯や映画など見て落ち着いて過ごせると良いですね。
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