2019年10月に消費税が10%に増税される予定ですが、税制は社会状況の変化に応じて変わるものです。所得税も働き方の多様性を踏まえ、同一業務であるのに雇用形態が異なる場合がある、会社員とフリーランスにある税制の差を埋めるために今回の改正となりました。
今回は2020年以降に適用される所得税の給与所得控除と基礎控除の改正事項についてお伝えします。
1.給与所得控除の改正について
所得税を計算するうえで、事業をしている人やフリーランスの人(以下、個人事業主)は必要経費を収入から引くことによって所得を算出しますが、勤務先から給料を支払われている人(以下、給与所得者=会社員・公務員・団体職員・パートタイマーやアルバイトも含まれます)は具体的な必要経費の計算をしません。
その代わりに、給与所得控除と呼ばれる法律上の経費的なものを差引き、収入の全額を所得としないことで、個人事業主との所得税負担の公平を図っています。この給与所得控除について、高額所得者は多額すぎるとの判断から、2020年分の所得税から上記の表のように変更となります。経費的に差し引ける給与所得控除額の上限を220万円から195万円にすることで、給与の高額所得者の所得税負担を増やすことになりました。
2.基礎控除の改正について
基礎控除とは、所得税額の計算をする場合に、所得金額などから差し引くことができる控除の一つで、誰にでも適用される控除です。この控除があるため、年間103万円以内のパート・アルバイト等の収入があっても、所得税はかからないことになります。
2019年分は所得に関わらず、一律38万円ですが、2020年からは上記の表のとおりとなります。所得の種類を問わず、2400万円を超える所得がある場合は、控除額が減り所得税の負担が増えることになります。
3.給与収入850万円以下の人は実質的な影響はなし
給与所得者にとっては、給与所得控除と基礎控除との両方が影響しますが、給与収入が年間850万円以下の場合は、給与所得控除が10万円減少するものの基礎控除が10万円増加するため、合計するとそれらが差引されて実質的な所得税には変化がありません。
しかし、給与収入金額が年間850万円を超える場合には状況が変わります。所得調整控除の対象となる人(特別障害者、23歳未満の扶養親族がいる人、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人)以外は、段階的に控除額が減るため負担増となります。例えば、給与収入1,000万円の場合・税率20%の場合には、所得やその他の控除が同じ条件であれば、年間3万円の所得税の負担が増えることになります。
一方、個人事業主は、雇用形態でない場合には給与所得控除がありませんので、今回の改正で基礎控除の控除額が引き上げられる分、所得やその他の控除が同じ条件であれば、所得税は減ります。事業所得が1,000万円・税率20%の場合は年間2万円の所得税の負担が減ることになります。
今回の所得税改正では、給与での年収850万円以上の人は負担増、個人事業主の人は負担減となるため、本人や家族で該当する人は2020年からの手取り額が変わる可能性がありますので、働き方や源泉徴収票、確定申告書を確認する機会にしていただければと思います。