【助産師監修】吸引分娩の費用や保険適用の条件について

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監修者プロファイル

助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

【助産師監修】吸引分娩の費用や保険適用の条件について

 

吸引分娩は、出産時、異常事態が発生した際にお母さんと赤ちゃんの生命を守るためにおこなわれる急速遂娩(きゅうそくついべん)という処置のうちの1つです。急速遂娩の方法には吸引分娩のほかに、鉗子分娩や緊急帝王切開があります。今回は吸引分娩について説明します。

 

 

吸引分娩がおこなわれるケース

吸引分娩が必要になる異常事態とは、赤ちゃんが順調にママの体から出てくることができず、赤ちゃんが低酸素状態に陥ってしまったり、ママの体にかかる負担が大きくなり過ぎたりして、母子ともに生命にかかわる深刻な状態になってしまうことです。

 

すでに破水している、子宮口が全開になっているというような状態で、赤ちゃんの頭が吸引器具や鉗子が届く状態まで進んできていた場合には、吸引分娩や鉗子分娩がおこなわれます。赤ちゃんの頭が吸引器具や鉗子が届く状態まで進んでいない場合には帝王切開がおこなわれます。

 

 

吸引分娩をした場合のリスクは?

吸引分娩をした場合のリスクには、赤ちゃんに起こるリスクとお母さんに起こるリスクがあります。

 

赤ちゃんに起こるリスク

■頭血腫(とうけっしゅ)

頭血腫とは赤ちゃんの頭にできたプヨプヨした感触のこぶです。頭血種は自然分娩でもできることがあり、吸引分娩をしたら必ずできるというものではありませんが、吸引による圧によって赤ちゃんの頭の骨の膜が剥がれ、そこに血液が溜まってしまう状態です。ほとんどの場合、頭血腫に溜まっていた血液が徐々に吸収され自然に治っていきますが、吸収されなかった血液が石灰化し固くなることもあります。また、黄疸が強く出ることもあります。

 

■帽状腱膜下血腫(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)

帽状腱膜というのは、頭蓋骨を帽子のように包んでいる膜のことです。帽状腱膜下血腫は吸引分娩をした際に、帽状腱膜と頭蓋骨の間に内出血が起こった場合に発生します。

頭皮が赤黒く変色し、頭蓋骨の継ぎ目を超えて広い範囲に腫れが拡がることもあります。そのため、貧血やショック状態に陥る恐れもありますので、赤黒い頭皮の腫れが出た場合には、すぐに医師の診察を受ける必要があります。出血が多くなった場合にはDIC(播種性血管内血液凝固症候群/はしゅせいけっかんないけつえきぎょうこしょうこうぐん)を引き起こすこともあります。DICは、「出血を止めるための血栓が大量にできる」ということと「血栓を溶かすための働きが強くなり過ぎ、出血が止まらなくなってしまう」という正反対の状態が起こるため、内臓に深刻なダメージを与えて死に至ることもある怖い病気です。

 

ママに起こるリスク

■会陰・腟壁・頸管・尿道膀胱損傷

吸引のためにカップを腟内に挿入するので、会陰や腟壁が裂けてしまうことがあります。まれではありますが、頸管裂傷や尿道膀胱損傷が生じる恐れもあります。

 

 

 

 

吸引分娩にかかる費用

正常分娩の費用は保険が適用されないので、全額自費となり、全国平均では50万円程度です。健康保険から給付される出産育児一時金を利用する場合は、42万円を差し引いた額になります。

 

一方、帝王切開や吸引分娩などの場合は、健康保険が適用されます。また、民間保険会社の医療保険に加入していた場合、保険金が下りることもあります。

 

 

 

吸引分娩が保険適用されるための条件

■健康保険

吸引分娩は医師がこのままでは母子ともに生命にかかわる危険があると判断した場合におこなわれます。したがって吸引分娩、および吸引分娩によって発生した会陰切開や縫合術、会陰裂創縫合術も、健康保険の給付対象として扱われます。そのため、自己負担額は吸引分娩にかかる費用のうちの3割で済みます。ただし、吸引分娩をおこなったけれども結果的に正常分娩と医師が判断した場合には、吸引分娩の費用に対して健康保険は適用されません。

 

■民間の医療保険

民間の医療保険のなかには、妊娠・出産・女性特有の病気に特化した女性保険という保険商品があります。このような保険に加入していた場合、吸引分娩などの分娩時とトラブルが起きた場合に、給付金が支給されることがあります。ただし、特殊分娩に関しては、妊娠してから加入した場合には保障されないなど細かな規約がありますので、加入するのであれば、妊活を始めた時期に加入しておくことをおすすめします。

 

 

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