パパにも相手をしてもらえなかった娘
この日は、夫も在宅でやらなければいけない仕事があり、娘の相手をすることができませんでした。ひとりでTVを見ていた娘は、退屈したのか、私が料理で忙しくしている間に、夫の仕事部屋へ遊びに行ったようでした。夫は、PCを触りたがる娘に、「コレは触っちゃダメ」、「ここに来てはダメ」と言って怒ったそうです。ちっともパパに相手にしてもらえない娘は、いじけてリビングへと戻ってきました。
何とかして誰かに相手をしてもらいたかったのだと思います。TVには見向きもせず、私の元へ娘がやってきました。私は、夕飯の時間がいつもより遅くなってしまっていて大慌てで料理をしていました。そこへ娘が、私の足にしがみつき、「ママ〜! 抱っこ〜!」と甘えてきたのです。
「あっち行って!」と言ってしまった
時間に追われ心に余裕がなくなっていた私は、娘の要望に応えてあげられませんでした。「抱っこがダメなら私も一緒に何かする!」。娘はそう思ったのでしょう。踏み台を登り、食器洗いをしようと水道に手を伸ばしました。
すると、野菜を浸けておいたボールがガシャン! 床が水びたしになってしまいました。急いでいるのに思うように作業ができない私は、思わず「あっち行って!」と娘に言ってしまいました。娘を追い払うような、とても嫌な言い方だったと思います。
寂しそうな娘の表情を見て
夫に相手にしてもらえなかったから私の元へ来たとわかっていたのに、娘を追い払うような言い方をしてしまったと、私はとても後悔しました。娘は、「ママも相手にしてくれない……」と思ったのかもしれません。娘はとても寂しそうな表情をして、リビングを出ていこうとしていました。
しまったと思った私は、とっさに娘を引き止めました。「おいで! 洗い物しようとしてたんだよね! 大丈夫だよ!」。娘は、パッと明るい表情をしてキッチンへ戻ってきました。「自分の居場所がどこにもない……」。そんな思いをさせてしまったかもしれないっと思った私は、「ごめんね」という思いで胸がギュッと締めつけられました。
早くしないと夕飯が遅くなる、早くしないと寝る時間が遅くなる。娘のためを思って急いでいたけれど、時間に縛られて、結局娘に悲しい思いをさせてしまいました。あの日、娘を引き止められなかったら、どれほどつらい思いをすることになったのかわかりません。生活リズムも大事だけれど、娘の今をもっと大切にしてあげなければいけないな、と思いました。
著者:鹿久保知里/女性・主婦。2歳の娘と夫との3人暮らし。エッセイストとして、自身の子育て奮闘記を執筆。Instagramで子育てのお悩み解決にコミットした情報発信もおこなっている。
作画:magari
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています