私だけ味付けを変える義母
私は結婚当初から義母との距離感がつかめず、少し苦手意識を持っていました。
ある時期から、義実家での食事中に「あれ?」という違和感を覚えるようになりました。食卓には同じ料理が並び、夫や義父は「これうまいな!」「ああ、おいしい」と箸が進んでいるのに、私にはなぜかほとんど味がしないのです。正直おいしいとは思えませんでした。「私の体調が悪いのかな?」最初はそう思い、首を傾げながら飲み込んでいました。
しかし、そんなことが何度か続くと、次第に不安が黒い疑念へと変わっていきました。「これって嫌がらせ?」と悪い予感が頭をよぎったのです。「みんなには普通に出して、私にだけマズいものを出しているんじゃ……」。いわゆる“嫁いびり”をされているのだと思い、楽しかったはずの食事の時間が、苦痛でたまらなくなっていきました。
ある日、ついに私は勇気を出して言ってみることにしました。とはいえ直接聞くのは怖かったので、「お義母さん、これ……ちょっと薄味ですかね?」と、あくまでやんわりと伝えたのです。
すると義母は、きょとんとして言いました。
「そうよ、あなた健康のために薄味が好きなんでしょ?」
なんと義母は、以前私が「健康のために薄味を意識している」と軽い気持ちで話したのを覚えてくれていたのです。みんなと同じ味付けにするほうがラクなのに、わざわざ私の分だけ手間をかけて、味を調整してくれていたという事実。「嫁いびり」どころか、義母なりの気遣いだったと知り、私は申し訳なさと安堵で力が抜けました。
あの誤解が解けてからは、義母に対する苦手意識のようなものがすっかり消えました。今ではレシピを相談し合ったり、遠慮なく笑い合える関係です。義実家での食事が楽しく感じられるいま、ほんの少し勇気を出して言葉を交わすだけで、景色は大きく変わるのだと実感していています。
著者:大畑マチ/0代女性/10歳の息子を育てる母。会社員。趣味はドラマ鑑賞、アンティークショップ巡り。
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)
※生成AI画像を使用しています