妊娠中の義実家帰省
毎年、私たち家族は年末年始に、他県出身である夫の実家に行くのが恒例です。小さな町ということもあり、義実家には親族や夫の幼馴染家族、さらには義母の友人までが集まり、大宴会が開かれます。しかしその年は、私は2人目の妊娠中で、長男妊娠時よりも重いつわりがある中で年末を迎えていました。
夫に「今年は、前よりもつわりしんどいから行きたくない」と勇気を出して伝えたのですが、夫は笑いながら「それは無理だよ~」と言い、「大きくなった長男の顔を祖父母に見せたいんだよ。お前の体調だけを理由にみんなをがっかりさせたくないだろ? それに大人数でワイワイするほうが楽しいじゃん」と軽く受け流されました。毎日しんどくて家事や育児をするだけでもつらいのに、「長男のときも案外大丈夫そうだったじゃん」とつわりを甘く見ている夫の言葉に、私はショックで何も言い返せませんでした。
そのまま結局断り切れず、義実家で年末年始を過ごすことに……。私は朝から晩まで義実家の台所に立ち、料理を並べ、片づけをします。料理や片づけは、「じゃあよろしくね~」と義母から言われ、結婚してからずっとなぜか私の担当なのです。食後も、たくさん集まっている1歳~小学生までの子どもたち約10名の遊び相手に。夫のいとこや幼馴染夫婦の奥さんがたまに子どもの様子を見に来てくれるものの、わが家の長男は人見知りでずっと私のそばを離れないため、自然と私が子どもたちに付きっきりに。休む暇など一瞬もありませんでした。
その間も夫は楽しそうに、宴会の輪の中で笑っています。私が妊娠中であることは義両親も知っているはずなのに、さも当たり前かのように宴会を楽しんでいて、誰も手伝ってくれず、悲しい気持ちとやるせなさでメンタルもボロボロ。疲れでつわりのつらさもピークになり、思わずキッチンの隅で少し座り込んでしまいました。
するとたまたまキッチンに立ち寄った義母の友人が、「どうしたの?」と声をかけてくれました。「妊娠中で、ちょっと疲れやすくて……」と苦笑いしながら片づけを再開しようとすると、義母の友人は「え! 妊娠中なの!?」と目を丸くします。そして、リビングで楽しそうにしている輪の中に向かって「ちょっと! あなたたち、お嫁さんが妊娠中でしんどい時期なのに、こんなに働かせてどうするの? お嫁さんや赤ちゃんの体調が第一でしょう!」と、夫や幼馴染夫婦に言ってくれたのです。
幼馴染夫婦は妊娠を知らなかったようで、「お前、奥さん妊娠中だったの? 何やってんだよ、お前が一番フォローしないと!」と夫を叱ってくれ、「僕たちも任せきりにしてしまい、申し訳なかったです」と謝ってくれました。そして、複数の人に叱責された夫は「はい……」といそいそと片づけをし、子どもたちの相手を始めてくれました。
義母の友人にお礼を言うと、「ごめんね、もう少し早く気づいてあげたらよかったね。私も臨月のときに、無理して手伝ってたことがあって、そのあとが大変だったのよ」と同じような経験があったことを教えてくれました。そして義母にも「義理とはいえ、あなたの娘でもあるんだから、もっと大事にしてあげなさいよ」と諭してくれたのです。義母は「しんどいのに、ついあなたに甘えてしまってごめんなさいね」と私に頭を下げてくれたのでした。
義母の友人が「お嫁さんと赤ちゃんの体調第一」と言ってくれたおかげで、私自身も「場の空気を優先することで、自分だけじゃなく赤ちゃんも苦しくしていたかもしれない」と気づき、反省しました。「嫁だから勇気が出なくて言い出せない」とキッチンで黙って耐えるのではなく、つらいということを夫だけでなくきちんと義両親にも伝えるべきでした。
それ以来、私も義母も、してほしいこと、難しかったり嫌だったりすることなど、お互いに言いたいことを言えるような仲になり、年末年始は義実家でも毎年楽しく過ごせています。また、義実家に滞在している間、夫も気を使ってくれるようになりました。
もしあのときの私のように、無理をしている妊婦さんや言いたいことが言えなくて苦しんでいる人がいたら、義母の友人のように、第三者としてフォローできる人でありたいと思った出来事です。
著者:桂ゆかり/ライター。働く乗り物が大好きな5歳の男の子と、ティッシュをひらひらして遊ぶのが大好きな3歳の女の子を育てるママ。夫は夜勤のため、月〜土曜日までワンオペの日々を過ごしている。
作画:ひのっしー
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)