マタニティマークはお守り代わり
1人目を妊娠した当時、都内の会社員だった私は職場まで約30分ほどの距離を電車で通勤していました。妊娠の経過は順調だったのですが、妊娠初期は食べても食べなくても気持ち悪い吐きづわりがつきまとう毎日でした。
そのため途中下車して駅のトイレで嘔吐することもあり、体調不良で倒れてしまったときなどの不安も……。通勤の際には万が一の時のために、かばんの端にマタニティマークをつけて通勤していました。
中年夫婦に言われた言葉
ある日いつものようにつり革につかまって電車に乗っていたときのことです。私の目の前には中年のご夫婦が2人並んで座っていたのですが、私のかばんの端に付いていたマタニティマークに気が付いたようでした。
すると、私の目の前で「あんなの娘のときにはなかったのにね」「つけていたら譲ってくれると思っているのかしら」「ずるいわよね」「いいご身分だよな」と、わざと私に聞こえるように話をし始めたのです。話しかけられたわけではないのですが、何も言えずうつむいていた記憶があります。
万が一のお守りなのに…
その後すぐ私が降りる駅に着いたので、そのご夫婦とは顔を合わせ続けることはありませんでした。席を譲ってほしいからマタニティマークをつけているのでは決してなく、万が一何かあったときのために自分と赤ちゃんを守るために付けていたものです。
けれどなぜこんなふうに言われなければならないんだろうと、とても悔しく思いました。あのとき私が何か言ったところで、中年夫婦に危害を加えられることもあったかもしれません。ただ何も言わなかったのが正解だったのかは、今になってもわかりません。
赤ちゃんとママを守ってくれるマタニティマークは本来安心できるものなのに、不安材料になってしまう可能性もあるのが悲しい現実です。ただ、マタニティマークを付けておくことで助けられた面もたくさんありましたので、マタニティマークがあってよかったと思うのが私の率直な感想です。
監修/助産師 松田玲子
イラストレーター/まっふ
著者:佐藤祐子
二男一女の母。幼~高(中高は家庭科)の教員免許と保育士資格保有。洋菓子メーカーを退職後、現在は地元にて3人の子育てに日々奮闘中。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆。