仲良しママ友の本性
4歳の息子には仲良しの友だち・Aくんがいます。幼稚園のクラスが一緒で、帰り道も同じ方向。一緒に帰るのが当たり前で、自然とママ同士も仲良くなりました。しかしある日、急に息子が「Aくんと帰らない」と落ち込んだ様子を見せます。何があったのか聞いても何も言わず、Aくんも「何もないよ」と言い、原因がわからないまま別々で帰る日々が続いていました。私はAくんママに「こないだは息子が一緒に帰りたくないって言ってごめんね」とメール。そして「大丈夫だよ! 気にしないで」とAくんママのやさしい返答に安心します。
しかし、あまりに長く続いたので日を改めて息子に聞くと「Aくんがいつも嫌なこと言ってくる」と言うので、幼稚園の先生に確認することに。すると「たしかに、Aくんが息子さんを傷つける発言をしてしまったことはあります。息子くんは何も言い返していませんでした。Aくんママとそのようなお話はしたんですけど……」と教えてくれました。なんとAくんママは、Aくんが息子を傷つけていたことを知っていたのに、黙って「いい人ぶって」いたのです。「軽くでもいいからごめんねのひと言があればよかったのに……」と、仲良くしていたのもあって、私はショックを受け、少しずつ距離を置くことにしました。
この件があってから初めての参観日。授業中、先生が絵本を読み始めたとき、Aくんは隣の女の子に「ぶさいく」などと暴言を吐いていました。先生が止めに入るも「その髪の毛、変! その服も」と傷つく言葉を投げかけ、女の子は「ひどい! この服お気に入りなのに!」とショックを隠せず泣き始めました。その子のママはかなり怒っている様子で「ちょっと! Aくんのママはどこですか? 失礼なことを娘に言っていましたけど、ちゃんと見てましたか?」と周囲を見渡しながら聞きます。するとAくんママが笑いをこらえながら「すみませ~ん! 家ではいい子なんですけどね~」と言うので、その態度に怒りが増し女の子のママはブチ切れ。
先生が「あとでお話しましょう」となだめようとするも、女の子のママは「Aくんはひどいことを娘に言ったんです。お子さんと一緒に謝ってください」とひと言。Aくん親子は不満気に謝罪しましたが、ほかの子どもも保護者たちもその様子にざわつき始め、教室内は混乱し始めます。約5分後、異変を感じた園長先生が「どうしました?」と訪れました。騒然とした中、先生が園長先生に事情を報告。園長先生は「皆様、静粛に願います」と静かに語り始め、落ち着きを取り戻しました。
園長先生は、女の子のママに深々と頭を下げ、「大変申し訳ございません。当園の教育が行き届かず、心よりお詫び申し上げます」と謝罪します。そしてAくんママに向き直り、園長先生は「Aくんのお母様。『家ではいい子』と仰いましたが、集団生活で見せる態度こそ、ご家庭での教育の結果ではないでしょうか。お子様がほかのお子様を傷つけ、お母様がそれを笑って済ませる態度は、教育者として看過できません。幼稚園は、他者の気持ちを尊重することを学ぶ場です。この問題は、園として厳しく対応させていただきます」と、毅然とした態度で指摘しました。
これまで見たこともない園長先生の剣幕と、周囲の保護者たちの沈黙に、Aくんママは顔を真っ赤にしてうつむき、Aくんも先生の背中に隠れるように小さくなりました。騒然としていた教室内は静まり返りましたが、その後「では、続きを」とにこやかに園長先生は去り、気まずいながらも参観が再開。参観終了後、Aくん親子は人目から逃げるように帰って行きました。
後日、Aくんママは女の子のママに改めて直接謝罪したという話を聞きましたが、参観日で見せた本性のインパクトは強烈でした。息子が仲良くしていたのに本当に距離を取っていていいのか迷うこともありましたが、参観日をきっかけにAくんとママの本性を知り、私の迷いが一掃できたいい機会でした。息子の方も、Aくんに嫌な言葉をかけられたことで、その後も関わらないようにしているようです。
親がわが子の問題を認めず、事実を隠そうとする行為は、結局その子自身と周囲の関係性を壊してしまうのだと今回の件で思いました。わが子の「いい子」の面以外ともしっかり向き合い、問題を起こしたときにはきちんと責任を取って謝罪できる誠実さが、周囲の人との関係や、わが子の未来を守るために必要だと感じた出来事でした。
著者:木村凛/30代・ライター。4歳と1歳の兄妹を育てる転勤族ママ。繊細な長男と怖いもの知らずな娘の対応に追われる毎日。子どもを早く寝かせて自分磨きの時間も大事にしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)