授乳中に妊娠したら授乳をやめないといけないの?

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監修者

医師 北川 博之 先生

産婦人科 | 医療法人至誠会 梅田病院院長


昭和56年愛媛大学医学部卒業。その後愛媛大学付属病院にて産婦人科講師、助教授として勤務。愛媛県立医療技術大学教授を経て、平成20年より現職の梅田病院に院長として就任。現在も愛媛大学、広島大学などで非常勤講師として教育にも従事。
 

HP:医療法人至誠会 梅田病院 

 

授乳中妊娠

 

授乳中にもう一人子どもが欲しいと考えたときに、授乳しながら妊娠はできるのか?
授乳中に妊娠したら、授乳は継続しても良いのか? など悩む方もいると思います。今回は授乳中の妊娠について、影響や考慮することなどについて解説したいと思います。

 

 

授乳中の妊娠について

授乳中は、

1.産後に月経が再開していない

2.赤ちゃんを母乳だけで育てている

3.赤ちゃんが生後6カ月未満である

という全ての条件を満たした場合に、妊娠する可能性は2%未満となり、基本的に妊娠は難しく、以前は避妊方法としても利用されていました。(→授乳性無月経法:じゅにゅうせいむげっけいほう)

 

人間を含めて哺乳類には、授乳をすることで妊娠する間隔をあけ、母体の健康の回復を促し、母児が共倒れにならないような生理的な仕組みが備わっているのです。そこで重要な役割を果たしているのがプロラクチンというホルモンです。赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激は下垂体に働き、母乳産生を促す役割をしているプロラクチンというホルモンの分泌が進みます。ですから、授乳を頻回に行うことにより母乳哺育(ほいく)は上手くいくのです。

 

一方でプロラクチンには排卵を抑制する作用があるので、授乳により月経の再開を遅らせ、妊娠しにくい状態をつくります。プロラクチンは、病気や薬剤の影響で異常に高くなることがあります。この高プロラクチン血症という状態は、不妊原因の一つとしても有名です。基本的には、授乳という行為はプロラクチン分泌が進むことで、妊娠成立に対して抑制的に働いているといえます。

 

 

産後の早い時期に妊娠する影響

WHO(世界保健機関)ガイドラインには「次回妊娠するまでの期間が18カ月以下の場合は、新生児死亡率や乳児死亡率、低出生体重児、胎児発育遅延、早産の危険性が有意に高くなる。特に、6カ月以下の場合は妊産婦死亡率のリスクも高くなる。」とあり、次の妊娠まで、少なくとも24カ月空けることを推奨しています。


日本は、諸外国と比べると最も安全な医療体制を整えているため、この期間よりも短いタイミングでの妊娠をよしとする風潮はあります。しかし、母親の身体機能さえ回復すれば妊娠してよいというわけではなく、体力や精神的な負担、子育てそのものの負担、産まれた赤ちゃんへの影響など、いろいろな視点から最低でも産後6カ月は次の妊娠は控えることが望まれます。


様々な理由から次の妊娠を早く望む場合は、母乳だけで授乳している間は妊娠しにくいことをふまえて、混合栄養に切り替える、あるいは卒乳するタイミングを計画してもよいでしょう。授乳方法を変更したい、卒乳の方法を知りたい場合は、病院や地域の助産師へ相談しましょう。

 

 

妊娠したい場合に考慮すること

 

産後の排卵と月経再開には個人差がある

月経が再開したら、次の妊娠ができる状態に戻ったサインです。月経の再開には個人差があり、母乳だけで育てていたにも関わらず、産後2~3カ月で月経が再開する人もいれば、産後1年を過ぎても月経が再開しない女性もいます。また、排卵は月経の前に起こるため、月経の再開を待たずに妊娠する方もいます。母体は出産後6カ月以上経過すると、身体の機能はほぼ通常のレベルに戻るため、月経が再開していないとしても妊娠可能な状態に回復しているといえます。

 

母乳だけで育てている赤ちゃんの月齢を考慮する

昼夜問わず、頻回におっぱいを与えている間は、排卵が抑制されます。母乳以外にミルク(人工栄養)や離乳食(補完食)を与えて始めている場合は、赤ちゃんの吸う機会が減ることで、排卵が起こる可能性があります。次の妊娠のためといって、早々に母乳で育てることを完全にやめるのではなく、離乳食を増やしながら授乳間隔が6時間以上空くと排卵が起こりやすいというメカニズムを利用しながら、次の妊娠を試みてもいいでしょう。

 

月経が再開しても必ずしも母乳育児をやめる必要はない

月経が再開すると、排卵日前や月経開始1~2日は、ホルモンバランスの影響で、母乳の風味が一時的に変化して赤ちゃんがおっぱいを飲むことを拒否したり、嫌がったり、いつもより飲まないような気がするという現象が起こるかもしれません。これは、母乳の質が悪くなったわけではありませんので安心してください。また、授乳回数やタイミングが少し変わるかもしれませんが、母乳そのものの分泌が止まるわけではないため、お母さんと赤ちゃんが望む限り母乳は与え続けてかまいません。

 

母親の年齢を考えて家族計画を

女性の妊孕性(にんようせい:妊娠する力)は年齢と共に低下することは明らかです。35歳頃からは急激に妊孕性は落ち込んでいきますし、染色体異常児の発生率も上昇してきます。現在、日本では平均初産年齢が30歳を超えています。二人目、三人目の子供を望んだ時には35歳を超えていることが今の日本では少なくないのです。ですから、次の子供を強く望んでいる場合には、母親の年齢も考慮して授乳期間、授乳方法を考える必要があるでしょう。

 

夫婦で家族計画について話し合う

待望の赤ちゃんを目の前に、様々な理由で次の妊娠を希望する場合は、まず夫婦で話し合いましょう。また、産みたての赤ちゃんのことで頭がいっぱいのママと、家族が増えることに期待がいっぱいのパパでは、お互いの感情にズレが生じることもあります。必ずしも計画通りに授かるとはいえませんが、例えば年子で産まれても夫婦で育てられるか、今の住環境で子どもが増えても大丈夫か、子どもが増えても家族や周囲のサポートを得られるかなど、具体的にシミュレーションすることは大切です。

 

 

妊娠したら断乳(授乳を完全に止めること)は必要か

では、授乳中に妊娠をした場合は断乳(授乳を完全にやめること)しなければならないのでしょうか。ここでは妊娠をした際の授乳をやめる必要があるケースや判断方法、気を付けることについて解説します。

 

 

お腹の張りや出血がある場合は、授乳を中止する

授乳中に妊娠すると、流産や早産の原因になるから授乳をやめるように周囲から言われたり、産婦人科医や助産師、保健師から指導されたりすることがあるかもしれません。これは、おっぱいを吸われた刺激で分泌するオキシトシンが子宮の収縮を起こすという考えからです。しかし、正常な妊娠であれば、しばらくの間は子宮収縮させるオキシトシンが、子宮に働かきかけない仕組みが備わっているため、授乳した程度で流産しないことは判明しています。特に経過に問題がなければ、授乳を続けてもかまいませんが、切迫流産や切迫早産と診断された際には、すぐに授乳を控えることが望ましいでしょう。その時は、親子でがっかりするかもしれませんが、母乳以外で十分に栄養がとれるように切り替えて、おっぱい以外のスキンシップや遊びなどでコミュニケーションをとるように心がけましょう。

 

いつまで授乳を続けるのかは、お子さんの月齢と妊娠の経過によって判断する

妊娠のタイミングが、授乳中のお子さんが離乳食(補完食)を開始したばかりの場合や1才未満の場合は、まだまだ母乳を必要とすることはあるでしょう。1才を過ぎて、食事からある程度の栄養がとれていれば、卒乳の時期を計画してもよいかもしれません。ただし、おっぱいは心のよりどころですので、甘えたいときだけ飲む、眠いときだけ吸いたいなど、授乳パターンが少しずつ変わることもあります。突然やめてしまうと、授乳中のお子さんの気持ちが不安定になったり、ママのおっぱいに乳腺炎が起こることもありますので、お子さんの変化を見守りながら、徐々に授乳回数を減らして卒乳を試みてください。

 

妊娠中の授乳がママのストレスにならないように気を付ける

妊娠によって、つわりや睡眠不足で体調が優れない、授乳間隔が空きすぎて乳房トラブルが起きる、家事がままならない、仕事を復帰するタイミングを逃したなど、ママが心身共にストレスを抱えることもあります。乳頭を吸われることを不快に感じたり、お子さんに対してイライラしてしまうこともあるかもしれません。お子さんの要求に付き合えなくて罪悪感を抱いたり、授乳そのものを負担に感じたりするようであれば、卒乳を視野にいれて、お子さんをおっぱいから気を逸らす方法を探りましょう。お子さんへどのように対応していいか困ったり、自分の気持ちがどうにもならないときは、一人で悩まないで、助産師や保健師へ相談しましょう。

 

他のママの経験談も参考にしてみる

地域で開催されるママ同士の交流の場に参加したり、先輩ママに経験談を聞いたりして、参考にしましょう。似たような経験をされたママがいるかもしれませんし、上の子と下の子を同時に授乳するタンデム授乳を経験した方がいるかもしれません。お腹の中の赤ちゃんを守りながら、授乳中のお子さんとママにとって無理のない過ごし方のヒントをもらいましょう。

 

 

まとめ

授乳は、親子にとってかけがえのない時間です。授乳中に次回の妊娠について考えるときや妊娠が判明したときは、ママの心身の健康を最優先に、おっぱいを飲んでいるお子さんの気持ちも汲み取りながら、夫婦で今後の子育てや家族計画について話し合いましょう。そして、助産師さんや産婦人科医師にもアドバイスをもらうのが良いでしょう。

 

参考:

産婦人科診療ガイドライン産科編2017 <http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2017.pdf>
WHO  Postpartum Family Planning <http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/93680/9789241506496_eng.pdf?sequence=1
・これでナットク母乳育児 水野克己 へるす出版
・よくわかる母乳育児 水野克己 へるす出版
・母乳育児支援スタンダード NPO法人日本ラクテーションコンサルタント協会 医学書院

 

【監修者】
医療法人至誠会 梅田病院院長
北川 博之(きたがわひろゆき)先生

昭和56年愛媛大学医学部卒業。その後愛媛大学付属病院にて産婦人科講師、助教授として勤務。愛媛県立医療技術大学教授を経て、平成20年より現職の梅田病院に院長として就任。現在も愛媛大学、広島大学などで非常勤講師として教育にも従事。
医療法人至誠会 梅田病院 http://www.umeda-hospital.or.jp/

 

 

 

◆授乳に関連するQ&A

2018/08/30


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