非常識な隣の家の親子
長女が2歳になった年の冬に、マイホームを購入したわが家。夢は、娘と広い庭でたくさん遊ぶこと! いよいよその夢が実現されると思うと、楽しみでしかたありませんでした。
やがてマイホームへの引っ越しが済み、ご近所へあいさつに行くことに。隣の家は、庭なしでビルトインガレージのある戸建て。訪ねると、2歳の娘と同い年くらいの女の子とママが出てきました。聞くとやはり娘たちは同学年でした。つい子育てのことで話が盛り上がり、その場ですぐに意気投合。何かあったときに助けあったり、悩みを共有したりするママ友もできたと安心しました。家が隣だと顔を合わせることも多く、立ち話をしたり娘たちも幼いなりに交流したりして、新しい環境でも楽しく過ごせると思っていましたが……。
親子と知り合ってすぐのころ、ある大雪が降った日の朝にカーテンを開けると、庭が一面真っ白になっていました。その光景を見た娘は大喜び! 早速雪遊びをしようと外に出ると、庭に大人と子どもの靴のあとがあったのです。いったい誰が入ってきたのだろうと不安に思っていると、自宅の裏側から聞き慣れた子どもとママの声が。声のする方へ向かうと、なんと、引っ越しのあいさつで仲良くなった親子がいるではありませんか!
「どうしてここにいるんですか?」と尋ねるとママ友は「え? だって私たち、友だちでしょ? うちはパパの大事な車があるから遊ぶとこないのよね~。庭付きの家が建ってまじでよかった~! ってか早く来ていっしょに遊ぼうよ!」とさも当たり前のような口調で言ったのです。しかも、庭に置いてあった娘の砂遊び用のスコップやバケツまで勝手に使って、雪だるまを作っています。注意しようと思っていると、まだ幼く状況のわからない娘が、ママ友の子どもと楽しそうに遊び始めました。空気を乱すのもな……と思い、仕方なく、その日は強く拒否することはできずじまい。しかし、次の日も、また次の日も庭が広くて遊びやすいからと、雪が積もっているあいだは毎日のように勝手に遊びに来たのでした。
娘が喜ぶ手前、どうやって断ろうかと悩んでいたところ、ある日を境に、ママ友親子が姿を見せなくなったのです。「どうしたんだろう?」と思っていると、突然家のチャイムが鳴りました。出てみると、そこには暗い表情をしたママ友が立っています。「どうしたんですか?」と聞いたところ、ママ友いわく、娘さんが近所にあるひとり暮らしの厳格な高齢男性の家の庭にも勝手に入り、植木鉢を割ってしまったとか。それに気づいた高齢男性は、その場で娘さんに注意。わが家の庭でも勝手に遊んでいることも知られており、「非常識だ」とママ友もこっぴどく叱られたようです。よっぽど反省したのか、「今まで本当にごめんなさい」と私に菓子折りを持って謝りにきてくれたのでした。
この一件を機に、ママ友親子が庭で勝手に遊ぶことはなくなり、きちんと約束をした日にいっしょに遊ぶ関係が続き、10年以上たった今でも交流が続いています。ママ友親子を叱ってくれた高齢男性には、感謝しています。
いくらママ友として意気投合した相手であっても、「親しき仲に礼儀あり」。人の家の敷地に無断で入るという行為は、信頼関係を根底から壊しかねない重大なマナー違反だと私は思います。当初、娘が楽しそうにしている姿を見て注意をためらってしまいましたが、やはり早い段階ではっきりと断っておかないと、注意するタイミングを逃し続けると痛感。厳格なご近所さんが示してくれた「ダメなものはダメ」という毅然とした態度は、新生活に浮き足立っていた私にとっても大きな教訓となりました。心地よいご近所付き合いを続けていくために、私自身も「親しみ」と「甘え」をはき違えないよう、適切な距離感を持って周囲と接していこうと決意した出来事でした。
著者:村沢ゆな/30代・ライター。14歳と12歳のおませな娘たちと、4歳の甘えん坊な息子を育てるママ。毎日の育児にドタバタしながらも、家族に内緒で優雅なカフェランチを満喫するのが趣味。
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年12月)