彼がトイレに入って出てこない
別れ話を始めてから20分ほど経ったころ、彼が急に「ちょっとトイレ!」と立ち上がりました。私は数分で戻るだろうと思い、スマホを片手に時間をつぶすことに。
最初の10分ほどは、「落ち着くための時間なのだろう」と思い、静かに待ちました。しかし、30分経ってもドアの向こうからは物音ひとつしません。不安になって声をかけると、彼は泣いているのか、濁った声で返事だけが返ってきました。そして彼がトイレに入ってから1時間が過ぎ、2時間が過ぎ……。
「どう別れを受け止めたらいいか、わからない」
さすがに……と思ったそのとき、やっとドアが開きました。出てきたのは、目を赤く腫らした彼。
私が「何をしてたの?」と問いかけると、小さな声で「どう別れを受け止めればいいかわからなかった……」と答えた彼。
私の気持ちは変わらなかったので、正直、不毛な時間を過ごすことになり、ため息しか出ませんでした。しかし、これで彼の気持ちに整理がついて穏やかに別れることができるのなら、と気持ちを落ち着かせました。そして私は「今までありがとうね」と、最後のあいさつをしたのですが……。
出口のない別れ話
「やっぱり別れたくない! もう一度チャンスをくれないか」。
2時間、トイレに立てこもった彼から出てきた言葉は、別れの受け入れではなく逆のものでした。
時間をかけて別れを受け止めてくれたのかと思っていた私はびっくり。ただ、彼と別れたい気持ちは変わらなかったので、私は静かに首を横に振り、「もう気持ちは戻りません」と彼に告げて、家を出ることにしました。
私が家を出る支度をしている間、彼はずっと泣き続けていました。今思うと、トイレに2時間籠城するという行動は、彼の言葉通り「受け止めるための時間」だったのかもしれませんが、ただ現実から目を背ける行為だったのではないかなとも感じます。結果的に、彼の行動でより彼に冷めることとなってしまい、恋の終わり方というものは、本当に難しいものだと強く実感させられた出来事となりました。
著者:榊原愛七/30代女性・1児の母。看護師・カウンセラー兼、恋愛エピソードを執筆するライター。
イラスト:マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)
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