アニメに出てくる推しキャラ「炎太郎」に憧れていたゆうちゃん。コスチュームを買ってもらったものの「(服は一緒なのに)炎太郎は大きくて強くて、髪の毛も金色で長くて、ゆうちゃんとは全然違う」と落ち込んでしまったことをきっかけに、母えみこはゆうちゃんの髪を金髪に染めてあげました。
ゆうちゃんは喜びましたが、保育園の親の一部からは、「身だしなみについて」の貼り紙をされるなど、批判の的に。母えみこがドイツに単身赴任中の夫に相談すると、夫はゆうちゃんの体への影響と、金髪がゆうちゃんにとって「不利な記号」になってしまわないかというデメリットについて話し「人によって受け入れられる外見には差がある。ルールの範囲内で自分の考えを貫くのは素晴らしいけど、まだ5歳のゆうちゃんには荷が重い」と言いました。
そんなとき、起きてきたゆうちゃんが、こんなにパパに会えないとは思っていなかったと泣き始めます。そんな姿を見て、母えみこは、自分がいろいろとわかっていなかったことに気づきます。炎太郎のようになりたいのは見かけじゃなくて中身のこと、パパと離れて暮らすことをちゃんと理解して納得したわけじゃないこと。そして、髪を染めたかったのも自分だし、日本に残ったのは、ゆうちゃんがお友だちと離れるのが嫌だからじゃなく自分がキャリアを捨てたくなかったからということ…。
夫と話したこと、ゆうちゃんの本当の気持ちがわかったことで自分の考えがまとまった母えみこは、保育園と、金髪のことを指摘したケンくんママに謝罪。ただ、短期間に何度も染め直したくないため、髪の根元が伸びるまではこのまま様子をみたいこと、その後また黒に染め直すこと、するとケンくんママも、強い言い方になったことを謝罪し、ほかのママたちには自分から説明しておくと言ってくれました。
母えみこは、ゆうちゃんとじっくり話し、「パパのいる国で暮らしたい」というゆうちゃんの希望を受け入れ、ゆうちゃんの卒園後、ドイツに行くことを決めました。えみこも夫と同じドイツ支社で働くこともできそうでしたが、環境が変わるゆうちゃんのサポートのためにも夫の単身赴任中は休職というう形をとり、ゆうちゃんは日本人学校に通うことを選択。そして、出発前に、実家の父と母に会いに行くことにしました。
母えみこの決断の行方
























会いに行った母の前で、ずっと帽子をかぶっていた母えみこ。促されて帽子を取ると、母えみこはパーマをかけて、髪の毛を染めていました。そんなえみこの姿に「垢ぬけたわね」と母。その様子にえみこが拍子抜けして「怒らないの?」「派手な格好が嫌いだと思ってたから…」というと「学生の頃は1人娘が変な人に目を付けられないか心配だったから」という母は、「こんなに大人になっても気にしてたのね。悪いことしたわ…ごめんなさい」と言ってくれたのでした。
その言葉を聞き、「聞けてよかった」と思った母えみこ。ゆうちゃんの髪を金髪にしてしまったことは、少し釘を刺されましたが、実家の父母の思いを胸に、ゆうちゃんとえみこはドイツへ旅立ち、異国での生活をスタートさせたのでした。
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学生時代、髪を染めることや憧れの服装を母に反対されてあきらめた過去を持つ母えみこ。そのこともあって、ゆうちゃんの髪の毛を染めることについては、並々ならぬこだわりや思いがありました。しかし、肝心の母はそこまで強い思いではなく、まさか大人になってまでえみこが気にしているとは思っていなかったようです。
えみことしては、父や母が自分に思い描いている気持ちや期待を裏切りたくない気持ちがあり、父母は父母で、大事な1人娘が変な人に目をつけられて悲しい思いをしてほしくないという気持ちがあり、お互いにお互いを思いやった上での気持ちのすれ違いだったのですね。ドイツへ行く前に、その気持ちをお互いに知ることができて、本当によかったです。
ゆうちゃんを金髪にしたことについては、いろいろな人から批判を受けてしまいましたが、そのことも認めつつ、自分が親にたくさん愛情をもらった分、ゆうちゃんの人生をこれからもサポートしていきたいと誓った母えみこ。その思いが強いものであることは間違いありません。母えみこには、ゆうちゃんのサポートも、えみこという1人の女性の人生も楽しんでほしいですね。
山野しらす