妻の苦しむ姿を見て記憶が飛び……
分娩室に入り陣痛が強まるにつれ、妻の苦しむ姿に冷静でいることが難しくなりました。すべき行動が頭から抜け落ち、ただ妻の手を握るのが精一杯で、これまでの記憶もなく……。緊張と不安で体全体が硬直しているのを感じました。そんな極限状態で、助産師さんから「パパ! 酸素マスクが外れていますよ!」と声をかけられました。なんと、私が無意識のうちに分娩室の隅にあった酸素マスクを自分の顔につけており、それがずれていたのです。自分が患者のように振る舞っていることに気づいた瞬間、強い羞恥心に襲われました。
結局、役立たずなサポートにもかかわらず、元気な娘が生まれてくれました。あのときの勘違いは今では笑い話となっています。命の誕生に立ち会えた感動と、妻への感謝の気持ちは何ものにも代えがたい経験です。
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後日、妻は「パニックになってたのね」と笑ってくれました。教訓は、「完璧なサポート」より「そばにいる」ことが重要ということ。そして、出産は命懸けのドラマであり、パパもパニックになる可能性を想定しておくべきだと痛感しました。
著者:河内慎太郎/20男性・会社員/ 2歳半の娘を持つ35歳の父親。日々仕事と子育てに奮闘している。最近子どもが言葉を覚えてきているのを嬉しく思う。
イラスト:さくら
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)