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産褥期とは?産後の過ごし方が重要な理由とトラブル予防の過ごし方

この記事では産褥期について、専門家監修のもと解説します。出産直後のママの体は「産褥期」と呼ばれる時期に突入します。実はこの時期の過ごし方によって、その後の体調が大きく左右されることがあるのです。

この記事の監修者
監修者プロファイル

助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
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新生児とままのイメージ

 

「出産後は安静にしていないと」といわれた経験のある人も多いのではないでしょうか。これは単に、出産という大仕事を終えたママへの気遣いという意味合いだけでかけられているわけではありません。出産直後のママの体は「産褥期」と呼ばれる時期に突入します。実はこの時期の過ごし方によって、その後の体調が大きく左右されることがあるのです。今回はママにとって大切な「産褥期」の過ごし方や注意点などについてご紹介します。

 

産褥期とは

産褥期とは出産後約6〜8週間目までの時期のことをいいます。「産褥」とは、出産に使用する寝床のことを指す言葉です。ここからも分かる通り、産褥期は基本的に運動だけでなく、家事などもできるだけ控え、安静に過ごすことが必要だといわれています。とはいえ、産後には赤ちゃんのお世話が待っています。安静と活動のバランスを考えながら、無理せず過ごし、徐々に元の生活に戻していくことが大切です。

 

●産褥期を安静に過ごすべき理由
産褥期は妊娠・出産で大きく変化した体の状態が徐々に元の状態に戻っていく時期です。ここで無理をすると産後の回復が遅れるだけでなく、場合によってはしっかり回復できずに、更年期になって、尿もれや骨盤臓器脱(子宮が体外に出てきてしまう症状)になることもあるといわれています。


妊娠・出産を経た体は、思った以上に変化し、傷ついているものです。子育てやその後の人生を元気に過ごすためにも、産褥期は安静に過ごすよう心がけましょう。

 

●産褥期にママの体に起こる変化
ここでは産褥期にママの体の中でどんな変化が起こっているのかについて、具体的にご紹介します。

 

・子宮復古
妊娠時に大きくなった子宮がもとに戻る現象のことです。出産後、子宮は約4週間かけて、妊娠前の大きさに戻っていきます。子宮復古の際には後陣痛という、陣痛に似た痛みを伴う場合があります。人によって痛みの程度や期間は異なりますが、長い場合だと1週間程度痛みが続くこともあります。後陣痛が強い場合は、医師の判断で子宮収縮剤の内服の回数を減らしたり、中止することもあります。また、鎮痛剤を処方してもらうこともできます。その都度、産婦人科医に相談してみるのが良いでしょう。

 

・骨盤の柔軟性がなくなる
大きくなる子宮に合わせて、妊娠中は骨盤も通常に比べて開いた状態になっています。これは「リラキシン」と呼ばれるホルモンの影響ですが、産後1ヵ月以降は分泌量がじょじょに減少し、骨盤の柔軟性が落ちてきます。

 

・ホルモンバランスの変化
妊娠中はプロゲステロンとエストロゲンというふたつのホルモンが多く分泌され、赤ちゃんに栄養を送ったり、子宮を大きくしたりする役割を担っていました。

出産後はどちらも分泌量が急激に減少するため、心身ともにさまざまな変化が表れます(詳細は後述)。一方、母乳を作り出すプロラクチンは、出産前に比べて分泌量が多くなります。

また、子宮収縮を促すオキシトシンは、妊娠後期からさかんに分泌されます。乳頭刺激により分泌が促進され、母乳を外に押し出す働きと子宮を収縮させる働きをするので、授乳の際に後陣痛が強くなることがあります。

 

・母乳が分泌される
先に述べたプロラクチンなどのホルモンの影響と赤ちゃんが吸啜(乳頭刺激)することで、母乳の分泌が始まります。

特に分娩後5日頃までに分泌される、黄色みがかった乳汁を「初乳」といい、免疫グロブリンが多く含まれるとされています。

 

・体重減少
胎児や羊水、悪露などのほか、増加した血液や組織液などの分が、出産後徐々に減少していきます。

 

 

産褥期の過ごし方

ママの体が回復するために必要とされる産褥期ですが、8週間もあると、どのように過ごせばいいのかよくわからない人もいるのではないでしょうか。そこで、産褥期の過ごし方についてもう少し期間を区切ってご紹介します。

 

●産後1〜2週間目
産後、体がもっとも急激に変化する時期です。先ほどご紹介した子宮復古やホルモンバランスの変化なども急激に起こるため、育児中心の生活を送り、疲れたら横になるようにしましょう。このころは2〜3時間毎に赤ちゃんにお乳を与える必要があるため、寝不足になりがちな時期でもあります。パパや両親、周りの方や公共・民間サービスを利用するなどして、できるだけ体を休めるようにしましょう。

 

●産後3週目
体が徐々に回復し、寝たきりに近い状態から、少しずつ動けるようになってくる時期です。床上げ時期ともいわれます。無理のない範囲であれば、家事もできるようになります。無理は禁物ですが、少しずつ行動範囲を広げていきましょう。

 

●産後4週目
1カ月健診で異常がなければ妊娠前の生活に戻ることができます。また産後1カ月健診で許可が出れば、湯船にも浸かれるようになります。また体調に問題がなければ、性生活やパーマ、旅行なども行えます。

 

●産後5〜8週間
しっかりと体が元の状態に戻っていく時期です。悪露や会陰切開の傷が長く痛むと感じていた人も、このころには改善にむかうことが多いようです。家事や軽い運動であれば体を動かしても良いといわれるころでもあります。ただ、体がしっかり回復するまでは、旅行や遠出などはまだ控えたほうが良いでしょう。8週目以降は職場復帰も可能になります。

 

産褥期の注意点

産褥期は、言い換えれば「体が弱っている時期」ですので、このころは普段に比べて多くのことに気を使って生活することが望まれます。ここでは特に注意すべきことについてご紹介します。

 

●できるだけ家事を控える
普段何気なくおこなっている家事は、意外と体に負担をかけています。産褥期の間、特に産後1カ月間はできるだけ家事を控え、パパや両親などにお願いするのが良いでしょう。

 

●清潔第一
会陰周りはこれまで以上に清潔に保つよう心がけましょう。出産後は免疫力が低下するほか、産道や会陰切開の傷など、体に雑菌が侵入しやすい状態になっています。「湯船に浸かってはいけない」といわれるのはこのためです。帝王切開の場合は会陰周りの傷の感染についてはそれほど問題ではないものの、悪露は出るため、こまめに産褥パッドを交換するなどして、清潔に保つことが必要です。会陰切開した場合、産後7~10日くらいまでは清浄綿で会陰周りを消毒するようにいわれる人もいるでしょう。傷がしみてつらいかもしれませんが、消毒のためにも忘れずに行っておきましょう。

 

●食生活はバランスよく
体を回復させるためには、栄養のあるものをバランス良く摂取することが大切です。特に鉄分やビタミン、タンパク質などが不足しがちな時期ですので、これらを中心に栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。また油分や糖分の多いもの、カフェインなども産褥期は控えたほうがよいでしょう。油分や糖分は母乳のつまりの原因になるといわれています。またカフェインは母乳に移行する成分のひとつで、摂りすぎると赤ちゃんの寝付きや機嫌が悪くなることがあります。コーヒー2〜3杯程度なら問題ないといわれていますが、できればカフェインレスの飲み物を選んだほうが良いでしょう。

 

●重たいものを持たない
産後の骨盤が緩んだ状態で重たいものを持つと、いつも以上に体にダメージを与えるだけでなく、更年期になった時に骨盤臓器脱を起こす可能性もあります。産褥期はできるだけ重いものを持たないようにしましょう。

 

産褥期に起こるトラブル

最後に、産後に起こりやすいトラブルについてご紹介します。全ての方が当てはまるわけではありませんが、事前に確認しておけば、注意しやすい点ですので、産褥期を過ごす際の参考にしてください。

 

●子宮復古不全
さまざまな原因から子宮復古が通常どおり収縮しない症状のことをいいます。子宮復古が順調かどうかは、悪露の状態でわかります。量がいつまで経っても多かったり赤色や褐色だったりすると、子宮復古不全の疑いがあります。子宮内膜炎などの病気を併発することもあるので、注意が必要です。退院後、生理の2日目くらいの出血がある、レバーような塊が出るなどの場合は受診をおすすめします。

 

●産褥熱
分娩後24時間~産褥10日に起こる感染症で、38℃以上の高熱が2日間以上続く場合、産褥熱と診断されます。主に子宮や膣部分についた、出産時の傷に細菌が入ることで起こるもので、同時に下腹部の痛みや悪露の悪臭などに悩まされることもあります。こうした症状に悩まされる場合は、一度医師に相談してみましょう。

 

●産褥期精神障害(マタニティブルーズ、産後うつなど)
ホルモンバランスの急激な変化によって起こるといわれているもので、涙が止まらなくなったり、いつもよりイライラしたりといった症状がみられます。マタニティブルーズは産後3日から10日程度、長くても2週間の間に起こる症状ですが、うつのように病気ではないため、自然に収まっていきます。


一方、産後うつはその名の通り、産後一定の期間が経過しても改善が見られない「病気」です。多くは産後1カ月以内に発症し、不眠、不安、気分変調、食欲不振などの前駆症状に引き続いて発症することが多い傾向にあります。マタニティブルーズから産後うつに移行することもあるため、いつまでも気分が落ち込んでいたり、不安で眠れなかったりという症状が続いた場合は、精神科や心療内科に一度相談してみるのが良いでしょう。産後うつは早期発見が大切です。また周りのサポートが必要な症状でもあるため、本人だけでなく、周囲も気を付けてあげることが大切です。

 

●乳腺炎
胸のしこりや腫れ、痛みとともに、倦怠感や38度以上の高熱に悩まされるトラブルです。授乳方法を改善することで、快方に向かうことが多いですが、重度の場合、乳房膿瘍になる可能性があります。おかしいなと感じたら医師に相談してみるのが良いでしょう。

 

●便秘
会陰部の痛みや授乳による水分不足、安静による運動不足などから、産褥期は便秘になりやすい時期でもあります。食物繊維や水分を多く摂取するとともに、腹部マッサージを行うなどして改善しましょう。場合によっては下剤などが処方されることもあります。

 

●会陰切開の痛み
会陰切開した場合、その痛みが長く続くことがあります。大体産後1カ月ほどで収まるといわれていますが、筆者はその後2週間ほどは痛みが続いていました。会陰切開は傷口からの感染などによる発熱がなければ、痛みがあっても異常があるわけではないので心配はいらないのですが、それでも日常生活ではつらいもの。ドーナツ型のクッションを使用するなどして、会陰部分が直接触れないようにするのがおすすめです。

 

まとめ

さまざまな理由から、無理のない範囲で過ごしたほうがよい産褥期ですが、転勤族など周りに頼る人がいない場合は、自分で家事をしなければならないこともあります。そんな時は公共の産後サービスなどを積極的に利用するのがおすすめです。場合によっては助成を受けられる自治体もあるため、出産前に一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。産婦人科医や看護師、行政の相談窓口などに相談しながら、産褥期を乗り越えていきましょう。

 

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