ファミレスで不機嫌になった義母
初めて義両親を含めた家族全員で、ショッピングモールへ買い出しに出かけた日のことです。私たちはまず、近くのファミレスで食事をすることになりました。
当時、私は妊娠中でつわりの真っ只中。「これなら食べられるかも」と、メニューの中から唯一喉を通りそうなものを見つけて注文しました。ほかの家族も、それぞれ好きな料理を選んでいたはずでした。
ところが、料理が並んだときです。それまで和やかだった義母が、急に黙り込んでしまいました。私の注文した料理と自分の料理をジロジロと交互に見比べ、眉間に深いシワを寄せて、あからさまに不機嫌なオーラを出しています。
「え、私何か悪いことした?」
テーブルには重苦しい沈黙が漂い、私は内心焦りました。しかし、つわりで気分も優れず、温かいうちに食べないとまた気持ち悪くなってしまうかも……と思い、意を決して「いただきます」とお箸を持ちました。
その瞬間です。
「……はぁーっ!」 義母がわざとらしい大きなため息をつき、ダンッ!と音を立ててグラスを置いたのです。驚いて顔を上げると、さっきまでの不機嫌どころではない、鬼のような形相で私をにらみつけていました。
テーブル周辺の空気は一瞬で凍りつき、私は恐怖で硬直していたように思います。
会計後、こっそりと夫が理由を教えてくれました。なんと、私の注文した料理が義母や夫のものより少しだけ高かったことを怒っているというのです。
「たとえ別会計だとしても、嫁が姑より贅沢をするのは許されないんだ」 「目下の者は、目上の人より高いものを頼んではいけない」
それが、義実家の暗黙のルールでした誰も口には出しませんが、夫も昔からその空気を読んで生きてきたとのこと。初めて知った私は苦笑いをするしかありませんでした。同時に嫁という立場の難しさを痛感し、家族の中での自分の立ち位置を考えさせられました。
この出来事は、私にとって義実家との「価値観のズレ」を思い知らされた最初の事件でした。それ以来、義両親との外食ではとりあえず一番安いものを探すことが私の鉄則になっています。
正直「めんどくさいな」と思うこともありますが、その場で揉めるよりはマシだと割り切っています。波風を立てないようにおとなしく従うフリをして、その分、夫と2人で行く時や、友だちとのランチや一人の時には、値段を気にせずおいしいものを食べてストレス発散しています。
著者:山田麻衣子/40代女性/18歳の男の子の母。自営業。趣味は読書で時代小説に夢中
イラスト:きりぷち
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)
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